「英雄」「運命」「田園」「第7」「合唱」という中期から後期にかけての大交響曲群の中にあって、ひとり独特の佇まいを見せる異質の作品です。名曲を残してきた大作曲家ならではの余裕すら感じさせます。全体にユーモアやウィットに富み、ここではいつもの苦虫を噛み潰したような表情は見えません。初演は「第7」と同じで、快活な明るさに満ちているところも共通しています。この時期ベートーヴェンはアマリエ・ゼーバルトとの恋愛が取沙汰されていて、そうした浮き立つような気分が表れているのかもしれません。一見、軽い印象ですが内容はさすがに密度が濃く、ベートーヴェン自身も「第7」を“大きな交響曲”、「第8」を“小さな交響曲”と呼び、とても気に入り自信を持っていたようです。