【睡眠用ASMR】安眠のウッドブロック【高速ウッドサウンド・音圧】

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彼は5歳の時、テレビで偶然見かけたプリキュアにひどく心を奪われた。プリキュアになりたい。彼はプリキュアになるという夢を持つに至った。彼は夢見がちな少年であった。彼の夢はそれ以降も一切揺らぐことが無かった。学問、スポーツ、芸術、そのすべてが無意味なことに思えた。一つとして興味を示さなかったのである。年を重ねるにつれ、人は彼を怠慢だと罵るようになったが、そんな罵声は周囲の雑音と共に彼の耳をすり抜けていった。私はプリキュアになるのだ。誰の言葉も、彼には届かなかった。気付けば月日は流れ、彼は40歳の誕生日を迎えた。未だ、プリキュアになる夢は叶っていない。ふと、テレビドラマに興味が湧いた。今までプリキュアしか見てこなかった彼は、生まれて初めてテレビドラマを視聴するに至る。そこには男女が手をつないで歩く姿が映し出されていた。アニメ絵ではなく、現実世界となんら変わらない映像が、そこにはあった。実写の男女が仲睦まじく肩を寄せ合い、横断歩道を渡っている。私はプリキュアにはなれない。彼は気付いてしまった。何がきっかけで、というわけではない。ただ単純に、プリキュアにはなれないと、腹の底から、自分の心が、魂が、納得してしまったのだ。それからの生活は筆舌に尽くし難いものとなった。人生のすべてが終わり、おぞましい消化試合に身を委ね、ただ心の中にのみ存在する過去の幻想に苦しめられ、一日の終わりと始まりがいったいどのようなサイクルで訪れているのかさえも認識することができなくなっていった。何故誰も、私を正しい人生へと導いてくれなかったのか。何故誰も、私を救ってくれなかったのか。そんな恨みにも似た感情が湧き上がっては、すぐに消えていった。言うまでもない。私は誰にも自分の夢を話すことができなかったのだし、誰の言葉にも耳を傾けてこなかったではないか。恨みは自責の念に変わり、やがてそれさえも消えて失せていった。終わってしまった。自分を構成していたすべてが。世界を映し出していたフィルターが。息をしていた清流が、黄ばんだ汚水に変わってしまった。(次→ sm38747506

http://www.nicovideo.jp/watch/sm38735098