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紀香バディ! 2 リ・アル | 藤原紀香
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神・藤原紀香、女磨きの第2章スタート!
あの『紀香バディ!』から2年。
さらに進化した藤原紀香の美の秘密に、カラダと心の両面から鋭く迫ります。
新生・紀香の現在形がここに。
撮り下ろしカット満載。
紀香バディドットコム
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<マル激・後半>自民党総裁選から読み解く日本の現在地とその選択肢/河野有理氏(法政大学法学部教授)
事実上、次の日本の首位を選ぶ自民党総裁選まで1週間を切った。9人もの候補者が乱立している割には、各論の政策論争はあるものの、その選択が大局的な観点から日本という国の針路にどのような影響を与えるかについては、ほとんど議論も論評も見られないのが残念だ。
この総裁選は実は過去10年にわたり日本の政治を牽引してきた安倍政治継承の是非が問われている選挙でもあり、さらに遡れば小泉政権による構造改革路線以降、推進されてきた新自由主義的な改革を方向転換するのかどうかが問われている重要な選挙でもある。
総裁選そのものに一般有権者の投票権はないが、そこで自民党の党員と国会議員がどのような選択を下すかは、今後の国政選挙における投票行動の重要な指針となるはずだ。
自民党は2009年の総選挙で大敗を喫し野党に転落したが、その選挙の当選者は民主党の308に対し119という自民党にとっては正に壊滅的な敗北だった。しかし、その後、民主党政権の失敗などもあり、安倍新総裁の下で衆院の議席が300近くになるまで党勢を回復させた。その意味で、今日の自民党は正に安倍自民党と言っても過言ではない状態にあった。
岸田政権が発足した際、宮沢喜一首相以来の宏池会出身の首相となった岸田氏は政権発足当初は「新しい資本主義」などを政策の旗印に掲げ、アベノミクスから決別する意思を明確に示していた。しかし、岸田政権も所詮は党内力学的には安倍政権と同じ安倍、麻生、茂木派ら自民党主流派の後押しで成立した政権だった。厳しい言い方をすれば、安倍傀儡政権だったのだ。岸田首相個人の思いはそうした党内力学の前に無視され、岸田政権では路線転換につながる政策はほとんど何も実現できなかった。
しかし、その後、安倍氏が凶弾に倒れ、統一教会問題や裏金問題の発覚で党内最大を誇った安倍派が崩壊状態に陥る中で、自民党は今回の総裁選を迎えている。その意味でこの総裁選で誰が次の総裁=首相になるかは、自民党の、ひいては日本の今後の針路を左右する重大な選択になる。
アベノミクスの下で円安が進み、株価は上がり大企業は史上最高益を毎年塗り替えた。しかし、その間、賃金は上がらず国民負担率も上昇を続けた。さらにここにきて物価が高騰し、国民生活は苦しくなる一方だ。相変わらず教育支出も子育て支援も限られている中で、少子化はさらに進んでいる。そうした中で格差は広がり社会の分断が進んだ。
今日本が問われているのは、このアベノミクス路線をこれからも続けるのか。引き続き市場を重視し、格差と分断を容認するのか、再配分重視へシフトすることで格差を是正し社会の連帯の再構築を図るのか。自己責任に重きを置くのか、リスクを社会に分散させるのか。この総裁選はその選択を問うものでなければならないはずだ。
政治思想史が専門の河野有理・法政大学法学部教授は、特に決選投票が石破対高市になった場合、安倍路線継承の是非が問われることになると指摘する。実際、高市氏の推薦人は大半を安倍派の議員が占め、支援者にもアベノミクスを推進した学者らが多く参集している。
これに対して、田中角栄氏を政治的な父と仰ぐ石破氏は、高市氏や他の候補と比べると、再分配志向が強く、たびたび格差の是正の必要性を訴えている。そこでいう格差とは所得格差であり、東京などの都市部と取り残された地方との格差でもある。田中政権の日本列島改造論当時、日本は右肩上がりの高度経済成長期にあり、再配分するための新たな財源が毎年生まれていた。しかし今日本は人口も減り、経済も縮小する中で、再分配する財源がそもそも細ってきている。格差を解消する方法が再配分だけでは足りない場合、それに代わる概念として例えば小さな経済圏を作ってそれを連携させる「自治」が考えられるが、果たして鳥取出身の石破氏はそれを理解できているか。
河野有理氏は、石破氏は政治改革や安全保障など自分が得意とする抽象的なテーマを好んで論じる傾向があり、財政や金融といった経済政策にはこれまであまり具体的にコミットしてこなかったことを指摘する。これまで党や内閣の要職を歴任してきた石破氏ではあるが、財務相や経産相の経験はない。現実的に石破政権というものを考えなければならないとなると、首相を支える経済チームがどのような布陣になるかが重要になる。
一方、高市氏はこの総裁選を保守対リベラルの戦いと捉え、その認識を明確に打ち出すことで、岩盤保守の支持をしっかりと掴んでいると河野氏は語る。しかし、高市氏に靖国神社に参拝し、夫婦別姓に反対し、女系天皇に反対するといった岩盤保守層が好む政策以外にどのような政策があるのか、とりわけ経済政策については未知数のところがあると指摘する。
この総裁選は日本に何を問うているのか。日本には今どのような選択肢があるのか。自己責任論に下支えされた新自由主義路線を今後も続けるのか、新たな道は存在するのかなどについて、法政大学法学部政治学科教授の河野有理氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44128727
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<セーブアース>当マグロを食べ続けたければ資源量の正確な把握が不可欠/真田康弘氏(一般社団法人オーシャン・ガバナンス研究所総括研究主幹/代表理事)
第24回のセーブアースは、2024年7月に釧路で開催された太平洋クロマグロの資源管理のための国際会議に出席したオーシャン・ガバナンス研究所代表理事の真田康弘氏をゲストに迎え、クロマグロの漁獲規制をめぐる状況について議論した。
今回開催された太平洋西部のマグロ漁を統括するWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の北小委員会と、太平洋東部のマグロ漁を統括するIATTC(全米熱帯まぐろ類委員会)の合同作業部会では、マグロの資源量が回復したとして3年ぶりに太平洋クロマグロの漁獲枠を増やすことが合意された。資源量が回復し漁獲枠が拡大されること自体は歓迎すべきことだ。しかし、実際は懸念材料もある。マグロの資源量のデータが必ずしも正確とは考えられない理由があるからだ。
マグロの消費量は世界的に増大しているが、とりわけ日本はクロマグロ、ミナミマグロの消費量が多い。クロマグロは大西洋クロマグロと太平洋クロマグロに分かれるが、日本は太平洋クロマグロに関しては漁獲と養殖で多くを賄う一方で、大西洋クロマグロに関しては輸入量が圧倒的に多い。
クロマグロは2010年代前半に相次いで絶滅危惧種に指定されたが、日本の大量消費がその一因とされた。大西洋クロマグロについては2010年に漁獲量を管理するICCAT(大西洋まぐろ類保存国際員会)で厳しい漁獲量の規制が導入されたことで、現在は資源量は回復傾向にあるという。
一方、太平洋クロマグロは、2013年ごろに資源量が過去最低レベルに落ち込んだため、2014年に絶滅危惧種に指定され、2017年には初期資源量の2.6%まで激減した太平洋クロマグロの資源量を20%まで引き上げる目標が設定された。その後、急速な資源量の回復が見られたとされ、今回釧路で行われた会議では漁獲枠を30kg未満の小型魚については1.1倍に、30kg以上の大型魚については1.5倍に拡大することが合意された。大西洋クロマグロも太平洋クロマグロも、2021年に絶滅危惧種の指定を外されている。
問題はそこで採用されている資源量のデータが必ずしも正確ではない可能性があることだ。
マグロの資源量は漁獲高から導かれる。資源調査のためだけに船を出せれば理想的だが、それではコストがかかりすぎるため、ISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)が各国から報告された漁獲高に基づいてマグロの資源量を推計している。マグロはルールに違反した捕獲が横行しているとの指摘があり、ルール違反の漁獲高は当然報告されていないと考えられる。そのため、不正確な漁獲高データに基づいて割り出された資源量も不正確なものである可能性が否定できない。
