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<福島報告>9割が帰還困難区域となった大熊町の苦悩
東京電力福島第一原発がある福島県大熊町は昨年12月の警戒区域の再編により、町は3つの区域に見直された。住民の居住地域の9割以上が、年間積算線量50ミリシーベルトを超え、5年間は戻ることが困難とされる「帰還困難区域」に指定された。
現在、大熊町民は約8,200人が県内で、約3,100人が県外で避難生活を送っている。昨年9月実施の第1回住民意向調査では、「戻りたい」が11%、「判断がつかない」41.9%、「戻らない」45.6%という意向だった。今年1月実施の第2回住民意向調査(速報版)では、「戻りたい」は11%、「判断がつかない」43.5%、「戻らない」42.3%と、「判断がつかない」が微増、「戻らない」が微減したが、やはり4割以上が戻らないことをすでに決めていることが分かった。「戻らない」「判断がつかない」の主な理由は、多い順に「(自宅に)カビが多く発生している」53.4%、「(自宅に)動物等が侵入」45.5%、「地震による破損」45.4%、「屋内放射線量が高い」39.7%、「雨漏り」37.2%など(複数回答)となっている。
今、大熊町の住民は、原発事故と長期避難に伴う土地や建物、家具や家財の損害に対する財物賠償と、精神的損害賠償を東電に求めている。住民側には東電の回答が生活再建につながるような賠償額ではないという不満がある。紛争和解仲介機関である損害賠償紛争審査会(能見善久会長)は賠償の対象や内容、基準の最終指針について今月中にも決定する予定だが、それ前に、6月22日、福島市内で県内の被災自治体首長からの意見聴取を実施した。
このなかで大熊町の渡辺利綱町長は、避難の長期化を考慮した賠償の必要性、帰還困難区域の除染の目途が立たないことによる精神的苦痛(いつ帰れるのか、帰れないのかといった不安)への賠償、盗難事件続発問題、一時帰宅しても家財等が放射能汚染のため持ち出せない問題などを訴えた。
さらに意見聴取会に出席したほとんどの首長が訴えたのが、民法上で3年とされる損害賠償請求権の時効の延長だ。今年5月29日には原子力賠償特例法が成立、この中で国の「原子力損害賠償紛争解決センター」に和解の仲介(ADR=裁判外紛争手続き)を申し出ている場合に関しては、3年の時効にかかわらず提訴できることが認められた。しかし、複雑で難しく時間がかかる賠償請求手続きの前に、高齢者や障がい者、あるいは外国人などで日本語が読めない人、震災後に離婚した人など、被災後の生活がより困難でより賠償が必要な人ほど賠償を受けられないまま、時効を迎えてしまう危険性もある。
福島第一原発直近の自治体として、深刻な放射能汚染にさらされた大熊町の現状と課題について、現地取材映像を交えながら、医療ジャーナリストの藍原寛子氏が報告する。
<福島報告>ふくしま集団疎開裁判・「由々しき事態」だが「避難を求める権利なし」の不可解な判決
福島県郡山市の児童、生徒が市に対して裁判所を通じて集団疎開を求めていた問題で、仙台高裁は4月24日、「現在、ただちに不可逆的な悪影響を及ぼす恐れがあるとは認めがたい」などとして、訴えを却下する決定を出した。
これは郡山市の10人小中学生が年1ミリシーベルトを超える地域では教育活動を行わず、年1ミリシーベルト以下での教育活動(疎開)を求めていた仮処分申請に対する即時抗告。2011年6月、郡山市の14人の小中学生が仮処分申請を行ったが、同12月、福島地裁郡山支部がこれを却下したため、申立人側が即時抗告していた。
抗告人の弁護人の柳原敏夫弁護士は同日、都内で記者会見し、「裁判所は決定の前半で『児童生徒の被ばくの危険、晩発性健康被害とともに、集団疎開を被ばく回避として考慮すべき』としたが、その後に『避難を求める権利もなく、郡山市は避難させる義務もない』としている。ロジックが分からず、理解できる内容ではない」と却下を批判。今後、起訴命令申立書により民事訴訟を起こすことも可能だが、その点については今後協議して決めたいとしている。
債務者となる郡山市は「本市の主張が受け入れられたと考えている。現在、郡山市は避難区域になっておらず、避難区域から避難してきた子どもたちが郡山市内の学校で学んでおり、妥当な決定」などとしている。
