私事解禁文

私事解禁文

「私事」解禁文夜の駅は、蛍光灯の明かりが少しだけ青白く揺れていた。 仕事終わりの人たちが無言で列を作り、改札を抜けていく。いつものように、その流れに身を任せるつもりだった。 行き先は、愛を買うための街。 今日も、誰かの腕の中で一晩だけ生きながらえるはずだった。それでも、足が止まった。 ホームの端、線路の下から風が吹き上がる。 ふと、その風がやけに冷たく感じた。電車の到着を知らせるアナウンスが響く。 車体が入ってきて、ドアが開く。 乗れば、生き延びるための夜が始まる。 けれど、今日は一歩も動けなかった。もう、行かなくてもいいかもしれない。愛をもらえなければ、老いて、やがて死ぬ。それでも、誰かに生かされ続けるより電車が出ていった後のホームは、急に静かになった。蛍光灯の明滅が、まるで鼓動みたいに見えた。帰路はいつもより長く感じた。部屋に着くと、窓の外からアナウンスが聞こえた。 「明日も、愛を忘れずに。」 どこかの広告の一節だった。 それがやけに遠く感じられて、笑ってしまった。煙草に火をつける。煙がゆっくりと天井に溶けていく。この世界がどうなろうと、俺はもう行かない。それは他人にとっては些細なことでも、俺にとっては確かに私事だった。解禁文 https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:6b8e200a-e855-4a32-b616-5397736233a7

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