第64章「抹消された記録」ボストンの地下を通る旧鉄道跡――地図にも記されていないトンネルの最深部。ネイトとディーコンは、黙々と進んでいた。ディーコンが立ち止まり、前方の鋼鉄製セキュリティドアを指さす。ディーコン「……ここが、C.I.T.の“研究保管区画”の入口だ。だが……」ネイトの目に飛び込んできたのは、赤いランプが点灯した電子制御ロックと、ターミナルに浮かび上がる文字列だった。【アクセスコードを入力してください】【エラー:認証不正再試行不可】ディーコン「……コードがなければ開かない。突破も不可能だ。物理ロックじゃない、これは……」ディーコンが眉をひそめる。ディーコン「ブラックボックス型のCIT暗号認証システム……上位職員専用だ。ノーラ中佐級のアクセス権限が必要ってわけだな」ネイトがターミナルを操作するが、数秒で“アクセス拒否”の警告が表示される。ディーコンが傍らの端末にリンクして、データベースへ侵入を試みる。ディーコン「何とか……彼女のログイン履歴か、通信記録が残っていれば……」しかし数秒後、彼の表情が険しく変わった。ディーコン「……全部、削除されてる。いや、痕跡ごと“上書き消去”だ。高度な手口だ」「つまり、誰かが……ノーラの過去を完全に隠蔽したってことか」「おそらく本人か、それとも彼女の上にいた……“COLD・CODE”の関係者だろう」ネイトの拳が無意識に震える。――ここまで来て、何も掴めないのか……?そのときだった。ディーコン「ッ……聞こえたか?」とディーコン。地下通路の奥から、不気味な電子音と共に、金属を引きずるような足音が響いた。ディーコン「来るぞ……ッ!」薄暗い廊下の奥から現れたのは、CITスコーチ部隊。全身を耐放射能用の黒い装甲で覆い、目は赤いゴーグルで光っている。6体――無言の殺意を放ちながら接近してくる。「“抹消者(イレイザー)”部隊……情報を得た者を消すための、CIT直属の処理班だ。逃げるぞ、ネイト!」