決定では、 低線量の放射線による生命、身体、健康に対する被害の発生が危惧され、由々しい事態の進行が懸念されるなど、郡山の子どもたちが置かれている窮状に理解を示していた。しかし、学校施設での教育活動の継続により直ちに生命身体の安全を侵害する危険は認められないとして、児童・生徒側の疎開の権利も、市側の疎開の責任も認めなかった。
今回の仙台高裁の決定について医療ジャーナリストの藍原寛子が報告する。
<福島報告>新たに2人の子どもに甲状腺がん見つかる・県民の健康情報は誰のものなのか
東電福島第1原発事故の影響を調べる福島県民健康管理調査検討会が2月13日、福島市で開かれ、18歳以下の子どもを対象に平成23年度に実施した甲状腺検査の第2次検査の結果が発表された。それによると、甲状腺がんと診断された子どもが新たに2人、甲状腺がんの疑いの子どもが7人あることがわかった。これまでの発表と合わせると、がんが3人、疑いが7人、合計10人の子どもの甲状腺に重大な異常が見つかったことになる。
子どもの甲状腺がんは、100万人に1人ないしは2人という極めてまれな病気だが、検査を受けた子どもの人数は38,114人(おもに原発に近い地域の居住者)。3人ががんと診断されたことは約12,000人に1人とかなり高い割合に上った。
この割合について、検討会座長の山下俊一福島県立医大副学長、委員の鈴木眞一・同大教授らは、会議や記者会見の中で、原発事故との因果関係について否定的な見解を示した。その理由として?甲状腺がんの進行は遅く、少なくても5~7年後であり、いま発見された腫瘍は原発事故前からできていた可能性がある?疑いを含めた10人に地域的な偏りがない(ある市町村に集中しているわけではない)?検査機器の精度が以前より高くなったため、従来なら後年に発見されていたがんが前倒しで(=早期に)発見された―などを挙げた。
しかし、10人が住んでいた地域の福島第一原発からの距離や推定被曝量などの情報は、「プライバシーの保護」(鈴木教授)を理由に開示されなかった。このため、両教授の見解に対する客観的な検証は事実上進んでいない。
ドイツでは2008年、稼動中の原発周辺で小児がんが増加しているという結果をまとめたKiKK(キック)スタディが報告され、政府もその結果を認めたことにより、社会的に脱原発の機運が盛り上がった背景がある。仮に今回の原発事故と10人の診断結果との間に因果関係はないとするなら、福島県民は子どもたちが原発からの恒常的な放射線等の影響を受ける環境にあったのかどうかを知る権利はあると考えられる。
子どもの甲状腺がんと県民健康管理調査の問題について、医療ジャーナリストの藍原寛子氏と神保哲生が議論した。
<福島報告>IAEA国際会議に福島の住民が反発
総選挙まっただ中の12月15日、日本政府とIAEA(国際原子力機関)による国際会議「原子力安全に関する福島閣僚会議」が原発事故の被災地である福島県郡山市で開催された。IAEA加盟120か国が参加した。福島県や福島県立医大、外務省が除染、放射線モニタリング、健康の3分野でIAEAの協力を受けることで合意。今後IAEAは福島県内に拠点を置いて、支援活動を展開する。
この国際会議は2011年5月、当時の菅直人首相が提唱。今年8月に佐藤雄平福島県知事がウィーンのIAEA本部を訪れ、天野之弥事務局長に福島への支援を要請して開催が決まった。表向きは原発震災に遭った福島県民への支援だが、実際には別の側面もあった。
会議に先立って、来日した各国の出席者は福島第一原発を視察したが、天野事務局長が「防護服は着ずに、マスクと手袋だけで回れるようになった」と話したことが報じられたり、日本産食品の試食会が開かれるなど、海外の出席者に安全性をアピールする内容も盛り込まれた。
福島県・福島県立医大・外務省とIAEAがそれぞれ取り交わした覚書の内容は、県民健康管理調査に関して、県民の個人情報保護やインフォームド・コンセント(説明と同意)の確認など不明確な点が多い。本来は県民の健康のために分析されるデータについて、どこまで第三者がチェックできるのか具体的な説明は行われていない。
もう一つの課題は、脱原発を決めた福島県が、「原子力の平和利用」を掲げるIAEAの協力を仰ぐことが、本当に県民の意思に沿っているのか議論の余地がある。原発に関する立場が異なる組織による協力関係は、「利益相反」の可能性もあるからだ。
