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「砂礫」feat. vflower【残響レコードボカロ制作部】
「冷えますね、夜は」
その人はいつの間にか、そこにいた。
驚いて声も出せずにいると、その人はにっこりと笑った。
「ああ、いえ、驚かすつもりはありませんでした。本当ですよ、信じてください」
そう言って、その人は僕のことをなだめた。
ハスキーな声は女性のように思えるし、透き通った声は男性のようにも思えた。
顔に時折、刻まれる笑みでできるしわは年齢を感じさせるし、張りのある肌と艶のある髪は若々しさを感じさせた。
しかし、ぼくはそんなところに対して驚いたのではない。
ここは、〈砂漠〉なのだ。
何もかもを飲み込む砂の濁流。それも、夜になれば酷く狂暴な翼竜族や大型歩行獣などが現れるような砂漠だ。
乗り越えることは困難で、ときに咎人がこの砂漠の端に捨てられるようなことさえあるくらいだ。
それなのに、何故?
「ははは、すみません。言えないんですよ。私には〈名前が無い〉ので」
名前がない……。
そんな人物がいるのだろうか。僕はさらに疑わしくなって、いぶかしげな表情でその人のことを見る。
その人は、旅人にしては装飾の多い服を着ているが、それらが薄汚れているのを見るとここまで旅してきたというのも本当なのだろう。
「あなたは、どうしてここに?」
僕は、この場所にとある少女を探しに来たのだと言った。
罪も咎も犯したことのない、無垢な少女――僕の妹。
彼女を探すために、ここまで、幾度となく危険にさらされようとも旅を続けている。
そう説明した。
「それは、文字通り砂漠の中から一本の針を見つけるようなものなのではないでしょうか」
そうかもしれない。けれど探さないという選択はないのだ。
「なるほど。――では、この砂時計はあなたに相応しいものかと」
言って、その人はひとつの砂時計を出してきた。
砂は、紅い。錆のような色。濁った鉄のような色。
綺麗という印象は持たなかった。粒も大きく、さらさらとはしていない。けれど何故か目を離せなくなった。
「素敵でしょう。とある少女のものです」
とある、とは。
「少しお話をしなくてはなりませんかね――
――この場所に、数年前。もっと昔かもしれません。ある少女が贄として捧げられました。
その少女に名前を問うと『そんなものは要らない』とそっけなく言いました。
どうしてそんなことを言うの、と問うと『そんなことは知らない』と突っぱねるように言いました。
少女は私に心を開いてくれなかったのです。どうしてか、心を歪めてしまっていたのです。
どうしてそんなに歪んでいるの、と聞いたらば。
『ヒズンデイルのはアナタのほうでしょ?』
と、異国の訛りが混じった言葉を口にしました。それが最初で最後の〈意思の疎通〉でした。
その日から少女は徐々に壊れていきました。
何もさせないことが苦痛のようでした。
何もされないことが悲劇のようでした。
食べられないことが不思議なようでした。
呑まれないことが不可思議なようでした。
それも、そうでしょうね。何故なら――私が、こんな姿だから」
そこまで言うと、その人は大きく姿を変えた。
とかげのような尻尾が長く伸び、刺々しい四肢が生え、口が狼の口のように割れる。
見る間に、その人はこの砂漠の中で何よりも危険な翼竜に姿を変えた。
「――――――……!」
大きな、咆哮を上げる。
ああ、そうか。さっきの少女が誰か、なんて。うすうす感づいていた。
見覚えがあったはずだ。あの色は、確実に彼女の身体の中に流れていたはずじゃないか。
僕の、妹の中に。
翼竜は翼を羽撃かせ、僕を睨む。
剣を構えた。構えただけだった。次の瞬間、に、は、もう……
ごめんね、×××
翼竜の腹に呑まれるその瞬間。
最後に喧嘩をしたあの日の涙とは違う滴を、瞳から流した。
金森璋「砂礫」 https://twitter.com/akillernovels
offvocal→https://www.dropbox.com/sh/28s5sal1dd...
