武漢の実生活を描いたドキュメンタリー 竹内亮監督が語る

武漢の実生活を描いたドキュメンタリー 竹内亮監督が語る

武漢の一般市民の実生活を記録した「久しぶり、武漢(原題:好久不见,武汉)」。日本人のドキュメンタリー監督、竹内亮氏が手がけたこの作品が今、中日両国で人気を集めている。 南京で暮らして7年になる竹内亮監督は、中国で新型コロナウイルスによる影響が最も深刻だった武漢のリアルな様子を取り上げたいと考えた。 <竹内亮監督> 「中国の感染症対策は適切かつ厳格に実施されており、非常に素晴らしいと思う。政府の取り組みだけではない、すごいと思ったのは一般市民による対策だった。みんなが団結し協力して向き合っている」 竹内亮監督が撮影で中国を始めて訪れた時、中日両国の人々の相互の理解不足とそれぞれの国に関する情報が遅れていることに気づいたという。そしてその後、ドキュメンタリーを通じて両国の人々をつなぐことを目指した。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で、相互理解はより困難になったという。 <竹内亮監督> 「日本人は武漢について、灰色の街、人影が消えた、ウイルス、医師という4つのイメージしか思い浮かべない。武漢に対する認識は、2月の段階に留まったものだ。だから、私はみんなに、今のリアルの武漢を見せ、偏見を解消できないかと思った。撮影のターゲットを外国人が見たい人物像に絞った」 5月中旬、竹内監督は武漢でのロケに向けて本格的に動き始めた。 まず試みたのは出演者の募集だった。中国の人気SNS「ウェイボー(微博)」の自身の公式アカウントには、219万人のフォロワーがいる。ウェイボーで呼びかけたところ、すぐにたくさんの連絡が入った。100件を過ぎたところで選択に取りかかり、最終的に10組の武漢市民に出演を依頼した。料理店の経営者や看護師、建設業の従業員、中学校の教師、カップル、そして愛する人を亡くした人々だった。 撮影中、取材対象の悲しみや涙と対峙する事になった竹内監督は、慰めるかわりに沈黙を貫き、レンズを通してそれぞれの感情を淡々と伝えようとした。 取材対象の1人に、若く活発でダンス好きの看護師がいる。ウイルスによって命が奪われる瞬間をその目で何度も見届けたはずの彼女は、監督の質問に対し、カメラの前でただただ涙ぐみ「重い話題だね」とつぶやいた。 <竹内亮監督> 「感染症と戦った経験について、彼女だけが積極的に話そうとはしなかった。彼女が突然泣き崩れた瞬間、当時の武漢がどれほどの苦難に見舞われていたかが計り知れた」 竹内監督のドキュメンタリーは、脚本や準備周到な撮影に頼ることはない。武漢の普通の人々の姿を描き出すために、武漢市民の案内で病院や名所、ショッピングモールや回復した患者の家、夜の屋台街などをめぐった。今の暮らしや未来への希望といった話を交わしながら彼らの目線に立って見つめ続け、その心の奥に迫った。 <竹内亮監督> 「日本のドキュメンタリーは真実を追求する。私は武漢市民の実生活を隅々まで見せたいと思った。この作品を通して、なにか特定の結論を導き出そうとは全く考えてはなかった。武漢のリアルな生活を紹介できればそれでいい」 作品は1時間1分の長編に仕上がった。6月26日の夜にアップされ、再生回数はわずか4日間でYouTubeでの約21万回も含めて計3000万回にも上った。その数は今も更新され続けている。

http://www.nicovideo.jp/watch/so37181087