3度目の初恋

3度目の初恋

あれはまだ私が小さな時の話だった。親に連れられて行った社交パーティーの会場、その片隅に一輪の花が咲いていた。まだ幼かった彼からすれば、社交パーティーなんて退屈極まりなく、沈んだ面持ちで壁に寄りかかっている。私は少し彼のことが気になって声をかけてみた。「パーティーは退屈かしら?」彼は私を見上げると少し不思議そうな顔をしながらうんと言った。「そうね素直でよろしい。さてどうしたものかしら・・・そうだわ!お庭の方へ行きましょう!!」そう言って私は彼を連れ出し、池や噴水、様々な花を見て歩いた。私は時折「楽しい?」と聞いてみたけど、彼からは「ふつー」としか返ってこなかった。全く失礼しちゃうわ。そのまま歩いているとしばらくして大きな木に私達はたどり着いた。すると彼は急に目を輝かせてするすると木に登って行き、枝の上から私を見下ろした。「どうしたの?来ないのかい?」「私、木に登ったことなんてないもの!」「だったら僕が教えてやるよ」そう言って彼は丁寧に木登りを教えてくれた。一生懸命私が登り終えると、「な、いい眺めだろ?」と彼は言った。初めて見たその景色はキラキラと輝いて見え、どこまでも広がるその青は私の心にしみこんでいく。「ええそうね、最高だわ!」私ほんとは少し怖かったけど、彼と一緒だったから平気だった。 いつからだろう・・・小さな思い出が、恋心に変わったのは。また・・・もう一度、彼に会えるかしら?ー重巡洋艦 足柄 手記よりー

http://www.nicovideo.jp/watch/sm33024480