「夜桜」feat. vflower【残響レコードボカロ制作部】

「夜桜」feat. vflower【残響レコードボカロ制作部】

「夜桜」 春、疾風が吹く。黄昏から宵に至る風は強い。空を見ても月はなく、辺りは暗い。星明りと、家々から洩れるほんの少しの明りだけが、頼りだ。 そんな中、涙とともに桜を散らす。 どれだけ泣いたって変わりはしない。だからいっそ、嘆く声を殺し、彼の人を思う。 彼の人は、英雄になるはずだった。先の大乱で、「素晴らしい成績」を残したにもかかわらず、「多くの人を殺した鬼」として幽閉されてしまった。 幽閉されてしまった彼の運命には、ただの良家のお嬢様である私には抗うことすらできない。 暗い暗い、闇の中は静かで、そこに咲く桜は美しい。 思い切り声を出してみたいと思った。しかし、この声は届かないと、もう、識っている。 霞の中で桜が舞っている。温い空気と花の香りが混じる春荒れの中、私は立ち尽くした侭、独りきりで貴方のことを待った。 桜の花に色めく夜。遠いところで花の宴の音も聞こえる。けれど、私は独りだ。 泡沫のように時間は刻々と過ぎていく。薄紅は狂ったように舞い踊る。待てども待てども、此処に貴方が来ることは無い。 丹色が、あの人の頭の中にこびりついていることだろう。どれだけ、人を殺めたのだろうか。私には想像もつかない。けれど、永遠に幽閉されるだけのことを犯したのだろう。ならばきっと、私のあげた紺碧の守り石さえも色あせてしまっただろう。 夜明けが遠ざかっていく夜に、私は彼の人が幽閉されているという建物の入口に立ってみた。門番がいる。私の気配には気が付いていないらしい。 たったこれだけの扉のせいで。恨んでも、開かぬことに変わりはない。 春の夜中に、ひとことだけ問うた。「ねえ、どうして」それに応えなどなく、顔を臥せることしかできない。 想いはまだ伝えきれていない。実るどころか、花すらも咲いていない。 ――もう、泣くことはやめよう。 涙を呑み、暗い空を見上げた。 さあ、全てを灰燼に帰そう。 薄暗い、まだ明けさえもしていない夜の中。桜の花が三月の終わりを染め上げる。 幾星霜、貴方を想わない日は無かった。それでもまだ、逢えない。逢えないけれど、それでも。 想い続け、行動すれば、変わる。 それも、識っている。 春疾風が吹き終わる。夜は逆巻き、夜明けを呼び起こす。 月のない夜に、桜の花を血で濡らす。 悲鳴に色めく夜。泡沫の刻に私は、狂う。 この狂った世の中を変えるために、私が狂おう。そうして、貴方に逢えるというのなら。 この塀の向こうに、あなたはいるのだろう。「もうすぐ逢える」 そのときには、まだ、夜は明けていないはずだ。 雲の隙間から、春の薄い月が照らし、辺りの惨劇を明るくする。 その中に――Produce 残響レコードボカロ制作部  https://twitter.com/zankyovocaloDirection  みっどないと  https://twitter.com/Midnight_DirLyric  金森璋  https://twitter.com/akillernovelsIllustration  粉蜜めま  https://twitter.com/in_dreams127

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