実際、2022年には、青森県大間町でマグロの漁獲高の一部を県に報告しなかったとして2人が逮捕されているが、違法なマグロ漁の漁獲高の規模は正確にはわかっていない。
大間の事件はまた、ルールに則った漁業を行うためには監視のメカニズムが整備される必要があることを示している。水産庁にはマグロの総漁獲量しか報告されないので、実際に市場に流通する個々のマグロが水産庁に正しく報告されたものかどうかを確認する方法が事実上ないからだ。これではせっかく国際的にクロマグロの漁獲枠を定めても、大間事件のように違法に漁獲枠を超えて獲られたマグロの大量流通が野放しになってしまう。一般社団法人オーシャン・ガバナンス研究所総括研究主幹の真田康弘氏は、日本には監視のメカニズムがほぼ皆無なのが現状だという。
クロマグロの資源量と規制は現在どのようになっているのか。マグロの資源量は本当に回復しているのか。資源を守りながら持続的にクロマグロを消費していくために、どのような仕組みが必要で、消費者であるわれわれには何ができるのか。真田康弘氏と環境ジャーナリストの井田徹治、キャスターの新井麻希が議論した。
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
【#390】小野坂・秦の8年つづくラジオ 2024.9.20放送分
『小野坂・秦の8年つづくラジオ』
“8年”こと小野坂昌也と“魚卵(ゴラン)”こと秦佐和子が出演するこの番組は、オープニングコントから各コーナー、ジングルまで番組を構成する全ての要素が投稿によって成り立っている
ハガキ職人養成番組です。ぜひあなたも参加してみてくださいね。
<マル激・後半>日本の次の総理を決める選挙でアベノミクス継承の是非を問わずにどうする/大沢真理氏(東京大学名誉教授)
岸田首相の後継を決める自民党の総裁選が9月12日に告示され、27日の投開票に向けて選挙戦が始まった。15日間という異例の長い選挙期間が設けられ、その間9人の候補者が討論会や立会演説会などで盛んに政策論争を交わす設定になっているが、ここまでの政策には疑問を禁じ得ない。それは、誰もアベノミクスの検証の必要性を口にしないまま、それぞれに勝手な経済政策を主張しているからだ。
今の日本にとって最大の懸案事項は、世界の先進国で唯一30年間、まったくといっていいほど経済成長ができず、生産性の向上も実現できなかったために、日本の国際的な地位がつるべ落としのように低下していることだ。しかも、最新の政府調査では生活が苦しいと感じている人の割合が半数を超えている。自民党はこの先もアベノミクス路線、すなわち新自由主義路線を継続するのか、それとも岸田首相が提唱はしたものの結局実現できなかった再分配路線に舵を切るのかは、この先の日本の針路を占う上でも最も重要な選択肢になるはずだ。
今年7月に公表された最新の国民生活基礎調査では、「生活が苦しい」と答える人の割合が59.6%に上った。国民の生活苦の原因は、賃金が上がらないことと物価の上昇が止まらないことだ。この30年間、アベノミクスによる円安のおかげで大企業は空前の利益を記録してきたが、その果実の大半は株主配当や内部留保に消え、労働者には還元されずに来た。しかも、その間も非正規雇用の割合が増え続けたため、実質賃金は低下し続けてきた。
東京大学名誉教授の大沢真理氏は、2016年以降の実質賃金の低下は消費税増税や円安の影響で物価が上がったことによるものだが、デフレだった2016年くらいまで、本来は上がるはずの実質賃金が下がってきたのは、雇用が非正規化したことが大きいと指摘する。ここ数年はアベノミクスによる円安で、輸入に頼っている食料品やエネルギーの価格はますます高騰し、国民の6割もが生活困窮を訴える状況になった。
そもそもアベノミクスとは「大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢から成るものだと喧伝されてきた。しかし大沢氏はこのスローガンには偽りがあると指摘する。
大沢氏の考えるアベノミクスの正体とは、雇用の非正規化の拡大や消費税増税、円安によるインフレで賃金を低下させた一方で、国民負担の逆進性を強める低所得層や中間層に対する「負担増と給付減」、とりわけ社会保障費の給付減に力点が置かれていた。第二次安倍内閣の最初の骨太の方針にある、「健康長寿、生涯現役、頑張る者が報われる社会の構築」、「社会保障に過度に依存しなくて済む社会」とは、「病気になるな」、「要介護になるな」、「頑張らない者は見捨てる」と宣言したものだったと大沢氏は言う。そして、実際に安倍政権はそれをことごとく実現した。
第一の標的に上がったのが、セーフティネットの中でも最後の砦ともいうべき生活保護だった。安倍政権は「生活保護費の1割削減」をスローガンに掲げ、生活保護の受給の手助けをする市民団体には警察の捜査を入れてまで、生活保護の削減に取り組んだ。
地域保健体制の脆弱化の加速もアベノミクスの一環で推進された。コロナ禍で日本のPCR検査数が一向に増えないことが度々問題視されたが、これは地域衛生研究所の職員数が削減される中で起きるべくして起きたことだった。
そうした中で、日本の中間層は没落し生活困窮者が急増した。
そうした国民生活の現状に目を向け、これまでの「アベノミクス」路線を継承するのか修正するのか、修正するとすればどのように修正するのかが、自民党の総裁選で最も先に問われるべきことではないか。小泉構造改革に始まりアベノミクスでとどめを刺した感のある新自由主義的な切り捨て経済政策が、失われた30年の間に日本に何をもたらしたのか、それをふまえて日本は今どのような選択をするべきなのかなどについて、東京大学名誉教授の大沢真理氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44103006
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・前半>日本の次の総理を決める選挙でアベノミクス継承の是非を問わずにどうする/大沢真理氏(東京大学名誉教授)
岸田首相の後継を決める自民党の総裁選が9月12日に告示され、27日の投開票に向けて選挙戦が始まった。15日間という異例の長い選挙期間が設けられ、その間9人の候補者が討論会や立会演説会などで盛んに政策論争を交わす設定になっているが、ここまでの政策には疑問を禁じ得ない。それは、誰もアベノミクスの検証の必要性を口にしないまま、それぞれに勝手な経済政策を主張しているからだ。
今の日本にとって最大の懸案事項は、世界の先進国で唯一30年間、まったくといっていいほど経済成長ができず、生産性の向上も実現できなかったために、日本の国際的な地位がつるべ落としのように低下していることだ。しかも、最新の政府調査では生活が苦しいと感じている人の割合が半数を超えている。自民党はこの先もアベノミクス路線、すなわち新自由主義路線を継続するのか、それとも岸田首相が提唱はしたものの結局実現できなかった再分配路線に舵を切るのかは、この先の日本の針路を占う上でも最も重要な選択肢になるはずだ。
今年7月に公表された最新の国民生活基礎調査では、「生活が苦しい」と答える人の割合が59.6%に上った。国民の生活苦の原因は、賃金が上がらないことと物価の上昇が止まらないことだ。この30年間、アベノミクスによる円安のおかげで大企業は空前の利益を記録してきたが、その果実の大半は株主配当や内部留保に消え、労働者には還元されずに来た。しかも、その間も非正規雇用の割合が増え続けたため、実質賃金は低下し続けてきた。
東京大学名誉教授の大沢真理氏は、2016年以降の実質賃金の低下は消費税増税や円安の影響で物価が上がったことによるものだが、デフレだった2016年くらいまで、本来は上がるはずの実質賃金が下がってきたのは、雇用が非正規化したことが大きいと指摘する。ここ数年はアベノミクスによる円安で、輸入に頼っている食料品やエネルギーの価格はますます高騰し、国民の6割もが生活困窮を訴える状況になった。
そもそもアベノミクスとは「大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢から成るものだと喧伝されてきた。しかし大沢氏はこのスローガンには偽りがあると指摘する。
