朝起きると、とても体が重かった。特に頭痛が酷く、暫く起き上がれなかった。「起きてください、動画投稿しないと茜ちゃん達が泣いちゃいますよ?」 布団の中で頭痛と闘っていると、そんな声が聞こえてきた。「いや、そうはいっても編集まだ終わってへんし、投稿出来へん」 なんとか布団から這いだし、声の主と向き合う。淡い紫色の髪の毛に、綺麗な瞳。本人は気にしているが特徴のある体型、いや無いといった方が正しいか。去年、俺の家に来た結月ゆかりだ。「何を言っているんですか、動画なら昨日徹夜で作っていたじゃないですか」 はて、そう言われ記憶を遡らせてみたはいいが、どうしても昨日の事が思い出せない。ふと机が気になりゆかりから机に注目を移す。散らかった酒瓶、一つ二つではない。上には何か乗っていただろう皿が数枚。「思い出せないんですか?まぁ無理もありません、昨日は沢山飲んでいましたからね」 昨日、飲んでいた?あぁ、確か、飲んだような気もする。「ふわぁ、おはようございます」「こらあかり、またマスターの布団に潜り込んだんですか!」<中略>「そんなことより、はよ動画投稿せーや」 茜に背中を押され、PC前に座らされる。そしてPCを立ち上げ、動画編集用のフォルダを開く。そこには記憶にはない編集済みと書かれているフォルダがあった。そして、恐る恐る開くと中にはおそらくエンコード済み、あとは投稿するのみとなっている動画ファイルがひとつあった。「それ見ても思い出さんとか、酒の量減らさなあかんな」「そうだね、昨日私達と頑張って作ったっていうのに、忘れられちゃうなんて」 本当にすまない、そう言って頭を下げる。 兎に角だ、こうして動画が作り上げられているのだ、投稿しよう。 その前に一応動画を流してみよう、もしかしたら何か思い出せるかもしれない。 結果から言うと、何も思い出せなかった。―お酒に溺れ編集中の記憶を失った者の日記から抜粋【 mylist/61757516 】(ネタとかじゃなくてマジです、思い出せない)