「うー」「あー」 ラボの片隅、うめき声で謎のやり取りをする。一つはれぷさん、もう一つは私だ。エイプリルフールの小ネタも終え、次の企画GW金水着に向けて動き出した我々は現在、完全に行き詰っていた。 れぷさんは新作水着のデザインを、私は楽曲の選定を。 なお、企画の犠牲者……もといモデルであるかのせなさんはご学友と小旅行中。 当人不在だからこそ今のうちに計画を進めなければいけないのだが。焦りばかりが空回り、二人そろってウンウン唸る始末である。「らちがあきません! 気分転換しましょう!」 れぷさんがおもむろに立ち上がる。これは彼女の日課、お散歩ルーティーンの流れか。いってらっしゃい。「教授も行くのです!」 引っ張られた。 外は春爛漫であった。特に駅前広場は見事なもので、桜が満開。 なんということか。ラボから徒歩数分の距離だというのに桜前線にまったく気付いていなかった。文字通りの視野狭窄である。「如何ですか。今日あたり満開と目星付けていたのですよ!」 いやあこれはすごい、教えてくれてありがとうれぷさん。 うふふと得意げ、次いでうりゃーうおーと桜吹雪の中を駆け回るれぷさん。その姿はまさしくドッグランで解き放たれた大型犬そのものだ。 うりゃー。 うおー。 うりゃー。 うおー。 走る走る。春の陽気と桜吹雪で珍しいくらいのハイテンション。微笑ましく眺めていたら、ドン詰まりの頭も冴えてきた気がする。 れぷさん、せっかくの景色だし、一つ軽く演舞撮りませんか。「それはいいですけど…突発すぎて撮影許可取ってませんし、機材はどうするんです?」 抜かりはない。こんなこともあろうかとドローン撮影機は携帯しているし、短時間演舞ならささっと撮って即撤収すればいいのだ。「ほほう、ゲリラ撮影ですか。教授もワルよのぅ」 れぷさんの目が輝く。きっと乗ってくれると信じてた。報酬は向こうのコンビニでお団子とかどうですか。せっかくなのでプチ花見としゃれこみましょう。