会議には、今後、原発事業を導入したいアジアの新興国の代表、各国の電力会社の代表なども参加、新興国で電力不足が顕著になるなかで、「福島の安全が確認できれば、できるだけ早く自国に原発施設を建設したい」と考える出席者もいて、関係者による情報交換やロビー活動が盛んに行われた。
会場の外では、住民を中心として反原発を訴える人々による抗議活動が展開された。IAEAの活動をウォッチするグループ「フクシマ・アクション・プロジェクト」や、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウの代表者らは、「福島原発事故はまだ終わっていない。事故を過小評価しないでほしい」「福島県内の原発を全て廃炉にするよう日本政府に働き掛けてほしい」「子どもや若者の被害の最小化に努めてほしい」などとする要請書をIAEA報道官に手渡した。
会議の映像を交えながら、神保哲生とジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。
<福島報告>誰のための放射線測定なのか・モニタリングポストの「誤表示」問題とその対応
福島県と近隣県に政府が設置した放射線の測定器で実際よりも低い数値が表示されていることがわかり、11月下旬から改修工事に取りかかった。
放射線測定のためのモニタリングポストは今年4月から、文科省が福島県を中心に675台設置した。無人で、電源は太陽光発電。測定数値は同省のホームページで公表する“監視システム”として公開されていた。ところが同省は11月7日、全ての測定器で1割ほど低い値を示していたとして、改修工事を行うことを発表した。原因は測定器の側に設置されたバッテリーの鉛が放射線を遮っていたとした。
改修工事は11月26日、福島県広野町の田の神地区集会場に設置された可搬型モニタリングポストで始められた。来年2月末までに順次行われ、改修費は約1億5千万円。放射線の検知器とバッテリーを離れたところに取り付け直すという。
設置から半年。測定値が低いことに疑問を持った地元自治体や住民から多数問い合わせが同省に入っていた。南相馬市やいわき市など地元自治体からも再検査や再調整の要請が出ていたが、同省の対応は遅れた。さらに、各ポスト毎にどのぐらい誤差があったのか、数値は公表せず、「ホームページ上で改修前後の数値を比較すればその差が分かる」と不親切な態度をとっており、4月にさかのぼって数値を修正する予定もないという。
国際環境NGOグリーンピース・ジャパンや琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬名誉教授らを中心とする市民グループの内部被曝問題研究会の測定チームは、文科省の発表前から、周辺の部品が放射線を遮ることやモニタリングポスト周辺の除染を行っていることなどにより、数値が過小に表示されていると指摘していた。賠償額を低く抑え、福島県外避難者を増やさないこと、原発を継続したいとの意図があったのではないかと不信感を募らせている。
取材したジャーナリストの藍原寛子氏は「モニタリングポストは車も人もほとんど通らない場所にが設置され、測定データの表示パネルも見えにくい方向に付いている。誰のためのモニタリングポストなのか。誤表示を認めず改修が遅れたことも問題。そもそもこれらのモニタリングポストは、現地の住民のためではなく、霞が関や永田町のためのものではないのか」と断ずる。
原発事故直後にSPEEDIのデータを公表しなかったことに続く文科省の失態について、福島をベースに活動するジャーナリストの藍原寛子氏が報告する。
<福島報告>福島でコメの全袋検査始まる
8月下旬に福島県二本松市で早場米「五百川」の収穫が始まるのに合わせて、自家用、贈答用、くず米を含む収穫された全てのコメのセシウムを検査する「全袋検査」が、福島県内で行われている。
昨年の抽出調査で1キロ当たり500ベクレルを超えるセシウムが検出された地域のコメに対しては出荷停止措置がとられ、今年の作付は行われなかった。また100ベクレルから500ベクレルのセシウムが検出された地域では出荷制限が行われ、今年は水田の除染や市町村による計画的な管理と生産量の把握などが行われたうえで、作付されていた…。
福島で始まったコメの全袋検査と、実際に市場で販売されている様子、生産者と消費者の声、食の安全、安心について、神保哲生と医療ジャーナリストの藍原寛子がレポートする。
