小林優奈「銀雪」【残響レコードボカロ制作部】

小林優奈「銀雪」【残響レコードボカロ制作部】

原曲 「銀雪」 feat. vflower【残響レコードボカロ制作部】 https://nico.ms/so38587706 歌唱 小林優奈 https://nana-music.com/users/623023https://www.youtube.com/channel/UCirvC7c2KRXF_x3MoShBrow 「銀雪」――凍った湖。 覗き込んだ僕の顔が、冷たい表情を映している。 朧月に照らされた、白い肌をしている、僕の表情。 霜が降り、雪が舞う。時折、月が隠される。 新しく降った雪をかき集め、手にすくって穴倉へ戻る。 ステンレスのカップに雪を詰め込んで、固形燃料を燃やしたスタンドにかけた。 こうでもしないと、飲み水すら手に入れられない。けれど僕にこの山を降るという選択はない。 もう残りがほんの少しになったチョコレートの欠けらを、一欠けだけアルミから取り出す。いくつ欠けらがあるのかをアルミの上から数え、ため息をついた。 果ての月――十二月。 その最後の日。 様々な思い出が駆け巡る。これは、走馬灯とも呼べるのではないか。 手がかじかんで、うまく字が書けない。これが人生の終結になるかもしれないのに。 僕が見つかるのは、もっともっと先、春が訪れ雪が溶ける頃だろうに。 それでもなんとか、彼女への最後の言葉を手帳へ書き込む。 ああ、助けは来ないだろうか。 湯が沸くまでの間に、また一歩、外へ身を出す。 足元に、凍った花が雪に沈んでいる。そっと、その花を手に取ろうと思った。 ――轟―― 風が吹く。僕の視界は六花に埋もれ、真っ白になってしまった。 白魔が、全てを攫っていく。こうして、せっかく小さく咲いた花でさえ、まっさらにしてしまうのだ。 あまりにも憎たらしくて、空を見上げる。紫黒。漆黒。ただひたすらに黒い空に、雪の花は咲く。 長い、長い夜。まだ、終わりそうにない。 もう、僕には明日すらもわからない。唯、独りこの場所で刻々と時を過ごすのだ。「なあ、どうして今なんだよ」 雪夜に問いかける。 どうして、こんなときに限って天候が荒れたのか。否、こんなときだから荒れたのか? わからない。明日すらわからないのに、そんなことがわかるもんか。 嫌気がさし、僕は穴倉の壁に背中を預けた。あまり、そういうことはすべきじゃない。体温を奪われるからだ。 こんなにも人間は弱い。 ああ、僕はここでゆっくりと命を削るのだ。何回も自覚を繰り返すたびに、悲しみが襲い、それに慄く。 愚かなことだと自分でも思う。 嘆き、慄くくらいなら来なければよかったじゃないか。 空の上には、北極星が光っているのだろう。夜の間は、頭上、真上にその星は現れる。 その輝きを思い出し、導かれ、また過去をなぞる。 穹窿は、ひたと黒く染まる。そこに、白妙の雪が舞う。 ふ、と。 暴風の音が止んだ。穴倉から顔を出してみる。――凛。 深更に、上月が覗いていた。 まだ雲は多いものの、しんと静まり返る雪の中に、琥珀に光る月が、覗いていた。「よかった」 これで、帰ることができる。 しかし、まだもう少しここにいることにしよう。どうせなら、あいつに会ってから帰る方がよさそうだ。 徐々に、明るくなっていく。暁闇が忍び寄ってくる。  東雲が雪嶺を侵していく。遠くに、日の出の気配がした。この時間を〈黄昏時〉の対義語として〈彼は誰時〉と呼ぶそうだ。 僕はバックパックに全ての荷物を包み込み、朝の分と思い取っておいたチョコレートをまた一欠け、口に放り込んだ。 美味い。素直に美味いと思えるのは、いつぶりのことだろうか。 一歩踏み出すと、掘り起こした雪が霜となり、ざく、と音を立てた。 ゴーグルをする前に、遠い空を見る。 一月一日。 ――初日の出が、僕を照らしていた。原作 金森璋「銀雪」Produce 残響レコードボカロ制作部Direction みっどないと https://twitter.com/Midnight_DirLyrics 金森璋 https://twitter.com/akillernovelsIllustration 前バ! https://twitter.com/maeba865

http://www.nicovideo.jp/watch/so38592833