Direction みっどないと https://twitter.com/Midnight_Dir
Lyric 金森璋 https://twitter.com/akillernovels
Illustration 魚住山椒 https://twitter.com/since20191124
Movie Rerere
Produce 残響レコードボカロ制作部 https://twitter.com/zankyovocalo
「六弦」feat. vflower【残響レコードボカロ制作部】
過去も未来も、大嫌いだ。
見捨てたくせにと嘆かれたり、救ってくれと泣きわめいたり。どちらにせよ、僕はそんなものたちに興味は無い。
否――関心くらいは、あった。
かつて僕はミュージシャンになりたい子供であったし、未来には本当にミュージシャンになりたいと思っている。
けれど、過去にも未来にも嫌われているし、嫌っている。
現在を見ろ。現在を見てみろ。こんな、くだらない日常に、毎日に浸って。
朝起きて、学校に行って、帰ってきて、食事と睡眠をとって、の繰り返し。
こんなんじゃ、夢なんて叶いっこない。叶える努力ができていないんだから、当たり前だ。
たったひとつの夢さえも、小さな光さえも、掴めない。
それでも、僕は六弦を抱くことをやめなかった。
六弦だけが、僕を認めてくれるのだ。問いかければ、正しい音で返してくれるのだ。
それに合わせてデタラメに歌ってみると、それだけで心が軽くなるような気がした。
夢を叶えるなんて、後でいい。
今は、独りでこいつと一緒にいられればいい。
今日もまた、起きる。
ほんの少し先で僕を手招いてる未来を睨みつけ、ベッドから起き上がる。
朝の六時だ。僕は枕元のアナログ時計を見てそう思う。
朝食替わりにゼリー飲料を飲みながら、テレビのチャンネルを8に合わせる。
いつもなら朝の挨拶をするはずの番組がやっているはずだったのだが、夕方のニュースを放映していた。
どうやら、僕は昨晩、泥酔して眠ったせいか時計を二回りして20時間以上、昏睡していたらしい。明日が何もない、完全に予定が空白の日でよかった。
擦り減ら去られた過去たちが、僕をあざ笑っているような気がした。少なくとも、僕が眠り潰した過去20時間ほどは、この馬鹿め、と大笑いしているに違いない。
さて、どうしようかと考えた。
僕はマトモな食事を摂ることをなんとなく嫌がった。その代わり、冷蔵庫から出したのはラガーの小瓶だ。緑色をしていて、きんと冷えた中身が透けて見える。
金属製の栓抜きを使い、王冠を外す。こんなものにもコレクターがいるんだな、なんて手で弄びながら、僕はソファーの前のテーブルに置いた。
次に手に取ったのは、もちろんギターだ。しかし、いくら防音設備がそれなりのアパートだと言えども、さすがにこの時間からギターを弾いていては周りに迷惑になる。なので、高校生のときに使っていたおもちゃみたいなポータブルアンプを出してきて、ヘッドホンに繋げた。
懐かしいな、と、素直に思う。
斬、と刻めばどこの弦がどうなっているのか、すぐにわかる。調律をして、ひとつ、ふたつ、刻んで――僕が一番最初に、作った曲を歌ってみる。
荒々しいコード進行。世間にむかっ腹を立てた歌詞。粗暴な旋律。
ああ、若いあのときの心が思い出される。
明日も見えないような深夜に、歌声は部屋に響く。
昔もこうして、部屋で必死に譜面に文字や記号を書き込んでは消し、あの子に笑われたっけ。
過去も未来も嫌いな僕のことを、好きだった彼女。
僕の過去を、未来を、受け入れてひとつになろうと言ってくれた彼女。
懐かしいついでに、彼女と一回だけ交換したアドレスにメールを出してみる。もう取得することのできない、ドメインの化石のようなアドレスだ。
返事なんか返ってこないだろう。そうは思ったが、今の電話番号を併記して、メールを送信した。
今時、プライベートでメールなんて。
そう思いながらラガーを一口あおる。それを飲み込む前に、携帯電話が震えた。
え、と口から零れた。メールではない。まさかの、電話だ。
ラガーのものとは違う泡を喰って電話に出ると、それは例の彼女からのものだった。
変わらない声。変わらない口調。
見捨てたくせにと嘆かれたり、救ってくれと泣きわめいたり。あの日々と同じだ。未来と過去を信じていた、栄光の道を歩んでいた頃。
歌って、と彼女は言った。わかったよ、と僕は言った。
アンプが無いから音は小さいが、スピーカー受話にすれば電話口に届くだろう。
歌い終わった後、彼女はそっと言った。
あなたと会えてよかった。
