私のジャマイカ滞在記⑩ / 44A

私のジャマイカ滞在記⑩ /  44A

ジャマイカの不良たちかつて、私はリッキーベンツたちと交流していたおかげで、様々なレゲエの関係者から声をかけられるようになった。今思い返すと、私は当時のドキュメンタリーを自らのカメラで撮影するという野心を持っていた。いつしか、そのカメラは私の日常の一部となり、あらゆる出来事を記録していた。ストーンラブスタジオでのパワーマンやジョーリコショット、そして当時名前の知らない売り出し中のアーティストたちの姿も、私のレンズを通して捉えられていた。何かとインタビューし、録画していたものだ。その後、彼らと再会したのは、私が一人で訪れた野外ダンスでのことだった。公民館の庭に万国旗が飾られた、ある種異国情緒あふれる会場での出来事だ。まばらな客たちが微かにざわめき始め、私はふとした拍子に誰かに突き飛ばされ、よろめいてしまった。後ろ姿を見ると、先の出会いで知った若いアーティストの姿があり、さらに彼を取り巻く20人ほどの集団が、風を切るように会場前方へと歩を進めていた。そして、その先陣を切るのは、日本でも話題になることの多いダンスホールレゲエのイケイケアーティスト、ヴァイブスカーテルだった。彼は手にウイスキーやブランデーを持ち、それを口に含んだ後、突如ステージに上がり、自然とマイクを手渡されてパフォーマンスを始めた。客たちは興奮し、様々な歓声を上げた。私は鳥肌が立ち、あれこそが飛ぶ鳥を落とす勢いのアーティスト、ヴァイブスカーテルだと感動しながらも、少し怯えを感じた。そして、これは日本に帰ってから知ったことだが、私を突き飛ばした犯人はポップコーンという名の、後にジャマイカだけでなく世界でも人気を博することになるアーティストだったのだ。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm42965002