<福島報告>福島っ子の保養の夏 ハンセン病療養所が福島の家族を招待
長かった夏休みも終わり、新学期が始まった。この夏休みの期間中、原発震災の影響で好きなだけ外遊びができない福島の子どもたちに、のびのびと過ごす時間を提供しようと、市民グループやボランティア団体などによる市民レベルの保養受け入れ事業が国内外で行われた。
北海道では、市民グループや学習塾により、中学生を対象にした高校受験対策と保養をセットにした「学習支援付き保養」を実施。広島では、8月6日の原爆の日に合わせた社会学習を取り入れた企画や、海外ではロシア側の支援によるサハリン滞在など、各地の草の根ネットワークを基盤に、福島の子どもを支える活動が広がった。
香川県高松市の大島にある国立ハンセン病療養所「大島青松園」では、福島の3家族・10人を6日間受け入れる保養事業が行われた…。
原発事故による放射性物質の被災者と、国策により人権を奪われたハンセン病回復者を結んだ今年の夏休みの保養事業。保養受け入れに当たった回復者、僧侶、参加した福島の家族や子どもたちの声や表情を医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートした。
<福島報告>放射性廃棄物の処理に戸惑う地元自治体の現状
福島県内では原発事故で飛散した放射性物質の除染作業に伴い発生する廃棄物を一時保管するための仮置き場問題が深刻になっている。市町村は、除染に伴って出された廃棄物を搬出・保管する「中間貯蔵施設」が決まっていないため、「苦肉の策」として、市内の行政区の単位ごとに一時保管する「仮置き場」を、住民の話し合いなどを経て決定、暫定的に保管する方針を打ち出しているが、これがなかなか決まらず、とくに福島市や郡山市など放射線量が高い都市部では、除染作業はモデル地区等を除いて、あまり進んでいないのが実情だ。
例えば、福島市大波地区は、市内でも特に放射線量が高い場所の一つで、市は業者やボランティア、住民らによる住宅、公共施設、道路などの除染を行ってきたが、昨年10月から、排出された廃棄物の仮置き場を地域内に設置した。
仮置き場にはL字型のコンクリート側壁を建築し、底部と側面を遮水シートで覆い、除染で出た放射性物質を含んだ土砂や落ち葉などを入れたフレキシブルコンテナバッグを搬入する。地区内418世帯から出た廃棄物はバッグ約8500個で、今後は約2倍の16000個まで増える予定。 ところが、福島市は現在、仮置き場の場所を公表していない…。
除染に伴う廃棄物処分場問題について、神保哲生と医療ジャーナリストの藍原寛子氏が議論する。
<福島報告>郡山の屋外活動制限解除に保護者や教員から異論
原発事故による放射性物質の影響を受けている福島県郡山市は、今年3月まで学校における屋外活動制限時間を3時間に制限する、いわゆる「3時間ルール」を独自に適用してきたが、新年度の4月からこの「3時間ルール」を解除したところ、教員や保護者の間から異論が噴き出している。
「3時間ルール」は昨年5月に始まった。その背景には、震災直後、毎時1マイクロシーベルト以上の放射線量が計測された。学校の屋外活動に関して「実施しても問題ない」という専門家の意見があった一方で、文科省は日常生活における年間上限20ミリシーベルト基準を打ち出した。現場の教師や保護者からは「20ミリシーベルトは幼児、小中高校生ら子どもには高すぎる」「本当に安全か分からない」という問題が指摘された。そこで郡山市は学校の屋内活動を全面禁止はしないものの、市内全学校での活動時間を一律に制限するという「妥協案」もしくは「打開策」として、「3時間ルール」を打ち出した…。
医療ジャーナリストの藍原寛子氏が、郡山の屋外活動制限解除に対する保護者や教員の反応を報告する。
<福島報告>エネルギーの地産地消を目指す「市民共同発電所」の可能性
原発事故によって多大な被害を受けた福島県で、エネルギーの自給自足や地産地消を模索する新たな動きが始まっている。
今年7月に電力固定価格買取制度が始まるのを念頭に、様々な企業組合が立ち上がる中、最も早く活動を開始したのが福島県伊達市の「伊達太陽光発電所企業組合」だ。この企業組合は地元を流れる布川(ぬのかわ)での小水力発電を検討中で、既にコンサル会社に可能性調査を委託している。調査結果は「実現可能だが、採算面で課題がある」と厳しいものだったが、組合の森茂雄理事長は「原発の恩恵を受けてきた我々世代が、後世に安全・安心の地域を引き渡す責任がある。そのためにエネルギーの地産地消による地域の活性化が大切だ」と、採算を度外視してでも実現に意欲を見せる…。
