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漁夫とその妻の話【グリム童話】【ゆっくり文庫リスペクト】
"こぞさん、こぞさん、たすけておくれ、かれいや、海のかれいさん、わしのにょうぼのイルゼビルはわしの思よになってくれぬ。"
マイリスト mylist/73029299
単発作品 series/330979
<編集後記>
いつの間にか何も投稿しないまま5か月近くが過ぎていました。特に理由はないのですが、なんとなくその気にならないまま、やろうと思ったことをどこまでも先延ばしにする癖があります。まあ締め切りがあるわけではないので、無理せずマイペースでやっていこうと思います。今回はグリム童話から、気に入った話を選んで動画化してみました。短くてまとめやすいし、すぐに出来上がるだろうと思ったからです。しかし、当初の見込みは甘く、作っていくうちに思いついたことを詰め込んでいくうちに、動画時間はどんどん延びて、岩波文庫の「グリム童話集(一)(金田鬼一訳)」でわずか20ページ程度の話が20分以上の動画になっていました。しかも、これまで以上に画像の切り替わりが多いため、編集にもだいぶ手間がかかりました。短くまとめて、なおかつ簡にして要を得るのが難しい。このお話は、無欲で現状維持を望む漁夫と、それとは反対に欲望の権化でどこまでも進み続けるおかみさんとの対立が主軸になっています。人の欲望はどこまで行くのか、その結果どこに行きつくのか、それがこの作品の教訓なのだと思います。ただ、昔のヨーロッパ人の価値観と、現代日本人の価値観では、行きつく先は同じでも、途中で欲しがるものが違ってくるのではないかと考えたので、現代風に翻案してみました。その結果SFみたいになりましたが、究極的には人類はこういう方向に行きつくかもしれない気がします。お話の中で、漁夫は何度もおかみさんを止めようとしますが、結局毎回折れてしまいます。自分が思うに、この二人はどちらが勝ってもならず、夫婦という関係性から考えて、手を取り合っていかなければうまくいかないのだと思います。漁夫が勝てば最初の状態のまま何も得られず、おかみさんが勝てばこのお話の結末を迎えることになります。誰であっても、人の心の中には漁夫とおかみさんがいて、どちらかが勝ったり負けたりしているのではないかと思います。脳科学の見地からも、人間はドーパミンのような脳内物質に突き動かされ、欲求を狩りたてられると言われています。それから最後に、「鶴の恩返し」や「蜘蛛の糸」のように、助けてくれた人に尽くすかれいは、お話のラストで、一言も願いをかなえないとは言っていません。おかみさんの最後の願いはかなったのかも知れません。その結果、自らあの結末を決めたのかもしれません。ローマ法王が仕える神ならそうしたかもしれません。