【断章四】 ・男女間でしか愛情が循環しないため、配偶者を持たない母親は通常の経路で愛情を補給できない。 ・こうした母親たちは〈代替供給制度〉の対象となり、政府認可の“愛情代替業者(IOL供給者)”から人工的に生成された愛情物質を定期的に受け取る。 ・IOLは本来、違法な嗜好薬として扱われていたが、供給源のない家庭に限り合法的に配給される。 ・ただし人工的愛情には“流動性が高く安定しない”という欠点があり、母体内での保持時間が短い。そのため、※1母体余剰が形成されず、子供へと渡る愛情量が極端に少ない。 ・このため、シングルマザー家庭の子供は「仮想的寿命(Pseudo Life Expectancy)」と呼ばれる制度的限界値を持ち、一定年齢に達する前に命が尽きることが多い。 ・政府はその事実を公表していないが、出生記録の裏データでは“単親家庭の平均停止年齢”が他の家庭よりも著しく低い。 ・IOL依存が進行した母親は感情機能が劣化し、愛情の感覚そのものを認識できなくなる。 これを〈※2悲環症第二段階〉と定義する。 ※1 本来、愛情は男女間のみで循環するため、親子間の愛情は「供給構造の副産物」として定義される。母親が父親から受け取った愛情の残余が、微量ながら子供へと流れる形で維持されている。 ・政府はこの“副産物の供給”を「母体余剰」と呼び、出生率維持のために最低限の愛情値を母親に与える政策を実施している。 ※2 悲環症第一段階は感情の起伏が著しく激しくなる。 付属情報 https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:7482ccbe-abb7-4e57-9581-843c75adfd54