現地の様子を交えて、医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。
<福島報告>チェルノブイリ事故から26年・今も活動を続けるフランス市民放射能測定所
東京電力福島第一原発事故による放射性物質の拡散は、食や健康に対する不安を全国的に広げ、福島県をはじめ全国各地に市民放射能測定所が開設された。こうした放射性物質を可視化する動きは、1986年ソ連のチェルノブイリ原発事故でもヨーロッパ各国に広がった。原発や核関連施設を多数持つフランスも同様で、チェルノブイリ事故から数か月のうちに、市民放射能測定所が市民の力で各地にオープンし、活動を始めた。
当時から活動を続けるNGOのうち、福島原発の事故直後に来日して、福島県民の支援活動を行った2団体、フランス南東部ヴァランスにある「クリラッド」(CRIIRAD)と西部ノルマンディ地方カンにある「アクロ」(ACRO)を、現地を訪れた医療ジャーナリストの藍原寛子氏が取材した…。
3月11日で震災から丸1年を迎えたが、被災地の復興はまだまだ進まず、福島県内外の原発事故の被災者に対しては、長期的に継続した支援が望まれる。フランスのこれら2団体の活動から、今後の支援についての工夫や課題が見えてくる。
<福島報告>フランスで高田賢三氏らが3・11追悼式
震災から1年を迎えた3月11日、フランス・パリ中心部のトロカデロ地区、エッフェル塔が見えるシャイヨー宮広場で、日本人を中心とした追悼式「東日本大震災から1年、犠牲者への方々への追悼と復興への祈りと連帯を伝える集い」が開かれた。在パリ日本人有志を代表してデザイナーの高田賢三さんが呼び掛け人となり、大震災が起きた現地時間午前6時46分(日本時間で午後2時46分)に合わせて開催。1500人以上が会場を訪れて祈りをささげた。高田さんは「日本人の支え合う姿に勇気づけられた」などと語った。
また3月11日を前にした7日、ベルギー・ブリュッセルのEU議会で、第4位の会派「緑の党・欧州自由連合」による福島原発事故から1年の会議が開かれ、福島県の前知事佐藤栄佐久氏、ホットスポットになった飯舘村前田地区の酪農家長谷川健一氏ら福島県の人々が、「二度と、福島の人が体験したことを繰り返してほしくない」と、原発事故による県民の生活の現状と課題、再発防止を訴えた。今年1月に横浜で開催された「脱原発世界会議」に同会派共同代表のレベッカ・ハームズ氏が参加し、福島の現状を視察して地元の人々から現状を聞いたことが、ブリュッセルでの会議開催のきっかけになった…。
現地取材をした医療ジャーナリストの藍原寛子氏が報告する。
<福島報告>市民グループによる「サテライト保育」広がる
依然として高い放射線量が計測される福島県内の各地域では、子供たちへの放射線の影響を最小限に抑える目的で、市民グループやNPOが、地域を離れて子どもたちを保育したり、レクリエーションを行う「サテライト保育」「サテライト保養」などの活動が始まっている。
避難や保養を支援している市民グループの担当者によると、「現時点で避難できる家庭はすでに避難してしまった。今残っているのは、避難したくてもできない家庭」だという。親の仕事や子どもの学校、高齢の家族の介護などで「本当は避難したいけれども、できない」という家庭や、「できる限り、子どもの被曝を減らしたい」と考える父母らへの支援のため、次善の策として、「サテライト保育」という取り組みがある。福島県内あるいは県外で、より線量の低い地域に子どもたちを連れて行き、保育をしたり、レクリエーション活動をするもの…。
サテライト保育の現状と、自主避難者の認可保育園広域入所への対応などを医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートした。
<福島報告>除染モデル事業に同行してわかったこと
