「おいていく」 解禁文 愛をもらえなければ、老いて、壊れて、やがて死ぬ。この世界ではそれが当たり前だった。けれど、私はもう、誰からも愛をもらいたくなかった。あの人のぬくもりを最後に、それ以外の愛を受け入れることが、どうしても出来なかった。他人の体温は、全部、偽物みたいに冷たかった。みんなは言う。「愛は栄養なんだから、もらわなきゃダメだ」と。でも、私にとってそれは生き延びるためのものじゃなくて“あの人と生きた証”だった。だから私は、老いることを選んだ。皺が増えて、髪が抜けて、骨が軋むたび、ようやく彼のいる場所に近づいていくような気がした。最期に出会った青年の瞳は、どこか似ていた。もうこの世界にはいないはずの、“ナニカ”を宿していた。ああ、これでいい。この痛みのまま、終われるならきっと私は、まだ“愛している”んだと思う。解禁文 https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:998021d1-1e93-4c28-b560-6909c7acd68b