皇太子時代 モロッコ訪問“異例”の大歓待

皇太子時代 モロッコ訪問“異例”の大歓待

ひとつの瞬間から知られざる皇室の実像に迫る「皇室 a Moment」。陛下の皇太子としての最初の親善訪問となった1991年9月のモロッコ訪問について、長年皇室取材に携わってきた日本テレビ客員解説委員の井上茂男さんとともにスポットを当てます。――映像は、どういった場面でしょうか?1991年9月、皇太子時代の天皇陛下がモロッコを訪問された時の場面です。陛下は王宮で当時の国王と会われたのですが、この時、予期せぬ勲章が贈られ、しかも国王自ら陛下の胸に付けるという異例の出来事がありました。モロッコ側の大歓待を象徴する場面といえると思います。――モロッコはスペインの南、アフリカの北東の端にある人口3600万の王国で、親日国として知られるイスラム教の国です。この訪問はどういうきっかけだったのでしょうか?ご訪問はモロッコからの招待でしたが、当時取材したところでは、当時のハッサン2世国王が、天皇陛下より3つ年下のモハメッド皇太子、今の国王モハメッド6世に、同世代の皇太子の友だちを作ってあげたいという親心で招いたそうです。弟のムーレイ・ラシッド王子を交え、2人の王子が陛下を厚くもてなす場面が見られました。――モロッコではどんな場所が印象に残っていますか?陛下は首都のラバト、映画でも有名なカサブランカ、そして世界遺産になっているマラケシュやフェズを訪問されました。中でもフェズで、「メディナ」と呼ばれる旧市街をじっくりと歩かれた場面が強く印象に残っています。街には華やかな民族楽器の音が鳴っていて、陛下は、観光名所「ブー・ジュルード門」を通って、城塞に囲まれた迷宮のような街を歩かれました。狭い通りには、肉屋や魚屋、木の実を売る商店などが並び、フェズの人々の暮らしぶりが間近に見られる所です。通りの至る所で、大きな拍手や子どもたちの歓声で迎えられ、「レロレロレロ」という現地ベルベルの人たちの独特の歓声があがっていました。また神学校やモスクも中にあって、陛下は何度も足を止めて町の様子を写真に収められていました。さらに、店頭でナツメヤシやパン、木の実などを勧められては口に入れ、「おいしい」と食べられる場面もありました。報道陣には外務省から現地の水や食べ物にはくれぐれも注意するように言われていましたので、陛下の“冒険”“チャレンジ”には驚いたものですが、いま考えると、招待国のもてなしに身を任せる親善の姿勢だったでしょう。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm38315980