【ゆっくり文庫10th】江戸川乱歩『心理試験』【うっかり文庫】

【ゆっくり文庫10th】江戸川乱歩『心理試験』【うっかり文庫】

"ぼくは生まれつきの悪人だったのかもしれない。"単発動画 series/330979ゆっくり文庫様『心理試験』  sm34642963 <編集後記>まずはゆっくり文庫様、10周年おめでとうございます。今回、10周年をお祝いする企画において、どんな動画を作ったらいいか、何も思いつかず、色々迷っているうちに、どんどん時間が過ぎて期限ぎりぎりになってしまいました。しかしある時、「そうだ、『ナイルに死す』を犯人視点で動画化すれば面白いのでは!」と思いついたのですが、制作に時間がかかりそうで、取りかかろうか迷っているうちに時間がなくなり断念。いっそ、今回は投稿を見送ろうかと考えていましたが、昨夜急に『心理試験』のうっかり文庫を制作できそうな気がしたので、一晩で制作しました。『心理試験』はゆっくり文庫の中でも私のお気に入りの動画の一つで、人気投票でも投票しています。推理小説において、いわゆる『倒叙もの』と呼ばれるジャンルですが、つい最近、『クロイドン発12時30分』という、同じ倒叙ものの名作を読んで、このジャンルでは、犯人の心理描写、および読者・視聴者から見て完璧に見えるはずの犯行を暴く過程が、重視されていると思いました。要するに、犯人は犯行の前・途中・後で何を考えるのか、なぜ犯行は暴かれるのか、この2点に倒叙ものの面白さが詰まっていると思います。『心理試験』において、後者は絶妙の一言ですが、前者、すなわち犯人の思考については、一見するとあまり掘り下げられていないように見えます。しかし、そうは思えません。この動画をきっかけに原作に目を通してみましたが、主人公の蕗屋は、犯罪を成功させること、ただそのことに強い執着を持っています。それでよく動画をふり返ってみると、蕗屋の行動は、犯罪の成功から来る利益よりも、成功した犯罪者になることにひたすら向けられています。だからこそ長い準備期間をかけたり、良心の呵責を感じなかったり、金を半分しか盗まなかったり、金を交番に届けたり、嫌疑がかかっても強い動揺を見せずに心理試験の練習に励んだりできたのだと思います。そうして明智小五郎によって犯行が暴かれて初めて精神が折れてしまいました。犯罪を目的のための手段としてではなく、犯罪の成功そのものを目的としているところが、『罪と罰』のラスコーリニコフや、『クロイドン発12時30分』の犯人・チャールズと違う点です。蕗屋の本当の動機は、犯罪の成功者になりたかったということだと思います。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm42952598