ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー病室の窓から差し込む夕陽が、彼女の細い指先を照らしていた。ベッドの上で、彼女は静かに横たわっていた。点滴の管が腕に絡みつき、機械の単調な音が部屋の沈黙を支配している。 「苦しくない?」と、僕は聞いた。 彼女はゆっくりとまぶたを開き、笑った。 唇は乾き、声にならない声を紡いだ。 「……大丈夫だよ。」 嘘だ。わかる。それでも僕は、彼女の嘘を壊さないようにただ頷いた。 彼女の目は、昔と変わらず澄んでいた。だけどその奥にある何かが、僕にはわからなかった。彼女が何を考え、何を感じていたのか、僕には知る術がなかった。 僕たちは幼い頃から一緒だった。夏の暑い日に、かげろうの立ち込める河原で水をかけ合い、夜には花火の残り香を纏いながら並んで歩いた。 彼女はよく笑い、僕の冗談に腹を抱えて笑ってくれた。でも、その笑顔の裏にあるものに、僕は目を向けていなかった。 彼女はずっと苦しんでいたのに。「ねえ」 彼女が僕の手を握った。弱々しい力だった。 でも、その手の温もりが、確かにそこにあった。 「私、生きるってどういうことかわからなくなっちゃった」 僕は何も言えなかった。 「生きるって、こんなに苦しいのかな」 涙が頬を伝い、彼女の声は震えていた。僕は彼女の手を強く握り返した。 「ごめんね、何もできなくて」 「ううん。いるだけでいいの」 彼女は微笑んだ。けれど、その微笑みがどこか遠くに行ってしまいそうで、僕は不安だった。 夜が来た。 病室の扇風機のタイマーがカチッと鳴り、静寂がすべてを包み込む。 僕は彼女の手を握ったまま、眠りについた。 朝、目を覚ますと、彼女の手は冷たくなっていた。 涙が一粒、彼女の頬に落ちた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあたまわるいやつさん考案の短編小説がモチーフの楽曲です小説と合わせて聴いていただけると嬉しいです…!Composer:あたまわるいやつ https://x.com/Atawaru_Ch Illust:夜山りと https://x.com/Kuroihinata Movie:滅天使 https://x.com/metsu43125 Mix:どらぬこ https://x.com/doranuko_mixcat Vocal:どおなつ https://x.com/donatsu213