大沢氏の考えるアベノミクスの正体とは、雇用の非正規化の拡大や消費税増税、円安によるインフレで賃金を低下させた一方で、国民負担の逆進性を強める低所得層や中間層に対する「負担増と給付減」、とりわけ社会保障費の給付減に力点が置かれていた。第二次安倍内閣の最初の骨太の方針にある、「健康長寿、生涯現役、頑張る者が報われる社会の構築」、「社会保障に過度に依存しなくて済む社会」とは、「病気になるな」、「要介護になるな」、「頑張らない者は見捨てる」と宣言したものだったと大沢氏は言う。そして、実際に安倍政権はそれをことごとく実現した。
第一の標的に上がったのが、セーフティネットの中でも最後の砦ともいうべき生活保護だった。安倍政権は「生活保護費の1割削減」をスローガンに掲げ、生活保護の受給の手助けをする市民団体には警察の捜査を入れてまで、生活保護の削減に取り組んだ。
地域保健体制の脆弱化の加速もアベノミクスの一環で推進された。コロナ禍で日本のPCR検査数が一向に増えないことが度々問題視されたが、これは地域衛生研究所の職員数が削減される中で起きるべくして起きたことだった。
そうした中で、日本の中間層は没落し生活困窮者が急増した。
そうした国民生活の現状に目を向け、これまでの「アベノミクス」路線を継承するのか修正するのか、修正するとすればどのように修正するのかが、自民党の総裁選で最も先に問われるべきことではないか。小泉構造改革に始まりアベノミクスでとどめを刺した感のある新自由主義的な切り捨て経済政策が、失われた30年の間に日本に何をもたらしたのか、それをふまえて日本は今どのような選択をするべきなのかなどについて、東京大学名誉教授の大沢真理氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
後半はこちら→so44103007
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<永田町ポリティコ> 自民党総裁選の舞台裏から見えてくるもの 真の争点は「政治とカネ」と「長老支配の打破」と「右派の再編」
自民党の総裁選が告示され、熱戦の火蓋が切って落とされた。
と言いたいところだが、どうもその実情は表から見えるものとはかなり違ったもののようだ。
確かに表面的には9人もの候補が鎬を削っているように見える。当面はそれで電波ジャックもできるだろう。そこに自民党全議員の共通した利益がある。事実、自民党の政党支持率は回復の兆しを見せている。
しかし、自民党の総裁選は事実上、日本の総理大臣を選ぶ選挙だ。そこで本当に問われなければならないことが、きちんと問われているだろうか。
まず、そもそもなぜ今、この時期にこのような形で総裁選が行われるに至ったのか。それは直前まで続投する気満々だった岸田首相が率いる政権の支持率がまったく上がらない中、向こう1年に2つの国政選挙を控え、岸田氏が続投は難しいと判断したからに他ならない。そして岸田政権への逆風は、直接的には統一教会問題から裏金問題に連なる一連の不祥事が原因だった。自民党は裏金議員の約半数に一定の処分を科す決定を下したが、国民の目にはそれが大甘と受け止められ、それが岸田政権が低迷を続けた大きな要因となっていた。また、政治資金規正法の改正も明らかに裏金問題の再発を防ぐためには不十分なまま終わってしまった。
それがこの総裁選に至った背景であるならば、まずこの総裁選で一番に問われなければならないことは政治とカネ、特に、明らかに大半の国民が納得していない裏金議員の処分と、裏金の再発を防ぐための法整備でなければならないはずだ。しかし、裏金問題に対して厳しいスタンスを取れば、党内の約4分の1を占める裏金議員の不評を買い、総裁選、とりわけ議員票が大きな比重を占める決選投票で明らかに不利になる。そのため、どの候補も政治とカネは大きな争点にしたくない。政治改革について、どの候補も今一つ奥歯に物が挟まったような物言いをしている背景にはそういう党内力学がある。
しかし、ここで政治とカネの問題にきっちり決着をつけることが日本にとって極めて重要な理由は、単に政治の浄化という意味を超えて、この先日本が失われた30年を取り戻すためには、時には痛みの伴う施策を実施することが避けられないと思われるからだ。政治への信頼が回復しない限り、痛みを甘受するよう国民にお願いすることなどできるはずがない。政府が本当に必要な施策を実施するためにも、政治の信頼回復は不可欠であり、それが政治とカネの問題の抜本的解決になることは論を俟たない。
また、この総裁選で問われなければならない問題がもう一つある。それは自民党の権力の二重構造だ。派閥政治が横行している時は、自民党内には必ず派閥ごとに主流派と反主流派が生まれていた。派閥の合従連衡で多数派を形成できた側が主流派となり、総裁を輩出した上に主だったポストを独占する。反主流派は当分の間冷や飯を食いながら、捲土重来、主流派への返り咲きの機会を窺う。
岸田政権下の裏金問題への対応では、岸田首相の思いとは裏腹に、踏み込んだ改革に後ろ向きだった麻生副総裁や茂木幹事長らが改革を骨抜きにしたと考えられている。その背景には岸田首相が政権を維持するためには、麻生派と茂木派の支持が不可欠だったという背景がある。
今回は岸田首相の英断もあり、麻生派を除き自民党内の派閥はいずれも解散を決定した。今回の総裁選は派閥の影響や権力の二重構造を解消するいい機会になるはずだった。しかし、今回支持率で常に上位に名を連ね、決選投票に残ることが有力視されている小泉進次郎氏は菅元首相の強い後ろ盾を得ており、小泉政権が実現した日には事実上、菅傀儡政権になるとまで言われている。実際、総裁選の結果を先取りして、官僚や業界団体は続々と菅詣でを始めているそうだ。小泉詣でではなく菅詣でなのだ。また、小泉氏を勝たせるために、菅氏の号令の下、相手候補の支持層の切り崩しなどで萩生田光一氏や武田良太氏らが暗躍しているとの情報もある。石破茂氏の陣営からも、菅氏からの切り崩し圧力がすごいと悲鳴が上がっていた。
自民党はいつまでこんなことをやっているのだろうか。有権者を欺くような総裁選のあり方もいかがなものかと思うが、それをチェックしなければならないはずのメディアは一体何をやっているのか。
もう一つ、この総裁選が持つ重要な要素は、安倍政権以来、自民党を支配してきた自民党右派の再編だ。民主党が政権を奪取した2009年の総選挙で自民党は119議席まで議席を減らす壊滅的な敗北を喫した。そこから安倍政権が成立する過程で自民党は300議席を超えるまでに党勢を回復し、安倍首相の下、党内右派が党の主導権を握る今日の自民党ができあがった。しかし、その自民党は安倍首相や安倍派が直接関与した統一教会問題と裏金問題の直撃を受け、再編を余儀なくされている。そこで自民党右派の新たな元締めの座を巡り、高市早苗氏と小林鷹之氏が争っているという見立てがある。この戦いに高市氏が勝てば安倍路線が継承されることになるが、小林氏が勝てば、安倍路線とは少々異なる新たな右派路線となる可能性が高い。小林氏の後ろには安倍政権下で安倍、麻生両氏と並んで3Aなどと呼ばれた甘利明氏がいることは周知のことだ。
しかし、それもこれもすべて、自民党内のコップの中の嵐に過ぎない。世界が激動する中、果たして日本は今そのようなことをやっている場合なのか。失われた30年はこの先も続くことになるのか。角谷浩一と神保哲生が議論した。
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
【#389】小野坂・秦の8年つづくラジオ 2024.9.13放送分
『小野坂・秦の8年つづくラジオ』
“8年”こと小野坂昌也と“魚卵(ゴラン)”こと秦佐和子が出演するこの番組は、オープニングコントから各コーナー、ジングルまで番組を構成する全ての要素が投稿によって成り立っている
ハガキ職人養成番組です。ぜひあなたも参加してみてくださいね。
<マル激・後半>なぜか「高規格」救急車事業が食い物にされるおかしすぎるからくり/内尾公治氏(株式会社「赤尾」特需部救急担当)
救急車事業をめぐって、福島県の小さな自治体が揺れている。
人口8,000人という福島県国見町。ここで12台の高規格救急車の開発・製造をして近隣自治体にリースするという事業が2022年9月、町議会で承認された。大手企業による企業版ふるさと納税を原資にするため、町からの予算の持ち出しはないという、当初は国見町にとってもいい話のように見えた。ところがその後、この事業を町と一緒に進めていた会社社長の「超絶いいマネーロンダリング」、「自治体を分捕る」といった発言が報道されたため、契約は解除され、官製談合防止法違反の疑いで百条委員会が設置されることになった。
