月夜の浜辺(中原中也)

月夜の浜辺(中原中也)

月夜の晩に、ボタンが一つ波打際に、落ちてゐた。それを拾つて、役立てようと僕は思つたわけでもないがなぜだかそれを捨てるに忍びず僕はそれを、袂たもとに入れた。月夜の晩に、ボタンが一つ波打際に、落ちてゐた。それを拾つて、役立てようと僕は思つたわけでもないが   月に向つてそれは抛はふれず   浪に向つてそれは抛れず僕はそれを、袂に入れた。月夜の晩に、拾つたボタンは指先に沁しみ、心に沁みた。月夜の晩に、拾つたボタンはどうしてそれが、捨てられようか?

http://www.nicovideo.jp/watch/sm44601073