アオハルマン

アオハルマン

「今日は付き合ってくれてありがとうございました」 夕暮れ時の赤い空。また、前に進めずに一日が終わってしまう。 URAファイナルズの後、日帰り温泉だとか、水族館だとか、近づくために色んな言い訳をして君を連れ出した。けど、どうにもそれ以上の仲になれない。「えっと……」 あの人が悪いんじゃなくて、立ち止まっているのは勇気のない私。こんなんじゃ、またミークに怒られちゃうな。「あ」 声につられて目線を動かすと、今度あたらしく開催するイベントのポスターがあった。「アオハル杯……たしかにウマ娘たちにとって学園で過ごしてレースに出てっていうのはかけがえのない青春ですからね」「はは、自分は学生時代なんてあっという間で青春なんて考える暇もありませんでしたよ」「……」 気がつくと私は、笑いながら頬をかく君の手を握っていた。 ――お酒にあてられたのかもしれない。そうでなければこんなことできないから。「なっ……なら! 今から青春してもいいんじゃないですか! ……私と」「え……」 数秒、沈黙があった。二人は何も言わないまま、見つめあっていた。それは私を我に返らせるには十分な時間だった。 ……何を、なにを言ってるんだ私は。「い、いやあの! えと……なーんて! 冗談です!」 赤くなった顔を隠すためにそっぽを向いて、逃げるように歩き出した。繋いだ手が離れる。けれど、私の手はまたすぐに握られた。「え――」「自分は! ……自分は、葵さんと、なら」 手を引かれ、まっすぐと見つめられた。 私は黙って、私と繋がれた君の手に、もう片方の手を重ねた。  その時、ふと閃いた! このアイディアは、ハッピーミークとのトレーニングに生かせるかもしれない!

http://www.nicovideo.jp/watch/sm39054318