屍の咲く境界

屍の咲く境界

友人の冬の追憶によせて曲名 : 屍の咲く境界(2013/2020)作曲者 : 諸星中央演奏 : Sibelius 2020.1 & Note Performer 3.3.1イラスト : saco----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------気づけばここでもかしこでも生命は平然と存在し、粛々と失われていた。春のざわめきも、夏の激しさも、秋の気落ちも、確かに生命の姿で、この草木と同じように私たち人間も存在している。けれどもいつか何ものにも冬は回ってきて、たくさんの生命が殺され、しかし同じくらいを見逃して、また春を迎える。一年をここで傍観して、多くが死に、多くが生まれたが、なにも変わってはいなかった。誰が死のうとも、誰が生まれようとも、他に悲しむものも喜ぶものもなく、ただ落ちていくもののようにするりと生命は回っていた。彼が死んだことも、私が生きていることも、誰も何も問題にしていなかった。草木は土石と同じように佇み、生命を有しながらそのように振る舞わない。きっと動物も同じなのだ。私の足を避けてゆく蟻を見ながらそう思う。私は一年間がなかったかのように、水渚に進んでいって足を浸した。特段の感覚はなく、脚に触れる大気と水の境目はよく分からなかった。私はぼんやりと脚を縫っていく水を眺め、そして息を吸った。かすかな春の匂いが胸に冷たくて、私はそうして久方ぶりの涙を流した。落ちた涙は川に呑まれ、静かに進む水に押され溶け込んでゆく。誰もこの川に涙が含まれているのを知ることはないのだろう。生命すら些末なこの世にあって、人ひとりの涙など。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm41511694