国・内閣府が昨年、日本原子力研究開発機構(略称:JAEA)に委託、企画公募で決定した大手建設会社の共同企業体による「除染モデル実証事業」が終盤を迎えている。これは警戒区域や計画的避難区域等で国が行う除染作業において、効果的な方法や作業員の被曝状況、廃棄物の種類や量など、除染の実態を確認するのが狙いとされるもの。2月9日には、除染作業や汚染土壌等の廃棄物の仮置き場、除染後の山林の様子などが報道関係者に公開され、同行取材を行った。
事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所から約1.5キロにある除染後の山林では、放射線の数値は除染直前で毎時100マイクロシーベルトだったが、除染後は60マイクロシーベルトまで低下。しかし、除染後も依然として高い線量であることには変わらず、森林汚染の深刻さと除染作業の困難さが改めて確認された。JAEAは「これまでに行った下草や土砂の除去だけでなく、枝落としなどにより、木々から降下する放射性物質の除去が必要である」とし、さらなる森林除染対策を検討していることを説明した…。
視察に参加した医療ジャーナリストの藍原寛子氏がモデル実証事業からみた除染の現状と課題などをレポートする。
<福島報告>南相馬市民の集団損害賠償請求の準備始まる
南相馬市の住民による東電への損害賠償の集団申立ての準備が始まった。
今回の原発事故と放射能汚染の損害賠償に関しては、東電が住民ら被害者に対して事前に賠償額を提示しているが、その金額が低過ぎることや、被害の現状が反映されていないなどの理由から、住民の間に不満が高まっていた。それがここにきて、集団で損害賠償請求を行い、原子力賠償紛争解決センター(裁判外紛争解決手続き機関ADR)に和解仲介の申し立てをしようという動きに発展している。1月29日には市内の生涯学習センターで、弁護士らによる相談会が開催された。
一方、村の一部が「避難区域」と「計画的避難区域」にある川内村の遠藤雄幸村長が、1月31日、住民が村に帰ることができるという「帰村宣言」をした。「多くの住民が避難生活を送る郡山市よりも川内村の方が空間放射線量が低い」ことや、「高齢者の中には住み慣れない生活環境で体調を崩している人が多い」こと、「村民の選択肢を増やす」こと、「公共施設などの除染も進んでいる」などが「帰村宣言」に至った理由…。
現在の川内村の様子を、住民の話などを映像を交えて、医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。
<福島報告>「事故の賠償金に課税」でいいのか
福島第一原発の事故の被害者に対する賠償金が、課税の対象となっている。
福島県内では現在、原発事故に伴い損害を受けた被災者らが東電に対して損害賠償を求める手続きが進められているが、国税庁は昨年末、今回の被災者で事業経営者の営業損害のうち、減収分(逸失利益)に対して支払われた賠償金を、事業所得等の収入とするほか、原発事故の影響で仕事ができなかったことに伴う給与減収分の賠償金も一時所得扱いとし、いずれも必要経費などを差し引いて残った額などに対して課税対象とする方針を示していた…。
現在の東電に対する損害賠償請求の現状と課題を、医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。
<福島報告>コンクリートの放射能汚染は誰の責任なのか/脱原発世界会議報告 放射能被害に国境は無い
二本松市内の新築マンションの建築基礎部分に使われたコンクリートから高い放射線量が測定された問題で、二本松市、内閣府原子力災害対策本部などは15日、原発から30キロにある浪江町津島で採石された石をコンクリートに使用したことが原因とみられると発表した。
現在、国、県などが調査を進めているが、この新築マンションで使われた砕石は、二本松市内の大手砕石業者「双葉砕石工業」から多数の建設業者に流通し、県内の側溝や道路、護岸工事、民間の住宅などに使われていたことがわかっている。今後、影響は拡大する可能性が出ている…。
14、15日に都内で開かれた脱原発世界会議の模様と合わせて、現地の状況を医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。
<福島報告>安定ヨウ素剤を個人管理する「いわき方式」がスタート
