「薫習」 「綺麗な花畑があるらしいから見に行こう」 彼女からそう誘われ、僕たちは街から少し外れた丘陵にいた。 春の陽気に誘い出された僕らみたいに咲き出した白い花が、ずっと向こうの丘まで見える。花畑に沿うように蛇行しながら続く未舗装の小道を、僕らはゆっくりと歩き始める。その際、新しく知ったこと、最近気づいたことや不思議に思ったこと、そんなことを話していた。 不意に強い風が巻き上がる。その風に乗って花びらが舞い上がっていく。舞い上がった花びらは僕らの衣服に、髪に、肌に張り付く。 「空が青いのって、ずっと不思議に思ってたの」 彼女は続ける。 「でも、考えてみたら単純で、なんか拍子抜けした気分だった。この世界のことはもう解明され尽くされていて、わからないことなんてもうないんじゃないのかな」 「人はまだ、海について何も知らないよ。特に、深海については」 彼女の驚いた顔が視界の隅に見える。 「たしか、月とか火星、宇宙よりもまだ分かってない......はずだった気がする。ただ、知らないってことをテレビか何かで聞いただけだから、それ以外僕は何も知らない」 そう言うと彼女は、そっか......と呟きながら笑っていた。 「じゃあさ、今度水族館の深海コーナーでも見に行こうよ」 不思議と花の香りが薄まっていくのを感じ取っていた。いや、薄くなったわけではない。僕の鼻が匂いに慣れてしまった。ただ、それだけだ。薫 - Flower DanceVocal:初音ミクMusic / Words / Movie:ゆわね https://x.com/yuvvaneColor Design Assistant:しと https://x.com/yoru__410inst : https://piapro.jp/t/UD71 ■ボカコレ2026冬TOP100ランキング参加曲です。『The VOCALOID Collection(ボカコレ)』はボカロ文化をきっかけに生まれたインターネット等で活動するクリエイターやユーザー、企業などボカロに関わる全ての方が参加できるボカロ文化の祭典です。 ▼ボカコレ2026冬TOP100ランキング https://vocaloid-collection.jp/ranking/top100/