2、次の日、私はバスに乗っていた。その日は夏のように空が晴れて日差しが強かった。窓の外を眺めながら、降りる駅を待っていた。バスが十字路の赤信号で止まった。窓の外をぼーっと見ていると、私から見て右側の歩道に、昨日見たもう一人の私がいた。髪型だけが違う。今日の私と同じ背格好。そいつは昨日はハーフアップだったが、今回はハーフツインテールだった。「あれは私だ。」と分かる。あいつが歩いている感覚が私にもあるからだ。私は、座席に座っている。バスの入り口より二つ後ろの左側、二人掛けの席。そこから外を眺めていた。歩行者用信号機が青になった。そいつは、私から見て右から左側へ横断歩道を渡っている。半分ほど渡り切ったあたりから体の向きを九十度変え、反対側の車道を逆走するように歩き始めた。反対車線には、誰もいない。バスの運転手は何の反応もしていないようだ。横断歩道の白い線を一歩一歩踏みしめるように歩いていたそいつは。そのまま十字路の印を踏み、反対車線の停止線を踏み、止まれの文字も、一歩一歩踏みしめるように歩いていた。楽しそうに。反対車線に赤い車が来た。そいつは気にもしていないのか、車に気づいていないのか、楽しそうに、止まれの文字を踏みつけるようにその場で飛び跳ねていた。私は、そいつが車に轢かれてそのまま消えてしまう様子を想像した。赤い車が止まれの文字の前で減速し止まった。クラクションが鳴らされる。もう一人の私は、好きなおもちゃを見つけた子供のように、楽しそうに飛び跳ねながら横断歩道を渡り切り、左の道に消えていった。歩行者用信号機が点滅していた。車道側の信号が青になった。バスが十字路を通り過ぎるとき、左側の道を見た。左側には道がなかった。そもそもここは二車線の一本道だった。【読み上げ】 VOICEVOX:夜語トバリ