7月に公表された百条委員会の報告書によると、議会で事業が承認される半年前に、ある大手企業から匿名の企業版ふるさと納税があり、その希望分野が「災害・救急車両の研究開発・製造を通じた地域の防災力向上に向けた取り組みに関すること」と指定されていた。町議会で予算が確定したあと、その大手企業と関連する救急車ベンチャー企業が、先述の「高規格」救急車の開発・製造、及びリース事業を一社のみの競争入札で落札しており、そこに官製談合があった疑いが持たれているのだ。
企業版ふるさと納税とは、正式には「地方創生応援税制」と呼ばれるもので、国が認定した地方公共団体の地方創生の取り組みに対して企業が寄付を行った場合に、法人税などから最大で寄付金額の9割までが軽減されるという制度。内閣府のサイトでは企業側には各地域の取り組みに貢献しながら税の軽減効果が得られるというメリットがあることが謳われている。制度は2016年に内閣府主導で創設され、2023年度の寄付総額は前年度比約1.4倍の約470億円まで膨れ上がっている。
特定の自治体にふるさと納税を行うことで、その企業は税額控除などによって寄付金額の9割までを回収できることに加え、国見町のように見返りに事業を請け負うことができれば、いわば2度おいしい思いができることになる。まさにそこが事業者にとって「超絶いいマネーロンダリング」たる所以だ。その一方で、寄付を受けた自治体側は新たな財源を得ることができる。それだけ聞くとwinwinの関係のようにも聞こえるが、国見町のように寄付した企業に事業の発注という形で還元されてしまえば、本来は法人税として納付されるべき税金が、最終的には寄付した企業の売り上げに化けるものであり、また寄付した事業者が無競争で事業を請け負う「官製談合」や「癒着」の温床ともなり得る危うい制度でもある。
人口減少自治体、ふるさと創生、地域の防災力、レジリエンス、官民共創…。今、注目されている用語が飛び交う中で国見町という小さな自治体で起きたできごとは、一自治体だけの問題では収まらない重大な事態となる恐れがある。いや、既に全国で同じようなことが起きている可能性も否定できない。
しかし、そもそもなぜ救急車なのか。
その背景には、救急車には国の規格がなく、自治体任せになっていることがあると、救急車製造に携わって30年になるという内尾公治氏は指摘する。大学卒業後トヨタの関連会社で救急車の製造に関わってきた内尾氏は、大手メーカーの限界を感じ現在の会社で、要望に応じたカスタムメイドの救急車作りを続けている。
総務省消防庁が高規格救急車と呼んでいるものは、救急救命士が活動している救急車のことで、その意味ではすでに自治体所属の救急車のほとんどが高規格救急車だ。しかし、車自体に「高規格」の基準はなく、現在は認定制度もなくなったため、カタログなどでは「高規格準拠」という定義のないあいまいな表現が使われている。広域事業組合も含め現時点では全国で700あまりの自治体が競争入札で高規格救急車を購入しているが、特に基準がないために車両の質は問われず、価格のみの競争になっているのが実情だと内尾氏はいう。
国見町の場合は、高規格救急車の基準がないことを逆手に取り、そのあいまいさをつく形で12台もの高規格救急車の開発・製造、そしてそのリースを新規事業として持ち込んできた事業者の話に簡単に乗ってしまったのかもしれないと、河北新報のスクープ記事でこの事態を知った内尾氏は語る。その意味では国見町も食い物にされた被害者だったのかもしれないが、同時に美味い話にはもっと気を付けるべきだった。
海外では救急車は安全性や換気、室内温度などの基準が数値で決められているほか、メーカー間の競争もあるため、救急車自体が大きく進化しているが、日本ではそもそも基準がなく、市場もトヨタと日産の独占となっていて競争がないことで、日本の救急車は海外で通用しない質の低いものになっているのが実情だそうだ。
今日、救急車はかつてのように事故や急病の患者を搬送するだけでなく、車内で救急救命士による応急処置を受けたり、医師が同乗して長時間搬送するなど多様な目的がある。新型コロナの感染が拡大する中で活躍したECMO(エクモ)カーもその1つだ。救急車自体も状況の変化に合わせて工夫が重ねられ、より安全により確実に患者の命を救うものになっていかなくてはならないと内尾氏はいう。
われわれの誰もがいつ救急車のお世話にならないとも限らない。その時に救急車のスペックによって助かる命が助からなくなる可能性だって大いにある。今も医師や救急救命士の要望を聞きながら、手作りでカスタム救急車の製造に取り組む内尾公治氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が、そもそも救急車に今何が起きているのかや、救急車行政の問題点、企業版ふるさと納税の危うい点などについて議論した。
前半はこちら→so44076853
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・前半>なぜか「高規格」救急車事業が食い物にされるおかしすぎるからくり/内尾公治氏(株式会社「赤尾」特需部救急担当)
救急車事業をめぐって、福島県の小さな自治体が揺れている。
人口8,000人という福島県国見町。ここで12台の高規格救急車の開発・製造をして近隣自治体にリースするという事業が2022年9月、町議会で承認された。大手企業による企業版ふるさと納税を原資にするため、町からの予算の持ち出しはないという、当初は国見町にとってもいい話のように見えた。ところがその後、この事業を町と一緒に進めていた会社社長の「超絶いいマネーロンダリング」、「自治体を分捕る」といった発言が報道されたため、契約は解除され、官製談合防止法違反の疑いで百条委員会が設置されることになった。
7月に公表された百条委員会の報告書によると、議会で事業が承認される半年前に、ある大手企業から匿名の企業版ふるさと納税があり、その希望分野が「災害・救急車両の研究開発・製造を通じた地域の防災力向上に向けた取り組みに関すること」と指定されていた。町議会で予算が確定したあと、その大手企業と関連する救急車ベンチャー企業が、先述の「高規格」救急車の開発・製造、及びリース事業を一社のみの競争入札で落札しており、そこに官製談合があった疑いが持たれているのだ。
企業版ふるさと納税とは、正式には「地方創生応援税制」と呼ばれるもので、国が認定した地方公共団体の地方創生の取り組みに対して企業が寄付を行った場合に、法人税などから最大で寄付金額の9割までが軽減されるという制度。内閣府のサイトでは企業側には各地域の取り組みに貢献しながら税の軽減効果が得られるというメリットがあることが謳われている。制度は2016年に内閣府主導で創設され、2023年度の寄付総額は前年度比約1.4倍の約470億円まで膨れ上がっている。
特定の自治体にふるさと納税を行うことで、その企業は税額控除などによって寄付金額の9割までを回収できることに加え、国見町のように見返りに事業を請け負うことができれば、いわば2度おいしい思いができることになる。まさにそこが事業者にとって「超絶いいマネーロンダリング」たる所以だ。その一方で、寄付を受けた自治体側は新たな財源を得ることができる。それだけ聞くとwinwinの関係のようにも聞こえるが、国見町のように寄付した企業に事業の発注という形で還元されてしまえば、本来は法人税として納付されるべき税金が、最終的には寄付した企業の売り上げに化けるものであり、また寄付した事業者が無競争で事業を請け負う「官製談合」や「癒着」の温床ともなり得る危うい制度でもある。
人口減少自治体、ふるさと創生、地域の防災力、レジリエンス、官民共創…。今、注目されている用語が飛び交う中で国見町という小さな自治体で起きたできごとは、一自治体だけの問題では収まらない重大な事態となる恐れがある。いや、既に全国で同じようなことが起きている可能性も否定できない。
しかし、そもそもなぜ救急車なのか。
その背景には、救急車には国の規格がなく、自治体任せになっていることがあると、救急車製造に携わって30年になるという内尾公治氏は指摘する。大学卒業後トヨタの関連会社で救急車の製造に関わってきた内尾氏は、大手メーカーの限界を感じ現在の会社で、要望に応じたカスタムメイドの救急車作りを続けている。
