空間1次元波動方程式 (5) 解のエネルギーの等分配

空間1次元波動方程式 (5) 解のエネルギーの等分配

波動方程式の解のエネルギーについて、時間無限大の極限において運動エネルギーとポテンシャルエネルギーが全エネルギーのちょうど半分ずつの値に収束するというエネルギー等分配の性質を証明します。参考文献[1] A. R. Brodsky, On the asymptotic behavior of solutions of the wave equations, Proc. Amer. Math. Soc. 18 (1967), 207--208.この原論文ではより一般のKlein-Gordon型の方程式に対して、Fourier変換を使う方法でエネルギー等分配が示されています。教科書での参考文献としては以下の2つがあります。[2] L. C. Evans, Partial Differential Equations, Second Edition, American Mathematical Society, 2010.[3] F. Linares, G. Ponce, Introduction to Nonlinear Dispersive Equations, Second Edition, Springer, 2015.これらの本の演習問題としてBrodskyの結果が証明されています。この動画では、[2]にある方針で、演習問題の仮定を少しだけ弱めた形(初期値の台のコンパクト性を仮定しない形)で証明を与えました。ご質問への回答「ここまでずっと空間1次元な系の話題だけど2,3次元だと成り立たない定理もあるんですか?」まず、これまで見てきたエネルギー保存、有限伝播性や今回のエネルギー等分配は2次元以上でも成立します。ただし、次元が上がるにつれて、初期値に必要な滑らかさの仮定が強くなっていきます。ここは1次元の場合と異なると言えます。(2,3次元では、C^2級の解を得るのにu_0はC^3級, u_1はC^2級必要、といった具合です)他に次元に応じて変わる有名な性質としては、Huygensの原理(3以上の奇数次元でのみ成立)があります。これはそのうち動画でも紹介しようと思っています。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm40816523