いわき市は12月から、40歳未満を対象とする約6万8千世帯に対して、簡易書留郵便で安定ヨウ素剤の配布を始めた。昨年の原発事故直後に市民に窓口配布した安定ヨウ素剤の有効期限が切れたため、新しいものと交換するのが目的だが、万が一、原発が大事故を起こした際、市民に迅速に服用してもらうというメリットも勘案しての判断で、安定ヨウ素剤の個人管理は県内で初めて。「いわき方式」と呼ばれる独自の方法がスタートした。
震災直後、原発周辺の自治体では、三春町やいわき市、富岡町、双葉町などの市町で、住民に安定ヨウ素剤が配布されたが、南相馬市では配布が間に合わなかったり、配布をしなかった自治体も出るなど、市町村で対応が分かれた…。
いわき市をはじめとする浜通りの原発立地町等の安定ヨウ素剤の配布と服用に関する対応や、原発災害マニュアルと被災現場での災害対応のありかたなどについて、医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。
<福島報告>原因が特定できないコメの放射性セシウム汚染問題とその影響
福島県と農水省によるコメの放射性セシウムの基準値超え要因調査の中間報告が12月25日され、水田土壌のカリウム肥料が少量だったり、根の張り方が浅いことが必要条件として挙げられるものの、現段階では明確な要因は不明という結果に達したことがわかった。
春の段階で原子力災害対策本部は、土壌からコメへの放射性セシウムの移行係数を0.1とし、土壌中のセシウム濃度が低ければ、作付を行っても差し支えないとの見解を示していた。これは、土壌の汚染濃度が5,000ベクレルを超えた際、コメに500ベクレル超の放射性セシウムが検出されるというもの(5000ベクレル×0.1=500ベクレル)。
ところが今回の調査では、三分の一以上の地点で移行係数が0.1を超える高い値を示しており、「土壌の放射性セシウム濃度と玄米の放射性セシウム濃度との間には明確な相関関係は見られない」と、これまでの前提が崩れたことを認定した。粘土地か砂地かなどの土壌の組成や、水田用水との関係などについても、決定的要因と断言できる結論は得られなかった…。
住民の不安に対応するために、自主検査を始めた二本松市の取り組みを交えながら、医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。
<福島報告>福島の子どもの集団疎開の申し立てを地裁が却下
郡山市の小中学生が今年6月、郡山市に集団疎開を求めていた裁判で、福島地裁は12月16日、小中学生の申し立てを却下する決定を出した。
この裁判は郡山市に住む14人の小中学生が、放射線の空間線量が毎時0.2マイクロシーベルト未満の学校への疎開を求め、福島地裁郡山支部に仮処分を申請していたもの。
福島地裁は「一律に教育活動の差し止めをするほど、身体や生命に対する切迫した危険性は認められない」「除染や屋外活動の制限で損害を避けることができる」などと、切迫した被ばくの危険性を否定しただけでなく、「通学する学校の他の児童生徒の教育活動の実施を全て差し止めることなどを求めるものと認められ、厳格な運用が必要」と、14人以外にも債権者を拡大して、申し立てを却下した…。
債権者代理人で弁護団長を務める柳原敏夫弁護士と、チェルノブイリ原発事故と同じレベルの郡山市内の汚染地域における被ばく影響を債権者側意見書で出した矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授に、神保哲生と藍原寛子が今回の仮処分申請の争点と裁判所の決定の問題点などを聞いた。
<福島報告>将来の健康被害に備えて毛髪と歯の保存運動が始まる
将来、放射線の内部被ばくの影響で健康被害が出た場合の治療や補償などに備えるため、福島県で毛髪を保存する運動が始まった。千葉県松戸市では乳歯から被ばくを解明しようという試みが検討されている。
福島県や周辺の地域では3月の福島第一原子力発電所の事故以降、多くの住民が放射線に被ばくをした可能性が高い。しかし、放射線被曝による健康被害の症状が顕れるまでに5年以上の年月を要する場合が多いため、いざ病気が発症した時にその原因を証明できない恐れがある。
そこで、内部被ばくの状況を解明するためには、毛髪や歯の保存が有効というのだ。専門家によると、毛髪は血液や尿などと同様にバイオアッセイ(生物検定)法で被ばくの状況を測定できるという。骨と同じカルシウムでできている歯はストロンチウムが蓄積されやすい性質を持つ…。
