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<ディスクロージャー&ディスカバリー>インカメラのない情報公開訴訟で請求者の前に立ちはだかる「個人情報保護」と「業務への支障」という2つの壁
行政に対して公開を請求した情報が不開示となった場合、請求者には2つの選択肢がある。一つは情報公開審査会に審査を請求する方法であり、もう一つが公開拒否の取り消しを求める情報公開訴訟に訴える手だ。行政機関が情報公開を拒否する場合は単に開示を拒否する処分(不開示)の他、文書が存在しないことを理由とする開示拒否(不存在)、文書の有無をも明らかにせずに開示を拒否する存否応答拒否処分などがあるが、いずれの場合も、請求者が非開示処分を不服とした場合、審査会に審査を求めるか、非開示処分を不服として訴訟に訴えるか、あるいはその両方を選択することができる。
情報公開訴訟の件数はそれほど多くはない。国に対しては年間で20~50件程度、自治体を含めても裁判まで発展するケースは少ない。非開示決定に対しては行政救済制度である審査請求が行われることはよくあるが、実際に訴訟にまで至るケースは希といっていい。代理人の引き受け手が少なかったり、訴訟をすることの負担が重いなどが主な理由だが、それでも訴訟に至るケースの中には、請求者の側に情報開示に対する強い思いが込められていたり、開示請求されている情報が社会的に注目を集めるものの場合が多い。
情報公開訴訟の最大の特徴は、不開示となっている情報の内容を知っているのが被告である行政機関だけだという点だ。被告のみが非開示となった情報の中身を把握しており、原告は無論のこと、裁判所もインカメラ審理ができないため、情報の中身がわからないまま裁判が争われることになる。被告である行政は、その情報が情報公開法に定められている非開示情報に当たることを主張するが、原告も裁判官もその主張の妥当性を直接確認することはできないのだ。そのため、被告側に不開示理由の妥当性を立証する責任が課せられることになる。
しかし、行政側が非開示の理由として個人情報の保護を主張した場合、実際の情報の中身がわからないままその主張を切り崩すのは容易ではない。特に行政側が個人情報の保護と、開示されることによって行政の業務に支障をきたすことを理由にあげてきた場合、情報の中身がわからない原告が、同じく情報の中身がわからない裁判所に対して、その主張の不当性を訴えなければならないのだ。
今回は福井県高浜町元助役に関する調査文書情報公開訴訟と、陸上自衛隊北部方面隊所属自衛隊員数文書情報公開訴訟、滋賀県優生保護審査会文書情報公開訴訟の3つの情報公開訴訟を取り上げ、非開示となった情報の公開を求めて訴訟に訴えた場合、どのような審理が行われるのか、インカメラのない裁判にはどのような困難が伴うのか、行政側のどのような主張が情報公開の妨げになっているのかなどを、自身でも多くの情報公開訴訟を提起してきた情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子氏とジャーナリストの神保哲生が議論した。
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<ニュース・コメンタリー>「外交は情報公開の対象外」のままでいいのか
前日の日産のカルロス・ゴーン会長逮捕の衝撃が冷めやらぬ10月20日、東京霞ヶ関にある東京地裁の803号法廷では、日本の民主主義のあり方が問われるとても重要な判決が下されていた。
「原告の申し立ては却下します」
裁判長のこの一言で、日本はその民主主義を大きく強化するまたとないチャンスを逸してしまった。
NPO法人情報クリアリングハウスが提起していたその裁判は、日本政府が行ったイラク戦争に関する検証報告書の公開を求める情報公開請求訴訟だった。
アメリカが率いる多国籍軍がイラクに武力攻撃を行った、いわゆるイラク戦争は、武力行使の前提とされたイラクのフセイン政権による9・11同時テロへの関与や、国連決議に反する大量破壊兵器の開発などが、後にいずれも事実無根だったことがわかり、戦争の正当性に国際法上の大きな疑問符が付けられていた。しかも、外国軍の侵攻によってフセイン政権が崩壊した後の地政学的な空白に入り込んだIS(イスラム国)が一時は国際社会全体への重大な脅威となるなど、その後の国際情勢への悪影響も大きかった。
武力行使の正当性が崩れたことを受けて、アメリカに追随して軍事行動に参加したイギリスや、派兵は行わなかったが武力行使を支持したオランドなどが、なぜ自国が誤った戦争を支持してしまったのかを徹底的に検証し、その内容を一般に公表していたが、当時の小泉政権がいち早く武力行使支持を表明していた日本では、2011年までその判断の妥当性や根拠について、何ら検証が行われていなかった。
民主党政権の前原誠司外相が国会答弁で、「検証は必要と考えている」と発言したのを受けて、ようやく日本でも外務省が2012年12月に検証報告を作成したが、その内容は外務省内で「極秘」扱いとされ、非公開だった。・・・
この裁判の原告で、他にも政府を相手取り数多くの情報公開請求や訴訟を起こしている情報公開の第一人者、情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長に、ジャーナリストの神保哲生が聞いた。
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)