僕はその意味がよくわからなかった。けれど、僕も同じ感想を持った。
ああ、そうか。
未来も過去も、嫌いでいいんじゃないか。
君という、小さな光があれば。
不甲斐ないこの僕、たった一人だけでは、こんなに小さな光でも見つからなかった。
「ねえ、好きだよ」
僕は言った。
返事は、要らない。
もう――結果は、知っているから。
原作 金森璋「六弦」
https://twitter.com/akillernovels
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Produce 残響レコードボカロ制作部 https://twitter.com/zankyovocalo
Direction みっどないと https://twitter.com/Midnight_Dir
Lyrics 金森璋 https://twitter.com/akillernovels
Illustration 前バ! https://twitter.com/maeba865
「形骸」feat. vflower【残響レコードボカロ制作部】
僕はどこにいるんだろう。
空っぽの空間の中で、そう思う。
実際には、空っぽなんかではない。駅前の雑踏の中を僕は歩いているし、頭の上では電子公告がうるさく鳴り響いている。
巨大な広告板では「はばたけ、未来」とかなんとか謳って、清涼飲料がPRされている。
僕の手にはその清涼飲料があった。なんだかそれを持っているのも馬鹿らしくなって、ぐいとあおって中身を空にして、駅構内のゴミ箱に叩き込んだ。
こんな、いつもの日常。『僕』の全てはこの中にあると言っていい。
だが、『僕』は『日常』の中にあるだろうか。例えば、僕が僕でなくなって、『存在X』なんかになったとする。そうしたら、『日常』ってやつは崩壊するのだろうか、それとも、そんなのお構いなしにありつづけるのだろうか。
駅のホームに立つと、電源の入っていないホームドアが虚しく並んでいた。まだ運用を始めていないようだ。もちろんだがドアは開けっ放しで、飛び込もうと思えば簡単に身を投げることができる。
通過電車が走り抜けるというアナウンスが流れ、僕たち人間は一歩、下がる。
その中で、たった一人だけ逆方向に動く人間がいた。
電車は容赦なく通り過ぎる。その人は『人』から『存在X』になり、生きることをやめる。
ひそひそとそれを非難する声や迷惑そうに苛立つ声があちこちから聞こえて、そのうち駅員の大声がそれらを切り裂く。
僕は、あーあ、とだけ呟いて。
何もしなかった。
教室に入ると、男子の集まりが雑誌を持ってぎゃあぎゃあと騒いでいた。
どうやら、めくったページに載っている娘の誰が好みなのか、という話で盛り上がっているらしい。
僕は遠巻きにそのページを見てみたが、どれもこれも同じ顔、同じような体型、同じような化粧――全く同一とは言えずとも、ほとんど同じと言って差し支えない。
その集まりに合流することなく、僕は自席に座る。
窓の外を見ると、何かの光が反射した。女子の持っているスマートフォンの画面のようだった。
反射している女子の姿をよく見ると、スマートフォンを指し、にやにやと笑っている。0と1で出来た電気信号はそんなに楽しいのだろうか。
そんな奴らにボーダーを引く。
僕はあんな奴らとは違うんだ。じっとりと横線は僕を見つめる。
間違った認知が、僕の中でまっすぐに立つ。
毎日、毎日、こんなことの繰り返しだ。何があっても、時計は進む。
どこでだって同じようなことが起こっているし、どこかでは起こっていないのだろう。
ああ、授業中だというのにうるさいなあ。
後ろを振り向くと、にやついた男子たちが僕を見ていた。
僕はすぐに右手を挙げて、講師に保健室に行きたいという旨を伝えた。またか、と言われたがすぐに許可された。
あんな奴らと同じ人間だと思われたくない。そう思いながら、保健室の鏡を覗く。
くたびれた制服に包まれた男子生徒がそこには立っていた。
「お前は、誰だ」
口に出してみるが、応えることはない。虚像なのだから当たり前だ。
「正解って、なんだろうな」
鏡から目を離して、自分の右手を見つめる。握って、開いて。また握る。
きちんと動作しているのだから、僕は『存在X』なんかではないのだろう。
つまり――僕は、僕だ。
僕は、ここにいるじゃないか。現実感を持って、事実を受け入れて、生きていけばいいじゃないか。
「なあ、僕はここにいるだろう?」
鏡に映った僕は、何も答えなかった。
原作 金森璋「形骸」
オケ→ https://www.dropbox.com/sh/28s5sal1dd...
