鳥集徹氏の著書『本当はいらない医療 「患者」が作られるカラクリ』(宝島社新書)は、現代の日本医療には「過剰医療」が蔓延しており、健康な人々が医療・製薬業界のビジネスのために人為的に「患者」に仕立て上げられている実態を告発した医療ノンフィクションです。1. 基準値の引き下げによる「患者」の量産著者が最も強く警鐘を鳴らしているのが、高血圧やコレステロール、糖尿病などの「生活習慣病」における診断基準値のからくりです。年々、学会などによってこれらの基準値が厳しく(低く)設定されることで、それまで健康だった人がある日突然「病気」や「予備軍」と診断されるようになります。これにより、生涯にわたって降圧剤やコレステロール低下薬などを飲み続ける「優良な顧客(患者)」が人為的に量産されていると指摘しています。2. 健康診断・がん検診の「罠」と過剰診断日本では「早期発見・早期治療」が絶対的な善とされていますが、著者は健康診断や人間ドックの普及が過剰な不安を煽っていると論じています。最新の検査機器は微小な異常まで見つけ出しますが、中には一生放置しても命に関わらない「おとなしいがん」も多く含まれています(過剰診断)。見つけなくてもよかった異常に対して、不要な手術や強い副作用のある抗がん剤治療を行い、結果的に患者の生活の質(QOL)や寿命を縮めてしまうケースが少なくないと指摘しています。3. 精神医療の拡大と薬漬け問題身体的な病気だけでなく、精神医療の分野でも「患者の作製」が行われていると言及しています。4. 利益を生み出す「医産複合体」の闇なぜこうした過剰医療がなくならないのか。その背景には、製薬会社、医療機器メーカー、学会、そして医師らが結びついた「医産複合体」による利益追求があると著者は分析しています。病気の診断基準を作成する学会の有力医師に対して、製薬会社から多額の資金(寄付金や講演料)が提供されている利益相反の実態を暴き、医療ガイドラインが本当に患者のためのものか疑義を呈しています。【本書の結論とメッセージ】著者は、現代の高度な医療すべてを否定しているわけではありません。本当に必要な医療(救急救命や重症感染症など)がある一方で、「予防」や「数値の改善」を目的とした不要な医療ビジネスが膨張していることに注意を促しています。「医者が言うから」「検査で数値が高かったから」と盲目的に医療に頼り薬を飲むのではなく、その医療が本当に自分の人生や体にとって必要なのかを疑い、自分自身の感覚を信じて「医療と適度な距離を置くこと」の重要性を説いた一冊です。