INF交渉 中曽根氏の提案 米大統領の戦略に影響か 外交文書

INF交渉 中曽根氏の提案 米大統領の戦略に影響か 外交文書

2018年12月19日 10時31分東西冷戦時代のアメリカとソビエトのINF=中距離核ミサイル全廃条約の交渉をめぐって、当時の中曽根総理大臣がレーガン大統領の戦略に影響を与えたことをうかがわせる提案をしていたことが、19日公開された外交文書で明らかになりました。外務省は、東西冷戦時代に、当時の中曽根総理大臣がアメリカのレーガン大統領と交わした書簡を含む、9000ページ余りの外交文書を公開しました。このうち、INF=中距離核ミサイル全廃条約が調印される前年、1986年に中曽根氏がレーガン大統領にあてた書簡では「日米関係は核の傘による心理的安心感の上に成り立っており、アジアにおける核戦力のバランスの問題が、公にほとんど議論されていないことが漠然とした信頼感を与えている」と指摘しています。一方で、ソビエトとの交渉について、レーガン大統領からヨーロッパとアジアの2つに分けて進める方針を伝えられていた中曽根氏は、方針どおり行われれば、アジアの核戦力バランスの議論につながるとみて、「核抑止力の信頼性を日本国民に納得させなければならない極めて困難な政治的課題に直面せざるをえない」と懸念を伝えます。そのうえで、ミサイルの配備場所をソビエト中央部の3か所に限定する考え方を示し、「2つの区分けをもって呼ばない方式である」と提案し、方針の転換を求めています。のちに、レーガン大統領は中曽根氏への書簡で「考えをまとめるうえで有益な材料になった」と謝意を伝えていて、レーガン大統領の交渉戦略に影響を与えていたことがうかがえます。中曽根氏は、6年前にNHKのインタビューで、「ソビエトという国は何をするかわからないので、アメリカに助言をして、尻をひっぱたいてやった」と当時を振り返っています。日本外交史が専門の北海道大学公共政策大学院の瀬川高央研究員は、「第三国の立場で超大国どうしの交渉に切り込んで、戦略的な交渉スタイルを示したもので、歴史的に見ても重要な価値のあるやり取りではないか」と分析しています。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm34341195