総務省消防庁が高規格救急車と呼んでいるものは、救急救命士が活動している救急車のことで、その意味ではすでに自治体所属の救急車のほとんどが高規格救急車だ。しかし、車自体に「高規格」の基準はなく、現在は認定制度もなくなったため、カタログなどでは「高規格準拠」という定義のないあいまいな表現が使われている。広域事業組合も含め現時点では全国で700あまりの自治体が競争入札で高規格救急車を購入しているが、特に基準がないために車両の質は問われず、価格のみの競争になっているのが実情だと内尾氏はいう。
国見町の場合は、高規格救急車の基準がないことを逆手に取り、そのあいまいさをつく形で12台もの高規格救急車の開発・製造、そしてそのリースを新規事業として持ち込んできた事業者の話に簡単に乗ってしまったのかもしれないと、河北新報のスクープ記事でこの事態を知った内尾氏は語る。その意味では国見町も食い物にされた被害者だったのかもしれないが、同時に美味い話にはもっと気を付けるべきだった。
海外では救急車は安全性や換気、室内温度などの基準が数値で決められているほか、メーカー間の競争もあるため、救急車自体が大きく進化しているが、日本ではそもそも基準がなく、市場もトヨタと日産の独占となっていて競争がないことで、日本の救急車は海外で通用しない質の低いものになっているのが実情だそうだ。
今日、救急車はかつてのように事故や急病の患者を搬送するだけでなく、車内で救急救命士による応急処置を受けたり、医師が同乗して長時間搬送するなど多様な目的がある。新型コロナの感染が拡大する中で活躍したECMO(エクモ)カーもその1つだ。救急車自体も状況の変化に合わせて工夫が重ねられ、より安全により確実に患者の命を救うものになっていかなくてはならないと内尾氏はいう。
われわれの誰もがいつ救急車のお世話にならないとも限らない。その時に救急車のスペックによって助かる命が助からなくなる可能性だって大いにある。今も医師や救急救命士の要望を聞きながら、手作りでカスタム救急車の製造に取り組む内尾公治氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が、そもそも救急車に今何が起きているのかや、救急車行政の問題点、企業版ふるさと納税の危うい点などについて議論した。
後半はこちら→so44076892
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
【#388】小野坂・秦の8年つづくラジオ 2024.9.6放送分
『小野坂・秦の8年つづくラジオ』
“8年”こと小野坂昌也と“魚卵(ゴラン)”こと秦佐和子が出演するこの番組は、オープニングコントから各コーナー、ジングルまで番組を構成する全ての要素が投稿によって成り立っている
ハガキ職人養成番組です。ぜひあなたも参加してみてくださいね。
<マル激・後半>5金スペシャル・映画が描く「つまらない社会」とその処方箋、そしてつまらなそうな自民党総裁選が問うもの
月の5回目の金曜日に特別企画を無料放送でお届けする5金スペシャル。今回は久しぶりに映画特集をお送りする。
今回取り上げた映画やドラマは「地面師たち」(大根仁監督)、「Chime」(黒沢清監督)、「マミー」(二村真弘監督)、「無言歌」(ふるいちやすし監督)、「転校生」(金井純一監督)、「そうして私たちはプールに金魚を、」(長久允監督)の6作品。いずれも社会のつまらなさや異常さ、理不尽さが隠れたテーマになっている作品だ。
「地面師たち」は土地をめぐる実在する詐欺事件をモデルにした小説を原作としたネットフリックスのドラマシリーズで、われわれがいかに土地所有という概念に取り憑かれ、振り回されているかを物語る作品だ。昨今の都内で所狭しと高層ビルの乱開発が進む背景が垣間見えるところも興味深い。
「Chime」は、何の変哲もない日常を送っていた料理教室の講師が、不審な行動を取る生徒との出会いをきっかけに、日常のつまらなさを痛感させられるとともに、非日常の危ない世界へと誘われていく様が描かれている。
「マミー」はこの番組でも繰り返し取り上げてきた和歌山カレー事件を扱ったドキュメンタリー作品で、警察や検察、メディアをはじめとする社会の総意が働いた結果、無罪の可能性が非常に高い林眞須美氏が犯人に仕立て上げられていった経緯が検証されている。警察に検察、メディア、そして裁判所などそれぞれが自分の立場からは合理的と思われる行動を取った結果、明らかに不合理な結論に達してしまう合成の誤謬が巧みに描かれている。
「無言歌」、「転校生」、「そうして私たちはプールに金魚を、」の3作品はいずれも女子中学生や女子高生が主人公の短編映画で、つまらない社会から抜け出したいと願う若者たちの希望や絶望が描かれている。
どの作品も現実の社会のつまらなさが描かれているとともに、社会をつまらなくしている原因やそこから抜け出すための処方箋のヒントが鏤められているようにも見える。
なお、番組の冒頭では、現在の政局を「長老支配」と「安倍(清和会)政治」を終わらせようとする岸田首相の目論見という視点から、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44047545
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<マル激・前半>5金スペシャル・映画が描く「つまらない社会」とその処方箋、そしてつまらなそうな自民党総裁選が問うもの
月の5回目の金曜日に特別企画を無料放送でお届けする5金スペシャル。今回は久しぶりに映画特集をお送りする。
今回取り上げた映画やドラマは「地面師たち」(大根仁監督)、「Chime」(黒沢清監督)、「マミー」(二村真弘監督)、「無言歌」(ふるいちやすし監督)、「転校生」(金井純一監督)、「そうして私たちはプールに金魚を、」(長久允監督)の6作品。いずれも社会のつまらなさや異常さ、理不尽さが隠れたテーマになっている作品だ。
「地面師たち」は土地をめぐる実在する詐欺事件をモデルにした小説を原作としたネットフリックスのドラマシリーズで、われわれがいかに土地所有という概念に取り憑かれ、振り回されているかを物語る作品だ。昨今の都内で所狭しと高層ビルの乱開発が進む背景が垣間見えるところも興味深い。
「Chime」は、何の変哲もない日常を送っていた料理教室の講師が、不審な行動を取る生徒との出会いをきっかけに、日常のつまらなさを痛感させられるとともに、非日常の危ない世界へと誘われていく様が描かれている。
「マミー」はこの番組でも繰り返し取り上げてきた和歌山カレー事件を扱ったドキュメンタリー作品で、警察や検察、メディアをはじめとする社会の総意が働いた結果、無罪の可能性が非常に高い林眞須美氏が犯人に仕立て上げられていった経緯が検証されている。警察に検察、メディア、そして裁判所などそれぞれが自分の立場からは合理的と思われる行動を取った結果、明らかに不合理な結論に達してしまう合成の誤謬が巧みに描かれている。
「無言歌」、「転校生」、「そうして私たちはプールに金魚を、」の3作品はいずれも女子中学生や女子高生が主人公の短編映画で、つまらない社会から抜け出したいと願う若者たちの希望や絶望が描かれている。
どの作品も現実の社会のつまらなさが描かれているとともに、社会をつまらなくしている原因やそこから抜け出すための処方箋のヒントが鏤められているようにも見える。
なお、番組の冒頭では、現在の政局を「長老支配」と「安倍(清和会)政治」を終わらせようとする岸田首相の目論見という視点から、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
後半はこちら→so44047546
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<ディスクロージャー&ディスカバリー>政府活動の適正化のために予算執行の監視という奥の手がある
第23回のディスクロージャーは、政府活動の適正化をウォッチするための「奥の手」として、予算執行記録の監視という手段について議論した。
政府機関が何らかの活動をすれば、必ず費用が発生する。移動すれば交通費がかかるし、外部事業者から役務の提供を受ければ費用が発生し、予算が執行される。予算が執行されれば必ず記録が残る。