Produce 残響レコードボカロ制作部 https://twitter.com/zankyovocalo
Director みっどないと https://twitter.com/Midnight_Dir
Lyric 金森璋 https://twitter.com/akillernovels
Illustration 魚住山椒 https://twitter.com/since20191124
Movie Rerere
【弾いてみた】 österreich- 穏やかな地獄【ギター】
ギターを弾いてみました。東京喰種:reのOPまたはEDもösterreich希望です。
【弾いてみた】 cinema staff - 僕たち【ギター】
僕たちの飯田さんパートのギターをコピーしました。三島さんのインスタの動画とライブ映像を参考にしたのですが、サビやCメロのコードは間違っているかもしれません。チューニングはレギュラーチューニングからさらに3,4弦のみを1音上げです。
【弾いてみた】 cinema staff - 小説家【ギター】
左にギター、右に原曲を振ってあります。バッキングとリード両方弾いてる箇所があります。
chouchou merged syrups. - 白昼夢は色彩の無い
from "clepsydra" (2014)
残響レコードお勧め邦楽バンド紹介(ボーカル有り限定)
・1曲1分程度のダイジェストにしています。
・あまり他で上がっていない曲を重視しています。
・ボーカルがいるバンド限定です。
・自分が知っている範囲です。
※初っ端から音が出ますので音量注意です
People In The Box
cinema staff
the cabs
ハイスイノナサ
chouchou marged syrups.(シュシュ マージド シロップス)
COgeNdshE(コグエンドシー)
the cabs"キェルツェの螺旋"
youtube公式より転載
https://www.youtube.com/watch?v=6Ey3jFf6vhA
二月の兵隊PV→sm24782409
一番はじめの出来事XFD→sm24558015
回帰する呼吸XFD→sm24557917
再生の風景XFD→sm24552512
the cabs"二月の兵隊"
youtube公式より転載
https://www.youtube.com/watch?v=6qsXxKawUos
キェルツェの螺旋PV→sm24782555
一番はじめの出来事XFD→sm24558015
回帰する呼吸XFD→sm24557917
再生の風景XFD→sm24552512
【the cabs】一番はじめの出来事【クロスフェード】
1st ミニアルバム「一番はじめの出来事」
1.チャールズ・ブロンソンのために
2.二月の兵隊
3.僕たちに明日はない
4.haiku about kdyla
5.nicol kills nicolas for nicola
二月の兵隊PV→sm24782409
キェルツェの螺旋PV→sm24782555
2nd ミニアルバム→sm24557917
1st フルアルバム→sm24552512
【the cabs】回帰する呼吸【クロスフェード】
2nd ミニアルバム「回帰する呼吸」
1.キェルツェの螺旋
2.camn aven
3.解毒される樹海
4.カッコーの巣の上で
5.skór
6.第八病棟
二月の兵隊PV→sm24782409
キェルツェの螺旋PV→sm24782555
1st ミニアルバム→sm24558015
1st フルアルバム→sm24552512
【the cabs】再生の風景【クロスフェード】
the cabsの1stフルアルバム「再生の風景」をクロスフェード音源にしました
1.Leland
2.花のように
3.anschuluss
4.わたしたちの失敗
5.地図
6.sarasa
7.ラズロ、笑って
8.purusha
9.Your eyes have all the answer
10.すべて叫んだ
二月の兵隊PV→sm24782409
キェルツェの螺旋PV→sm24782555
1st ミニアルバム→sm24558015
2nd ミニアルバム→sm24557917
great escape を演奏してみた 【cinema staff】
cinema staffのgreat escape をギターで弾きました。
辻さんパートのはずです。
新しい演奏 sm24219738
マイリスト mylist/19366347
ハイスイノナサ × 大西景太 "logos" Live
ハイスイノナサ
http://www.haisuinonasa.com/
大西景太 official site
http://www.onishikeita.com
ワンマンライブ「reflection」
08/30(金)渋谷WWW
open/start:18:45/19:30
e+
ローソンチケット[Lコード:76077]
2013年7月13日 宮原ヒソミネ
アートディレクション:大西景太
Art direction / VJ / Editing Keita Onishi
撮影:増田圭亮、中村優希、神谷まどか
Shooting:Keisuke Masuda,Tissueboy,Madoka Kamiya
優しくしないで を弾いてみた。【cinema staff】
cinema staffの優しくしないで をギターで弾きました。
辻さんパートのはずです。
再録演奏 sm24219738
マイリスト mylist/19366347
the cabs - anschluss
アンシュルス(独:Anschluß)とは、単語としては「接続・合併」を意味する。日本では、1938年3月13日のドイツによるオーストリア合邦(Der Anschluß Österreichs an das Deutsche Reich)の意味で使われ、独墺合邦、オーストリア併合等と訳される。
1/23(wed)release 1st full album「再生の風景」 "anschluss"
mudy on the 昨晩 - PANIC ATTACK
6/06(wed)release
3rd mini album「Zyacalanda」
ハイスイノナサ - 地下鉄の動態 【PV】
2012年5月23日発売「動物の身体」より 投稿動画 mylist/30860585
te' - 音の中の『痙攣的』な美は、観念を超え肉体に訪れる野生の戦慄。PV
2012年2月22日発売 投稿動画 mylist/30860585