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<美のチカラ>「クールベと海展」 海に魅せられた革新的画家
東京都内にある美術館から魅力的な作品の数々を紹介するコーナー<美のチカラ>です。今回は港区の汐留で開かれている「クールベと海展」を紹介します。フランスの画家・クールベは山に囲まれた町で育ったため、初めて海を見たのは大人になってからで、以来たくさんの海の絵を世に送り出してきました。
港区東新橋にあるパナソニック汐留美術館で開催されているのはフランスの画家、ギュスターヴ・クールベの展覧会です。山に囲まれた町で生まれ育ったクールベは、22歳の時に生まれて初めて海を見て非常に感動し、両親に対し「初めて海を見た。地平線のない海を。それは大変奇妙なものであった」という少し詩的な言葉を書き送ったといわれています。
今回の展覧会のポスターにも使われている代表作が1869年に描かれた『波』です。学芸員の古賀暁子さんは「クールベは生涯で100点ほど海の風景画を描いたといわれているが、そのうち40点が波だけをクローズアップして切り取った特徴的な構図の作品だったといわれている。波が崩れる瞬間を描いたものでは、白い部分をパレットナイフでちょっと盛り上がるように描いているのが近くで見るとよく分かる」と話します。また、波の部分に深緑色や黄色っぽい色を使うなど色使いも絶妙で、クールベの観察眼がよく表れています。
初めて海を見た感動をすぐに両親に伝えたクールベが何より大切にしていたのは「家族の絆」でした。その思いは、いつの時代でもどの国でも同じで、家族が仲良く遊ぶ日本のその海は、かつてクールベが見た海につながっています。
19世紀フランスの巨匠画家、ギュスターヴ・クールベの魅力を堪能できる展覧会は2021年6月13日まで開催されています(日時指定予約制)。
<美のチカラ>東京芸大美術館「渡辺省亭展の魅力」
東京都内に数多くある美術館から、魅力ある作品を紹介していく新コーナー<美のチカラ>です。記念すべき第1回は、上野公園にある東京芸術大学大学美術館で開催中の「渡辺省亭展」をご紹介します。
1999年に建てられた東京芸術大学大学美術館は、上野駅から公園の桜を楽しみながら歩くことおよそ10分のところにあります。施設自体にアートが感じられ、例えば階段は楕円(だえん)形のらせん階段になっています。
現在開催されているのは、明治から大正にかけて活躍した東京・神田産まれの日本画家、渡辺省亭の展覧会です。ポスターにも使われている代表作「牡丹に蝶の図」について、東京芸大美術館の古田亮教授は「華やかという意味で一番きれいかもしれない作品。色使いが艶やか。白・ピンク・緑といった配色がすごく明るい」といいます。さらに「普通は枯れていく花は描かないと思うが、それをあえて(花びらが)だんだん落ちていくように描き、最後に落ちたところを描く。時間が流れていることも感じさせる。近寄っていろいろなところを見ると、見た数だけ別の世界が待っている」と作品鑑賞の魅力を語りました。
渡辺省亭の作品の全貌を感じることができる初めての展覧会の魅力については、次回の<美のチカラ>でもご紹介します。