しかも、予算執行の記録はその事業を担当した部署ではなく、通常は会計担当や経理担当の部署の管理下に置かれる。特定の事業の担当部署は様々な理由から、自分たちの活動内容を外部に開示したがらない場合が多いが、不正でもない限り、会計の担当部署は彼らが持つ予算や支出関連の情報を隠したい動機は働きにくい。予算執行情報からは具体的な活動の内容まではわからないが、どういう役職の人間が誰とどこに行ったのかなどがわかるだけでも、活動の外形は推察できる。いわば行政活動の尻尾を掴むことができるので、そこから手繰っていけば、本丸の情報に辿り着ける可能性も出てくる。つまり、正面から担当部署に情報公開請求をしてもなかなか出てこない行政情報が、予算から辿っていくことによって、出てくる場合がままあるということだ。実は日本よりも情報公開が進んでいるアメリカでも、NGOやジャーナリストによってこの手法はよく使われている。
日本では、例えば2001年の情報公開法施行前に、大量の行政情報が廃棄されていた疑惑というものがある。1999年に情報公開法が成立した直後から、法律が施行される2001年までの間に、行政文書が大量に廃棄されているという証言が霞が関の内部であった。しかしその真偽は正面から問い質してもなかなかわからない。廃棄されてしまった文書を開示させることは不可能だからだ。そこで三木氏は、文書の廃棄にかかった予算の開示を求め、その金額から実際の廃棄量を算出したところ、多くの省庁で1999年度から2000年度にかけて、その前後の年度の何倍もの文書廃棄予算が執行されていることがわかった。情報公開法施行直前の行政文書の大量廃棄は本当だったのだ。その中には外務省の沖縄密約に関する文書など、政府にとっては突っ込まれたくない不都合な文書が大量に含まれていた可能性がある。
他にも、旅行命令簿や復命書(報告書)、公用車の運転日誌などからもいろいろな情報を汲み取ることができる。また、警察庁が調達した物品の記録を予算面から精査すると、どのような顔認識ソフトが開発されているかなどがわかったりして、プライバシーや人権侵害が起きていないかなどを確認するための一助となる。これらはいずれも、表から請求してもなかなか出てこない情報だが、予算という入口を使えば貴重な情報を得ることができる場合がある事例だ。
予算執行情報というのは国民の税金が何に使われたかを示す情報のことだ。そのため官房機密費など一部の例外を除き、すべてが開示されて当然だ。予算の執行に関する情報を通じて行政をしっかりと監視することで、行政活動が適正に行われているか、不正や腐敗、濫用が起きていないか、人権やプライバシーが侵害されていないかなどを確認することは、重要な意味を持つ。
行政予算執行の記録とはどのようなもので、われわれはそれをどのように活用することができるのか、また後半では政治資金についてどのような制度設計が望ましいかについて、三木由希子氏とジャーナリストの神保哲生が議論した。
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【#387】小野坂・秦の8年つづくラジオ 2024.8.30放送分
『小野坂・秦の8年つづくラジオ』
”8年”こと小野坂昌也と”魚卵(ゴラン)”こと秦佐和子が出演するこの番組は、オープニングコントから各コーナー、ジングルまで番組を構成する全ての要素が投稿によって成り立っている
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<マル激・後半>災害関連死を防ぐ被災地支援には現場のニーズの吸い上げが不可欠/山岸暁美氏(在宅看護専門看護師)
能登半島地震からまもなく8カ月が経とうとしているが、当初から懸念されていた災害関連死が100人を超え、申請中の件数を含めると今後も増えることが予想されている。石川県災害対策本部の発表では8月21日午後2時時点で災害関連死は110人、死者の数は339人(行方不明者3人)となった。既に全体の3分の1が震災後に亡くなっている。
災害関連死は市町村が医師や弁護士などの専門家と協議して認定するもので、統一した基準があるわけではないため、認定されるまでに一定の時間がかかる。そのため現時点での災害関連死の数がそのまま被災地の現状を反映しているわけではない。しかし、現在も被災者の多くが震災当初と変わらないほど深刻な状況に置かれていると、能登町小木地区で開業をしている医師の瀬島照弘氏は指摘する。
ビデオニュース・ドットコムでは震災発生から間もない1月中旬に、瀬島氏に同行し支援の手が届いていない老老介護の在宅避難の状況をお伝えしたが、瀬島医師が訪問している被災者の中には、今も電気も水もない半壊の自宅で暮らす高齢女性がおり、熱中症や感染症が懸念される状況にあるという。バスが復旧していても運行されている本数が少ないため、実際には医療へのアクセスが困難だったり、精神的疲労などで家に引きこもっている被災者もいる。
阪神・淡路大震災以降、幾度となく震災を経験してきた日本は、さまざまな災害関連死を防ぐ取り組みを行い、支援の仕組みもできてきた。しかし、避難所や仮設住宅などの支援はあっても、ケアを必要とする在宅被災者に対する支援は未整備だ。この20年ほど国は、地域で最期まで暮らすことを目的に地域包括ケアシステムの構築を進めており、医療・介護・福祉の制度は在宅ケアにシフトしてきているが、こと災害支援については、いまだに病院・救急医療が中心の制度になっているのが実情なのだ。
こうしたなか、災害支援の経験があり厚労省の在宅医療関連の部署に勤務したこともある在宅看護専門看護師の山岸暁美氏は、コミュニティケアを推進してきた訪問看護師やケアの専門職を派遣するDC-CAT(Disaster Community-Care Assistance Team)を起ち上げ、全国の700人近い仲間とともに能登半島地震の被災地支援を行っている。発災直後は避難所支援、その後は福祉施設のスタッフの支援など、時が経つにつれてニーズが変わる被災地の現状に合わせて、地域に根ざしたケアのあり方を模索してきたという。
避難所の被災者のケアに関する公的支援が終了したあと、山岸氏は被災者が夜間に相談できる電話相談を始めた。仕事を再開したり、日中自宅の片付けなどをして避難所に戻った被災者が夜間に体調不良を訴えても、避難所には相談する場がなく、救急車を要請する前に相談できる#7119という制度も石川県になかったのだ。そのため今も、全国の看護師が当番制で被災者の相談に乗っているという。現在は新たな仕組みとして、看護師が被災者のもとに寄り添ってかかりつけ医とオンライン診療を行い医療へのアクセスを確保できるような仕組み作りを、各自治体と相談しながら進めている。
被災地の状況が変わっていく中でどういう支援が必要になるかは、現場に入って地域の人たちと話をして一緒に考えながら進めていかなければわからないと山岸氏はいう。災害関連死のリスクは現在被災者が置かれている生活の中にあり、その状況を理解しないと対策も立てられないのだ。
さらに、こうした支援を進めるためにも、災害法制に福祉の視点がないことが問題だと山岸氏は指摘する。全国社会福祉協議会も同様の視点で提言を行っており2年前にまとめられた「災害福祉支援活動の強化に向けた検討会」報告書では災害救助法第4条「救助の種類」に福祉を追記するよう求めている。
コミュニティケアの視点で被災地支援を続けるために何が必要か、今も能登半島の現場に足を運び続けている山岸暁美氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
前半はこちら→so44016197
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<マル激・前半>災害関連死を防ぐ被災地支援には現場のニーズの吸い上げが不可欠/山岸暁美氏(在宅看護専門看護師)
能登半島地震からまもなく8カ月が経とうとしているが、当初から懸念されていた災害関連死が100人を超え、申請中の件数を含めると今後も増えることが予想されている。石川県災害対策本部の発表では8月21日午後2時時点で災害関連死は110人、死者の数は339人(行方不明者3人)となった。既に全体の3分の1が震災後に亡くなっている。
災害関連死は市町村が医師や弁護士などの専門家と協議して認定するもので、統一した基準があるわけではないため、認定されるまでに一定の時間がかかる。そのため現時点での災害関連死の数がそのまま被災地の現状を反映しているわけではない。しかし、現在も被災者の多くが震災当初と変わらないほど深刻な状況に置かれていると、能登町小木地区で開業をしている医師の瀬島照弘氏は指摘する。
