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<ニュース・コメンタリー>ロシアゲートに揺れるトランプ政権はどこまで持つか/渡辺靖氏(慶應義塾大学教授)
トランプがアジア歴訪に出発する直前から、ワシントンではトランプ政権の屋台骨を揺るがすと言っても過言ではない事態が進行していた。
2016年の大統領選挙でトランプ陣営がロシアと共謀して選挙結果に影響を及ぼそうとした疑惑がもたれている、いわゆるロシアゲートに大きな動きがあったのだ。
モラー特別検察官は10月30日、選挙戦でトランプ陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォート氏や、同氏のビジネスパートナーだったリック・ゲーツ氏、選挙戦でトランプ陣営の外交政策顧問を務めたジョージ・パパドプロス被告の3人を資金洗浄、共謀など12件の罪で起訴した。ロシアゲートに関連してトランプ政権関係者が起訴されるのはこれが初めてのことで、5月に特別検察官が設置されて以来、ロシアゲートの捜査は新たな局面に入った。
モラー特別検察官はマナフォート氏らに対して、捜査への協力や情報提供と引き換えに司法取引を持ち掛けていると見られる。パパドプロス氏は既に司法取引に応じているとの情報もあり、今後トランプ陣営の中枢や、政権の要職にある大物の逮捕や起訴があれば、事が大統領選挙に干渉するための他国との共謀ということもあり、トランプ政権の正統性が根底から揺らぐ可能性がある。
アメリカ政治が専門の渡辺靖慶応大学教授は今後、マイケル・フリン元国家安全保障担当補佐官や、トランプ大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー氏、トランプ氏の長男のトランプ・ジュニアなどが捜査線上に浮上する可能性があると指摘する。政権の重鎮が逮捕・起訴されるような事態になれば、一気に政局が流動化する可能性がある。
また、トランプ大統領自身が、陣営とロシアの関係をどの程度把握していたかも、今後、大きな争点になる。大統領選挙に出馬を表明した直後、アメリカ第一主義を掲げるトランプ氏は、ロシアに対しても厳しい言説を発していた。それが選挙戦のある段階から、ぱったりとロシア批判を封印したばかりか、アメリカはロシアと協力すべきとの主張に突然路線を変更したことが指摘されている。トランプ大統領自身の関与が取りざたされるようになれば、ウォーターゲート事件以来の大スキャンダルになる可能性もある。
しかし、その一方でトランプ大統領には、トランプがどのような失態を演じようとも、あくまでトランプを支持し続ける鉄板の支持層がアメリカ人の33%程度いることもわかってきた。トランプ大統領がどれだけの問題発言や問題行動を繰り返しても、支持率がそのラインを割らないからだ。・・・
今後、ロシアゲートはどうなっていくのか。それがトランプ政権の政権運営能力にどのような影響を及ぼすのか。また、トランプとの心中も辞さない鉄板の33%とはどういう人たちなのか。希代のアメリカウオッチャーの渡辺靖氏とジャーナリストの神保哲生が議論した。
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<ニュース・コメンタリー>米民主党はなぜサンダースの躍進を歓迎しないのか
米大統領選挙は破天荒な発言を繰り返す共和党のトランプに注目が集まりがちだが、民主党の候補者選びにも大きな異変が生じている。
当初、泡沫候補と目されていたバーニー・サンダース上院議員が、大本命のヒラリー・クリントン元国務長官を相手に大善戦しているのだ。特に直近の予備選・党員集会では8州のうち7州で勝利を収めるなど、中盤から後半に差し掛かった予備選で、クリントンを脅かし始めている。
実際、ここまで予備選・党員集会を終えた37の州と地域のうち、クリントンが20州で勝利したのに対し、サンダースも17州で勝利している。ニューヨーク州、ペンシルバニア州、カリフォルニア州などの大票田の予備選の結果次第では、逆転も夢ではない。
ところが、サンダース候補が予備選や党員集会で勝利しても、最終的に候補を選ぶ代議員の獲得数では、クリントン候補が依然として圧倒的なリードを続けている。なぜならば、民主党の候補者選びでは一般の党員よりも、党の幹部や中枢がより強い発言力を持つからだ。
アメリカ大統領の民主・共和両党の候補者選びは、各州で候補者を決める投票を行うが、その投票結果に応じて代議員が割り振られる仕組みになっている。そして、全代議員のうち過半数を獲得した候補が党の正式な候補になる。
民主党は全米で4765人の代議員がいるため、最終的に過半数に当たる2383人以上の代議員を獲得すれば党の候補になる。ところが、代議員の中に特別代議員と呼ばれる、一般党員の投票結果に拘束されない投票権を持つ特殊な代議員が存在し、民主党の場合、4765人のうち714人が特別代議員となっている。
特別代議員は州知事や州選出の上下両院議員、党組織の幹部などで、党のエスタブリッシュメントの総意を代弁する立場にある。
そして、民主党では特別代議員のほとんどが、ヒラリーを支持している。そのため、一般党員の投票でどれだけサンダースが勝っても、代議員の獲得競争ではクリントンの優位が揺るがないのだ。
パナマ文書が富裕層による租税回避の実態や、広がる貧富の格差を露呈させる中、富裕層への課税強化やより積極的な富の再配分を訴えるサンダースは追い風を受けている。しかし、仮にサンダースがより多くの一般党員の支持を集めても、民主党の中枢を占める特別代議員の力で、クリントンが選ばれる公算が強い。
なぜ民主党幹部はサンダースを嫌うのかを、慶応義塾大学の渡辺靖教授に聞いた。