記憶を後世に…92歳が語るシベリア抑留 東京・福生市職員が制作

記憶を後世に…92歳が語るシベリア抑留 東京・福生市職員が制作

2018年3月2日 第2次世界大戦後、およそ3年間にわたって重労働を強いられた「シベリア抑留体験」のドキュメンタリー映像を、東京・福生市の職員が作り上げました。制作のきっかけは、市内に住む92歳の男性の貴重な記憶でした。 福生市で暮らす近田明良さん(92)はシベリア抑留の体験者です。近田さんは1945年8月の終戦後、旧ソ連の捕虜としておよそ3年間、強制労働に駆り出されました。極寒の野外での作業を強いられ、十分な食事も取れない過酷な環境の下で多くの仲間を失いました。この近田さんの記憶を映像に残そうと動いたのは、福生市公民館の森田典子副館長でした。 2017年の終戦記念日、公民館で近田さんに講演してもらったことが制作のきっかけになったといいます。森田さんは「ここまで残酷なことがあったというのは知らなかったので恥ずかしいと思ったし、自分のすぐそばであったことのような感覚を覚えた。他の人にも感じてもらうことができないかと考えた」と話します。 シベリア抑留の体験はこれまで、家族にもあまり語ってこなかったという近田さんでしたが、記憶を形に残して伝えたいという思いから、撮影に協力しました。近田さんは「ちょっと言葉が止まったりしたこともありました。やっぱり、どうしてもそこの場面に行くとその現場を思い出しますからね。もし戦争になれば、こういう悲惨なことになるぞということをしっかり受け止めてもらいたい」と話します。 近田さんへのインタビューは4時間を超えました。市の広報課の職員が自前の機材で撮影し、市役所の休憩室で森田さんがナレーションを入れるなど、職員だけの手で37分間の映像にまとめ上げました。森田さんは「語り部の高齢化が進んでいく中で、近田さんの話を1人でも多くの人に聞いてもらいたい」と話します。近田さんは「市の職員に『よくやってくれたな、よくやってくれましたね』と言いたいですね。シベリア抑留の実情が少しでも皆さんに分かってもらえれば、素晴らしいことだと思います」としています。 シベリア抑留の貴重な記憶と、証言者や市の職員の「伝えたい」という思いが刻み込まれた映像は、福生市役所のホームページで公開されています。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm32822029