「痛いんだ。」feat. vflower【残響レコードボカロ制作部】

「痛いんだ。」feat. vflower【残響レコードボカロ制作部】

失恋を、した。 あまりにも悲しい恋だった。 もう二度と、こんな思いはしたくないと願うほどに痛い。 胸の痛みは、一生消えないんじゃないかな。 なんとなくだけれど、そう思った。 『見えないもの』とか、『愛』とか、なんとか。 そんなものにすがって生きるのが、馬鹿らしくなった。 私くらいの年頃なら、きっとこの先も恋とか愛とかより取り見取りだろう。 けれど今はそんなものに興味がわかないどころか、ちょっと、嫌気さえもさしてる。 それくらい、好きだった。 あの日、入学式に君と出会ってから、毎日がドキドキして、ふわふわして、ちょっとしたことが幸せだった。 登校するのが楽しみだった。となりの席にならないか、席替えのたびに期待した。学級委員になった君は、とっても魅力的だった。 ――卒業式だから。 だから、告白したんだ。 それなのに、な。 ああ、痛い。「痛いよ……」 ずきずきと心が痛む。 『見えないもの』に価値があるなんて言った人は、何を思ってそんなことを言ったんだろう。 ないものなんて、『ない』って言ってしまった方が楽じゃないか。 恋心なんていう見えない、なんだかよくわからないものだって、『ないもの』にしてしまえばよかったんだ。 だったら、きっと。 こんな思いをしなくてすんだ。 もうそんなものに価値なんてつけたくない。 胸が痛む、だけ、だから。 ~♪ 携帯電話が震えて、着信音が鳴る。 メッセージアプリを開いてみると、それは私の失恋相手からだった。「今、ちょっとだけ時間いい?」 私は返信に困った。 既読をつけてしまった以上、無視することはできない。少なくとも、したくない。 なんとなくでいいんだ。 私が思うだけの言葉を、書き込めばいい。「大丈夫。どうしたの?」「いや、酷いことしちゃったな、って思って」「やだ、そんなこと思ってたの?」「だって、俺、女の子フッちゃうとか初めてだったし」「そう、だったんだ」「そうだよ。そんな酷いこと、したくないもん。だから、謝りたいって思って」「なんで? 何も悪いことしていないよ」「嫌だ。謝らせて」「ダメ!」 そこまで打って、私は携帯を放り投げた。 これ以上、傷を広げたくなかったから。 次の日、私は家族の前でにこにこと笑って過ごした。 ちくり、ちくり、と胸は痛むけれど。 君はそんなこと知らないままでいるんだろうな、と思うと、その度に絶望が襲ってきた。 お風呂に入っても、ベッドに入っても、君のことを思う気持ちが消えない。もう、傷つきたくはないのに。 恐る恐る、携帯のメッセージアプリを開く。 どうしても――君を思う気持ちが消えなかったから。 そうしたら、君との部屋に未読の文字がついていて、やっぱり怖くなった。 けれど、『ないもの』にするのが嫌だった。 そっと開いてみる。「お前のこと、嫌いだなんて嘘なんだ。あのとき……みんな、俺のこと見張っていて。好きだって言ったら馬鹿にされると思って、言えなかった。裏切ったって、思われるのが怖かった。本当にごめん。許して、なんて言えないし、言いたくない。でも、俺も」 そこで、一行区切ってあった。 数分、時間をおいて。「俺も、好きだよ」 と、書かれていた。 私の瞳から、涙があふれた。どうしてかはわからないけれど、ぼろぼろと、まるで子供のように泣いてしまった。 そうなんだ。私は、ただ、君のとなりにいることだけが望みだったんだ。 傷つきたくはないけれど、それでも、君のとなりにいるのが幸せだったんだ。 それなら、伝えなくちゃ。「私もね、好きだよ。君のこと」 見えないふりなんて、していちゃいけない。 君のこと、ずっと見ていたから。 それでも見えないものはたくさんあるけれど。 そんなものに価値があるって、どこかのエライ人は言っていたじゃない。「君が、好きなんだ」 ぼろぼろ、涙が零れる。 あんまりにも涙が零れるから、最後には画面がうまく見えなくなった。 でも、どうしても言いたかったから。 無理やり打った。――あいしてる。Produce 残響レコードボカロ制作部  https://twitter.com/zankyovocaloDirection とわいらいとLyric 金森璋  https://twitter.com/akillernovelsIllustration & Movie ひなかわ  https://twitter.com/hinakawasann

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