ビデオニュース・ドットコムでは震災発生から間もない1月中旬に、瀬島氏に同行し支援の手が届いていない老老介護の在宅避難の状況をお伝えしたが、瀬島医師が訪問している被災者の中には、今も電気も水もない半壊の自宅で暮らす高齢女性がおり、熱中症や感染症が懸念される状況にあるという。バスが復旧していても運行されている本数が少ないため、実際には医療へのアクセスが困難だったり、精神的疲労などで家に引きこもっている被災者もいる。
阪神・淡路大震災以降、幾度となく震災を経験してきた日本は、さまざまな災害関連死を防ぐ取り組みを行い、支援の仕組みもできてきた。しかし、避難所や仮設住宅などの支援はあっても、ケアを必要とする在宅被災者に対する支援は未整備だ。この20年ほど国は、地域で最期まで暮らすことを目的に地域包括ケアシステムの構築を進めており、医療・介護・福祉の制度は在宅ケアにシフトしてきているが、こと災害支援については、いまだに病院・救急医療が中心の制度になっているのが実情なのだ。
こうしたなか、災害支援の経験があり厚労省の在宅医療関連の部署に勤務したこともある在宅看護専門看護師の山岸暁美氏は、コミュニティケアを推進してきた訪問看護師やケアの専門職を派遣するDC-CAT(Disaster Community-Care Assistance Team)を起ち上げ、全国の700人近い仲間とともに能登半島地震の被災地支援を行っている。発災直後は避難所支援、その後は福祉施設のスタッフの支援など、時が経つにつれてニーズが変わる被災地の現状に合わせて、地域に根ざしたケアのあり方を模索してきたという。
避難所の被災者のケアに関する公的支援が終了したあと、山岸氏は被災者が夜間に相談できる電話相談を始めた。仕事を再開したり、日中自宅の片付けなどをして避難所に戻った被災者が夜間に体調不良を訴えても、避難所には相談する場がなく、救急車を要請する前に相談できる#7119という制度も石川県になかったのだ。そのため今も、全国の看護師が当番制で被災者の相談に乗っているという。現在は新たな仕組みとして、看護師が被災者のもとに寄り添ってかかりつけ医とオンライン診療を行い医療へのアクセスを確保できるような仕組み作りを、各自治体と相談しながら進めている。
被災地の状況が変わっていく中でどういう支援が必要になるかは、現場に入って地域の人たちと話をして一緒に考えながら進めていかなければわからないと山岸氏はいう。災害関連死のリスクは現在被災者が置かれている生活の中にあり、その状況を理解しないと対策も立てられないのだ。
さらに、こうした支援を進めるためにも、災害法制に福祉の視点がないことが問題だと山岸氏は指摘する。全国社会福祉協議会も同様の視点で提言を行っており2年前にまとめられた「災害福祉支援活動の強化に向けた検討会」報告書では災害救助法第4条「救助の種類」に福祉を追記するよう求めている。
コミュニティケアの視点で被災地支援を続けるために何が必要か、今も能登半島の現場に足を運び続けている山岸暁美氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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【#386】小野坂・秦の8年つづくラジオ 2024.8.23放送分
『小野坂・秦の8年つづくラジオ』
”8年”こと小野坂昌也と”魚卵(ゴラン)”こと秦佐和子が出演するこの番組は、オープニングコントから各コーナー、ジングルまで番組を構成する全ての要素が投稿によって成り立っている
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ポケットモンスター(2023) 第56話「リコVSチリ!バトルの先に」
交流戦ラストはリコ&カエデVSチリ!四天王・チリとの対戦に緊張気味なリコ…。強敵を相手にニャローテとどう戦うのか―!?一方、迷子になったテラパゴスを探して校舎に向かったドット。そこで出会ったのは同じくオレンジアカデミーに通う生徒・ボタンだった…!
ポケットモンスター(2023) 第55話「対決!パルデア四天王」
オレンジアカデミーに戻ったリコ、ロイ、ドット。基礎テストを終えた3人を待っていたのは、パルデア四天王との交流戦!それぞれ基礎テストを担当したジムリーダーとタッグを組み、四天王とバトルをすることに。ロイ&コルサVSハッサク!ドット&ナンジャモVSポピー!手に汗握るバトルの行方は―!?
【#385】小野坂・秦の8年つづくラジオ 2024.8.16放送分
『小野坂・秦の8年つづくラジオ』
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<マル激・前半>人口減少社会をいかに豊かに「デザイン」していくか/筧裕介氏(issue+design代表)
岸田首相が唐突に総裁選不出馬を表明したことで、日本にも9月末には新しい政権が誕生することとなった。メディアはまるで競馬の予想でもするかのように次の総理探しに忙しいが、誰がなっても日本が大きく変わりそうもないことを国民は既に見透かしているのか、報道量の割には総裁選への関心は必ずしも高くないように見える。
裏金に統一教会との癒着と深刻な政治スキャンダルが続き、日本は今、未曽有の政治不信のただ中にある。その一方で、「失われた30年」と呼ばれるほど、日本は過去30年にわたりほとんど経済成長ができず、あらゆる経済指標で先進国の最下位グループに沈んでいる。しかも、人口減少に拍車がかかるのをよそ目に、産業の効率化や生産性をあげるための産業構造改革もほとんど手つかずで、このままでは日本がますます貧乏になっていくことは避けられない。にもかかわらず、新しい総理候補の中で、ストレートにこうした問題に対応してくれそうな政治家が見当たらないとなれば、競馬予想程度の関心しか集まらないのは当然と言えば当然かもしれない。そもそも総理の首をすげ替えれば支持率が戻ると考えているとすれば、もはや自民党政治は終わっているとしか思えない。
そもそもの問題は、現在の厳しい政治、経済、社会状況の下で市民一人ひとりが豊かさや幸福を守っていくためには、日本はどうすればいいのかという具体的なデザインが示されていないことだ。豊かな未来像がイメージできなければ、期待の持ちようがない。
ソーシャルデザインが専門でNPO法人issue+designの代表を務める筧裕介氏は、自身が各地で行ってきた町おこし・村おこしプロジェクトの経験から、国レベルで何かを変えようとすると大変だが、より小さなユニットであれば変革は十分に可能だと語る。実際、筧氏のNPOはこれまで高知県佐川町や岐阜県御嵩町、和歌山県新宮市など、主に過疎化が進む20の中山間地で村おこしのプロジェクトを実施してきた。
筧氏の下に持ち込まれる住民や首長からの依頼は多岐に渡るが、例えば人口減少を食い止めたいという相談があれば、若者がその町や村に居続けたいと思えるような仕事や人間関係や文化を再発見したり再構築するなどを、住民からのボトムアップ方式で実現してきたという。また、雇用と同時にかつては豊かだった人間関係をいかに再構築するかも、町や村の再興にとっては重要になると筧氏は語る。
元々広告代理店の博報堂でデザインの仕事をしていた筧氏は、ソーシャルデザインやコミュニティデザインを考える上で「デザイン」が需要なキーワードとなると言う。元々「デザイン」は日本語では「意匠」と訳されており、外形的なものを指していたが、今は一般的には「設計」という意味で使われている。しかし筧氏はもう少し狭い意味でデザインを定義しており、それは「人の共感を生んで人の心を変える美しさと楽しさを伴う行為」のことだという。どんなに自分たちに影響があることでも、つまらなければ人は興味を持つことができない。逆に、人の共感を呼ぶことができれば、行動も変わっていくという。
日本を変えていくためには、日本の将来のデザインが多くの日本人の間で共有される必要があり、そのためにはまず人々の共感を生みやすい身近なところのデザインから取り組む必要がある。人口の少ない町に力のある首長が登場し、若者が入って行動すれば、その町や村が劇的に変わることを何度も目の当たりにしてきたと言う筧氏は、遠回りなようでも、自ら政治に関わりたいと思える人を増やすことから始めるしかないと語る。
