ゼルぴゃの伝説 夢をみるつもりじゃなかったし

ゼルぴゃの伝説 夢をみるつもりじゃなかったし

「そういう訳だ。お前には事務所の夜間警備をしてもらいたい」『はあ』彼自身、薄々そんな気はしていた。最近夜遅くまで仕事をしていると、他に誰もいない筈なのに足音や物音が聞こえる事があるのだ。何者かが夜更けを狙って不埒な侵入をしているのだろうか。「即席だが監視カメラと警備室を用意した。他の備品も好きに使用して構わん」『素直に警備会社とかに依頼した方が安全では…』「…。スペインの雨は広野に降る」『え?』「そういう事だ。後は頼むぞ」スタスタ『ちょっ! 待っ、どういう意味ですか!?』『「節電の為に扇風機は定期的に電源を切る事」ね…。経費渋りすぎだろ』かくしてPは、この蒸し暑い警備室の中で一晩中閉じこもる事になった。『渋りすぎて渋谷凛になったわね』「やっほー! P、遊びに来たよー!」『…ん!?』果たしてそれは侵入者の発する声だった。それはとても聞き馴染みのある、元気な声。慌てて監視カメラの荒い映像を確認する。『め、めぐる!?』警備室の真横の廊下。すぐそこに、めぐるが立っていたのだ。だが映像の異変はそれだけではない。「あは〜、今夜は雛菜がPを独り占めしちゃうね〜♡」「ダクトの扉、桑山千雪がこじ開けちゃうぞ♪」「わたしはいつだって戻ってくるっす!」「うさぎさんが自転車に乗っていると…」反対側の廊下、換気口。あらゆる経路からのアイドルの接近が確認出来た。社長を悩ませていた侵入者の正体。それは、事務所で残るPを襲ってしまおうとするアイドル達だったのだ。『何だこいつら…!』たまらず全ての入り口を塞ぐP。しかし束の間、室内の変化に気付く。『…あれ? ユアクマのぬいぐるみなんて置いてたっけか…』「(突如動き出す)」『!?』「(Pの顔に張り付いて、洗濯したての香りを嗅がせようとしている)」『ムゴーッ! 前が見えねェ!』「隙が多すぎてスキヤポデスでございます…」『そっその声は…うっ!』可愛らしい妨害に気を取られ、遂にPはアイドルの侵入を許してしまった。目視出来ぬ手刀で朦朧とする彼の頭を、たおやかな和服が包んでいく。やがて、他のアイドル達も室内に姿を現し始める。「認めてよ。私に入って欲しかった、って」「警備室が侵入者だらけばい!」「あっ、もうこんな時間だ! ジャスティスVが始まっちゃう!」「油はフライパンの底から1、2ミリ程度…」このアイドル達との攻防は、恐らく今夜だけでは済まない。好き放題されてカラカラカラになる毎日を想像し、Pは大いなる絶望と、そして少しの理解しがたい悦びを感じるのだった。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm40854607