毛髪と歯の保存運動の現状を医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートした。
<福島報告>セシウム混入粉ミルクを発見した市民放射能測定所
食品大手の明治は6日、乳児向け粉ミルク「明治ステップ」から、最大で30.8ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されたと発表した。国が定める暫定規制値200ベクレル/kgを下回るが、同社は今年3月14日から20日に埼玉県春日部市の工場で製造された40万缶の無償交換を始めた。
セシウムの混入が判明したのは、福島県二本松市のNPO団体「TEAM二本松」(佐々木道範理事長)から明治に指摘があったことがきっかけだった。11月初旬に募金などで購入した精度の高いヨウ化ナトリウムシンチレーション測定器で複数のメーカーの粉ミルクを測定したところ、「明治ステップ」から30ベクレル/kgを超える放射性セシウムを検出した。明治に2度にわたり連絡したが、同社から具体的な対応はなかったという…。
東電福島第一原発事故よる食の不安を反映して、福島県内ばかりでなく、首都圏でも市民放射能測定所が増えている。中には数百万円の精密な測定器を備えるところも珍しくなくなっている。 加工食品への放射性物質の混入、企業の対応、乳幼児対象の規制値の策定、市民による測定活動などについて、医療ジャーナリストの藍原寛子氏が現地取材を交えてレポートする。
<福島報告>オールFUKUSHIMAの放射線測定器の出荷始まる
福島県内の中小企業らが世界のボランティアたちの協力を得て製作した自前のガイガーカウンターが11月23日、初出荷された。
これは、「原発事故の影響下で暮らす人が使いやすく安価で、性能が保証された信頼される測定器を、今本当に必要としている人々に早く提供したい」という思いを持つ福島県内の中小企業や個人の有志が立ち上げたプロジェクト「ガイガーFUKUSHIMA」によるもの…。
「ガイガーFUKUSHIMA」の開発と製造に取り組む宗像さんら3人と、地元企業の製造の様子などを医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートした。
<福島報告>除染ボランティアが本格的に始まる
市民有志による除染活動が10月下旬から、福島市と伊達市で本格的に始まった。先週からは、環境省がHPでボランティア募集のページを開設し、細野豪志原発担当大臣も伊達市で除染活動をするなど、「除染ボランティア」への参加を呼び掛けている。
特定避難勧奨地点の指定が見送られた福島市大波地区でも毎週末、県内外のボランティアによる除染活動が行われている。11月12,13日の週末には、「福島のために何かしたい」と、首都圏や西日本、北海道などから会社員や主婦らが駆け付けた。市によると、現在募集枠はほぼ埋まった状態だという…。
除染ボランティアの活動と課題について、医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートした。
<福島報告>誰のための放射線国際会議なのか
「放射線と健康リスク」と題した国際専門家会議が震災から半年を迎えた11日から2日間の日程で、福島市の福島県立医大で開催され、国際放射線防護委員会(ICRP)や国連科学委員会(UNSCFAR)、国際原子力機構(IAEA)など、国際原子力関係機関の専門家が医療被ばくや情報提供などの支援を行うことを決めた。
この会議は日本財団が主催、ICRP、福島県医師会、福島県立医大、放射線医学総合研究所(放医研)などが共催、ロシア、アメリカ、ウクライナ、英国などから放射線防護の専門家ら約400人が参加した。
会議では「被ばくリスクは低いが、精神的、経済的なダメージが考えられるため、線量モニタリングなど環境監視を続け、情報提供を行う」ことや、国際機関の専門家が今後、連携して支援していく方針を決定した。また、今回の事故の教訓を得るためタスクフォース(専門委員会)を設置し、国際的な複数のプロジェクト立ち上げや、専門家会議の開催、放射線被ばく医療の支援を行うなどの案をまとめた…。
そもそもこの国際会議は誰のために行われたものなのか。県民健康管理調査は本当に県民のためになるのか。医療ジャーナリストの藍原寛子氏が会議の内容と課題をレポートする。