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【ウマ娘MAD】ゴーストスイーピートウショウ
桜花賞も間近に迫ってきたころ、スイープトウショウはいつものように駄々をこねていた。
「やだやだやだ~! ダートなんて汚れるからキライ!」
こんなワガママも、普段ならばゼンノロブロイと一緒に宥めるのだがーー。
今は桜花賞を控えた大切な時期。レースに向けて意気込んでほしい。
そこで少し、イジワルを言ってやることにした。
「ん?そうか。じゃあ、スイープトウショウはもう練習終わっていいぞ」
「えっ……えっ?」
してやったり。スイープトウショウは目を見開いて驚いた。しっぽもピンと立っている。
「魔法少女だもんな、練習なんかしなくても桜花賞に勝てるんだよな?」
「そ、それは……」
ピンと立っていたしっぽが今度は所在なさげに揺れる。帽子の上からでもわかるくらい、耳がしおれていた。
さて、イジワルもこの辺にして、早くダート練習にーー。
話を切り上げようとした矢先、スイープトウショウは叫んだ。
「もう知らない!このイジワルトレーナー!!」
くるりと体躯を翻し、寮の方へ全速力で逃げて行ってしまった。
しまった、やりすぎたか。普段なら駄々をこねても、最終的には熱心に練習に打ち込んでくれるのだが……。
「トレーナーさん……何かあったんですか?」
いつの間にか、ゼンノロブロイが隣に立っていた。
「ちょっとヘソを曲げちゃったみたいだ。明日、よく話して聞かせるよ」
ゼンノロブロイはそうですか、と寂しそうに返事をして再びコースへ戻っていった。
心の隅がチクリと痛む夕暮れの出来事だった。
翌日。練習時刻になってもスイープトウショウは現れなかった。
お転婆のスイープトウショウでも、練習をサボったことはない。
何かあったんじゃないか、それとも昨日のやりとりがマズかったのか。
あれこれ考えながら寮から続く階段を眺めていると、こちらに歩み寄ってくるウマ娘の影があった。
「あれは……フジキセキか?」
遠目に見えた憶測は確信に変わった。
「やあ、トレーナーさん。今、少しお話いいかな?」
フジキセキはいつもの飄々とした調子で話す。
「昨日はウチの寮の子が迷惑かけちゃったみたいで、ごめんね?レースが近い大事な時期だからこそ、トレーナーさんも厳しく指導してくれている。それはわかっているんだけどーー」
フジキセキはそこで言葉を切ると、横に一歩動き、「ホラ」と促した。
フジキセキの背後から現れたのはスイープトウショウだった。俯いているが、目の周りが真っ赤に腫れているのがわかる。
「……トレーナー……昨日は……昨日はごめんなさい」
今にも消え入りそうな声でスイープトウショウは呟く。
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