【ウマ娘】プラチナ【ヴァルゴ杯】

【ウマ娘】プラチナ【ヴァルゴ杯】

俺はレース場に出かけた。ある日、育成の予定がキャンセルになった俺は、とあるレース場で夜風にあたっていた。街から少し離れたところにあるレース場で、普段は熱狂的なファンが歓声を上げている。今はしばらくレースも開催されておらず、閉鎖中の札を無視して忍び込んでいた。「あなたも逃げですか?」後ろから声をかけられた。振り返るとそこにはサラリーマン風の中年男性が立っていた。「……ええ、ちょっと嫌なことがありまして」俺は育成がキャンセルになった理由を思い返していた。そしてその代わりの話も。「ここ、よく差すんです」「まあ、そうですよね」第四コーナーから最終直線、客席の歓声を一身に受けながら、最後の気力を振り絞り、ラストスパートで先頭に踊り出る―。そんな光景を幾度となく目にしてきた。「あなた差さないんですか……」「あなた逃げないんですか……」男性の……いやおかしい!女性のような声もする!閉鎖中のレース場だ、そんなに何人もいるハズがない!振り返ると男性の後ろには髪の長い女性、手には刃物のような物が見える。気が付くと無数の人影が俺を囲っていた!「差しましょうよ、差しましょうよ」「逃げようよ、ニゲヨウヨ」無数の人影が追い迫ってくる!「そこまでだ」聞いたことのある声。寺生まれで霊感の強いTさんだ。第四コーナーで加速すると跳躍し、影に囲まれる俺の前に降り立ち、「破ぁ!!」と叫ぶと影は消え去った。「やれやれ、逃げたり差したりはレースだけにしてくれ」そう言うとTさんは俺に携帯電話を渡した。電話の向こうから、聞き覚えのある声がする。治療は成功した。遅れてしまったが、育成に戻ってほしい。俺はTさんを見上げて言った。「Tさんは得意な育成とかあるんですか?」「強いて言えば先行策だな。そういう匂いがするだろ?」いつの間にか夜が明け、陽の光を反射させながら去っていくTさんを見て、寺生まれってスゴイ、俺はそう思った。ウマ娘: https://www.nicovideo.jp/series/210400 ※前作等はシリーズからご確認ください。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm39507306