ナカナオリ・イッパツ_もりみずの裏技

ナカナオリ・イッパツ_もりみずの裏技

令和八年七月二十一日。拙者は、この日を生涯忘れることはあるまい。かつて越後の国まで共に遠征したダムの師――岐阜ダム子殿。あの日、越後の快活CLUBにて放ってしまった、拙者の軽率なる一言。それは小さな亀裂であったはずが、やがて導流壁の継ぎ目より浸透する一滴の水の如く、互いの距離を静かに広げていった。そして迎えた本日。治水を志す者にとって、一年で最も尊き節目――「森と湖に親しむ旬間」初日。……それすら失念していた。もはや洪水吐を全開にしようとも、この失態は流せぬ。堤体に刻まれたひび割れのように、拙者の胸へ深く残った。されど、不肖クニノカミ・ムサシ。たとえダム子殿が美濃を離れ、日高山脈の深奥へ赴こうと、四国山地の険しき堤へ巡ろうと、あるいは日本中のダムカードを蒐集する果てなき巡礼の途上にあろうとも――。拙者は必ず追い付き、その御前に膝をつく覚悟であった。そして岐阜駅。黄金の信長公を仰ぎ、長良川の風を受け、美濃の地を護る精霊にも等しき物の怪を前に、拙者は腹の底より叫んだ。「拙者は必ずや、ダム子殿に追いついて見せる!」と。――その時だった。まるで徳山の湖面に映る月へ導かれるように。まるで木曽三川の流れが一つへ収束するように。岐阜ダム子殿は、この岐阜駅へ降り立たれた。赦しであったのか。否。そのような言葉では浅い。それは、幾多の試練を経た堤体がなお揺るがぬように。幾千の雨を受け止める重力式コンクリートダムが微動だにせぬように。拙者とダム子殿を結ぶ縁は、以前にも増して強く、深く、決壊することなきものとなったのである。美濃の山河よ。長良の清流よ。そして全国のダムたちよ。願わくば、この日のことを永久に記憶していてほしい。令和八年七月二十一日。拙者は、生涯この日を忘れぬ。//////声の出演◎VOICEVOX岐阜ダム子:もち子(cv 明日葉よもぎ)冷やしたぬき:中国うさぎクニノカミ・ムサシ:ぞん子

http://www.nicovideo.jp/watch/sm46572670