シューベルト「4つの即興曲 D935」第1曲ヘ短調  4 Impromptus D935 : No.1 F moll by F. Schubert arranged to orchestra

シューベルト「4つの即興曲 D935」第1曲ヘ短調  4 Impromptus D935 : No.1 F moll by F. Schubert arranged to orchestra

今回はシューベルトの「4つの即興曲D935」から第1曲ヘ短調のオーケストラ版をお送りします。この曲は若干地味で、ピアノに興味のない人はあまり聴いたことがないかもしれませんが、実は私の最も好きな曲のひとつです。この曲集は、シューベルト最晩年の1827年頃に作曲されました。シューベルトは同時期にもう一つの曲集「4つの即興曲 作品 D899」も作曲していますが、どれもメロディーの美しさや転調の妙に満ち溢れた傑作です。さて、このヘ短調の曲も、とりわけ幻想的な美しさに満ちた名曲だと思います。この曲の形式は、ウィキペディアによると「展開部を欠いたソナタ形式」となっていますが、A-B-A'-B'-A''(コーダ)のような5部形式にも聴こえます。一応、AとA'はともに主調のヘ短調で、BとB'には、提示部と再現部を思わせる調性関係(B'が主調で再現する)があるので、ソナタ形式としたのでしょう。ただ、Aの中にも第2主題と思われる変イ長調の美しいメロディーがあり、それがA'ではヘ長調で再現するので、B、B'という中間部を挟んだソナタ形式とも言えます。それはさておき、その変イ長調の第2主題は、だれでも口ずさめるような親しみやすいメロディーで、一度聴いたら忘れられません。Bの中間部は幻想的で、まさに天国的な美しさといっていいでしょう。この部分はオーケストラ版では木管楽器が大活躍します。ただし、シューベルトの常として調性はきわめて複雑です。いきなり変イ短調ではじまり、さまざまな遠隔調をさまよい歩くので、演奏者は大変かもしれません。その点、Musescoreは、どんな楽譜でも音にしてくれるので楽です。ちなみに、Aの部分の最後に、めちゃくちゃ高い音が出てくるので、ヴァイオリンではうまく再現できませんでした。なので、この部分だけあえてピッコロを入れてみました。ではご鑑賞ください。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm38689956