なぜ日本には将来のデザインが見えないのか。日本の未来像をデザインできる政治家はいるのか。人口減少局面にある日本の未来をどうデザインしていけば、多くの日本人が豊かさや幸福さを失わない社会を作っていけるのかなどについて、デザイナーの筧裕介氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
後半はこちら→so43982653
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<セーブアース>当たり前な学習環境を実現するためには学校の断熱改修が急務だ/前真之氏(東京大学大学院工学系研究科准教授)
第23回のセーブアースは、前回に引き続き前真之氏をゲストに迎え、建物の断熱、とりわけ学校の断熱改修を取り上げる。
最高気温の上昇や猛暑日の増加など国連のグテーレス事務総長が言うところの「地球沸騰化」の進行を今、われわれは日々目の当たりにしている。そのような状況の下、特に子どもたちの学習環境が劣悪なまま放置されていることが問題だと東京大学大学院工学系研究科准教授で建物の断熱や気密に詳しい前真之氏は言う。
日本の公立学校の校舎は50年以上前に建てられたものも多く、またその多くはコンクリートで建てられている。しかし、天井が無断熱のため、特に最上階は屋根の太陽熱がそのまま室内に侵入するため、夏は高温になる。また、建築基準法で窓の面積が床面積の1/5以上なくてはならないことが定められているため、学校には例外なく非常に大きな窓が設置されているが、これでは太陽光がそのまま室内に侵入してくる。その一方で、窓を開けるとエアコンが効かなくなるため、窓が開けられず換気不良になってしまう。今の学校教室の夏場の環境は、とても人間が生きられる環境とは言えないと前氏はこれを厳しく断罪する。
このような学校の劣悪な環境は、エアコンをつければ解決するというようなものではない。建物の断熱がしっかりしていないと、冷房をつけても室内温度を下げることができないからだ。建物の断熱改修は冷暖房の効率を上げるためにも必要なものだ。
現在の学校の劣悪な環境を改善するためには、断熱改修と換気設備の設置が急務であると前氏は言う。まず、天井と壁の断熱や内窓の設置、窓の日射遮蔽などを行うことによって、夏だけでなく冬も快適な学習環境を整備することができるようになる。また、学校はオフィスや住宅と比べて大勢の生徒が一定の空間に密集するという特徴があるため、大量の換気をする必要がある。冷暖房の効率と必要な換気量の確保を両立するためには、デマンド換気や熱交換換気の導入が求められる。
このような断熱改修を行うにはコストがかかると考える向きは多いだろうが、実は総合的なコストという観点から見ても断熱改修は有効だ。断熱改修を行い換気設備を導入すれば、エアコンの稼働時間を大きく削減することができる。これで冷暖房のための電気代を抑えることができるほか、稼働時間が減ればエアコンの設置・改修コストも削減できる。建物を断熱材で覆う改修を行えば、建物自体の寿命も延ばすこともできる。コストはこうしたことを考慮に入れてトータルで考えるべきものだ。
日本は元来、特に子どもに対しては鍛えるとか我慢させることに価値を置いた発想が根強いが、それが学校教室の断熱化の妨げになっていると前氏は言う。人間誰しも多少の我慢は必要かもしれないが、昨今の猛暑、酷暑はもはやそのような発想で乗り切れるレベルのものではなく、無理をすれば容易に健康を害してしまう。気候変動について責任を負っていない一方で、義務的に学校に行かなければならない立場に置かれている子どもたちを、大人のわれわれが劣悪な環境の中に閉じ込めておくことの倫理的な問題も考慮する必要がある。無理なく快適に暮らせる環境を低エネルギーで実現するという方向に発想を転換する必要があると前氏は言う。
2回にわたり連続で高断熱、高気密住宅をテーマにお送りしているセーブアースでは、今回は学校の教室を快適でエネルギー効率の良いものにしていくためには何が必要かなどについて、前真之氏と環境ジャーナリストの井田徹治、キャスターの新井麻希が議論した。
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・後半>人口減少社会をいかに豊かに「デザイン」していくか/筧裕介氏(issue+design代表)
岸田首相が唐突に総裁選不出馬を表明したことで、日本にも9月末には新しい政権が誕生することとなった。メディアはまるで競馬の予想でもするかのように次の総理探しに忙しいが、誰がなっても日本が大きく変わりそうもないことを国民は既に見透かしているのか、報道量の割には総裁選への関心は必ずしも高くないように見える。
裏金に統一教会との癒着と深刻な政治スキャンダルが続き、日本は今、未曽有の政治不信のただ中にある。その一方で、「失われた30年」と呼ばれるほど、日本は過去30年にわたりほとんど経済成長ができず、あらゆる経済指標で先進国の最下位グループに沈んでいる。しかも、人口減少に拍車がかかるのをよそ目に、産業の効率化や生産性をあげるための産業構造改革もほとんど手つかずで、このままでは日本がますます貧乏になっていくことは避けられない。にもかかわらず、新しい総理候補の中で、ストレートにこうした問題に対応してくれそうな政治家が見当たらないとなれば、競馬予想程度の関心しか集まらないのは当然と言えば当然かもしれない。そもそも総理の首をすげ替えれば支持率が戻ると考えているとすれば、もはや自民党政治は終わっているとしか思えない。
そもそもの問題は、現在の厳しい政治、経済、社会状況の下で市民一人ひとりが豊かさや幸福を守っていくためには、日本はどうすればいいのかという具体的なデザインが示されていないことだ。豊かな未来像がイメージできなければ、期待の持ちようがない。
ソーシャルデザインが専門でNPO法人issue+designの代表を務める筧裕介氏は、自身が各地で行ってきた町おこし・村おこしプロジェクトの経験から、国レベルで何かを変えようとすると大変だが、より小さなユニットであれば変革は十分に可能だと語る。実際、筧氏のNPOはこれまで高知県佐川町や岐阜県御嵩町、和歌山県新宮市など、主に過疎化が進む20の中山間地で村おこしのプロジェクトを実施してきた。
筧氏の下に持ち込まれる住民や首長からの依頼は多岐に渡るが、例えば人口減少を食い止めたいという相談があれば、若者がその町や村に居続けたいと思えるような仕事や人間関係や文化を再発見したり再構築するなどを、住民からのボトムアップ方式で実現してきたという。また、雇用と同時にかつては豊かだった人間関係をいかに再構築するかも、町や村の再興にとっては重要になると筧氏は語る。
元々広告代理店の博報堂でデザインの仕事をしていた筧氏は、ソーシャルデザインやコミュニティデザインを考える上で「デザイン」が需要なキーワードとなると言う。元々「デザイン」は日本語では「意匠」と訳されており、外形的なものを指していたが、今は一般的には「設計」という意味で使われている。しかし筧氏はもう少し狭い意味でデザインを定義しており、それは「人の共感を生んで人の心を変える美しさと楽しさを伴う行為」のことだという。どんなに自分たちに影響があることでも、つまらなければ人は興味を持つことができない。逆に、人の共感を呼ぶことができれば、行動も変わっていくという。
日本を変えていくためには、日本の将来のデザインが多くの日本人の間で共有される必要があり、そのためにはまず人々の共感を生みやすい身近なところのデザインから取り組む必要がある。人口の少ない町に力のある首長が登場し、若者が入って行動すれば、その町や村が劇的に変わることを何度も目の当たりにしてきたと言う筧氏は、遠回りなようでも、自ら政治に関わりたいと思える人を増やすことから始めるしかないと語る。
なぜ日本には将来のデザインが見えないのか。日本の未来像をデザインできる政治家はいるのか。人口減少局面にある日本の未来をどうデザインしていけば、多くの日本人が豊かさや幸福さを失わない社会を作っていけるのかなどについて、デザイナーの筧裕介氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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エグミレガシー 第5話 誰が為にギターは鳴る
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