私のジャマイカ滞在記 ⑳ / 44A

私のジャマイカ滞在記 ⑳  /  44A

空港での偶然の出会い。名は知らずとも、その青年の存在は僕の記憶に刻まれた。ジャマイカの光満ちる日々、僕は名も無き人々との断片的な交流に心を委ねていた。彼らは実際には名を持つ人々だが、僕の記憶の中では、ただの風景の一部として残っている。ある青年は空港で何かを言っていた。名前は覚えていないが、その一瞬の出会いが心に残っている。その他、お金を渋って返さなかった男、北海道出身の女性、日本で水商売をしているのかもしれないと耳にした話。彼らはすべて、ジャマイカでのほんの一コマだ。ほとんどの滞在を日本人が経営する宿で過ごしながらも、日中はジャマイカ人と共に時間を過ごした。帰れば、いつも誰かがいて挨拶を交わし、時にはラップバトルのようなことに興じたこともあった。人それぞれの事情があり、短い滞在の人もいれば、長くいる人もいた。ジミー・クリフが歌う「Many Rivers to Cross」のように、僕たちの出会いも川の流れに任せた偶然の産物だ。ボブ・マーリーのカレンダーをくれた青年もいたし、帰りのバスで僕に電話番号を窓ガラスに書いたサーファーの兄ちゃんもいた。そしてゲトーでの生活を夢見るドレッドヘアの男性、四国のラジオ番組に出る兄ちゃんと共に撮った写真がどこにあるのか、今となっては思い出すだけだ。ラブリッシュのロビーで、パソコンに向かう僕のことを「パソコン小僧」と呼んだ女性もいた。僕が作業を終えると、彼女は既に眠っていて、僕は毛布を掛けてやりドミトリーに戻った。それも今は遠い思い出だ。僕は何度も出会いと別れを繰り返してきた。それらの人々には名前があったが、今の僕にはもう、何年も前の名もなき思い出の中の人々に過ぎない。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm42981502