<ニュース・コメンタリー>焼け太りの捜査権限の拡大を許すな

<ニュース・コメンタリー>焼け太りの捜査権限の拡大を許すな

 かねてから問題を指摘してきた刑事訴訟法の改正案の審議が14日、参議院で始まった。同法案は前国会で既に衆議院は通過していることから、冤罪の危険性を増大させる、焼け太りの捜査権限拡大の可能性が、現実のものになってきた。 この改正案は、元々郵便不正事件や相次ぐ冤罪事件などで検察の取り調べの在り方が社会問題化したことを受けて、取り調べの録音・録画を義務付けるための法改正を議論することに端を発していた。 ところが喉元過ぎれば何とやら。不祥事から時間が経ち、世間の風当りが弱まると見るや、法務官僚たちは可視化の範囲を最小限にとどめる一方で、可視化をするのなら捜査権限の強化が必要だと主張し始め、盗聴権限の拡大や司法取引の導入など、自分たちの権限を強化する法改正をごり押しし始めた。 まさに焼け太りだ。 今回の法改正で義務付けられる可視化は、裁判員裁判の対象事件と特捜案件に限られるため、全事件の3%にも満たない。97%以上の事件では取り調べは可視化されないのだ。しかも、3%未満の録音・録画も検察の裁量でどこを録るかを決められるので、部分可視化に過ぎない。 部分可視化では、検察の都合のいい箇所だけが録音・録画され、裁判に証拠提出される恐れがあり、被告の権利がかえって侵害される危険性が大きくなる。部分可視化なら可視化などしない方がましだ。 しかも、今回の法改正では警察の取り調べしが、可視化の対象になっていない。被疑者が密室の中で行われた警察の取り調べ段階で虚偽の自白をしてしまった場合、その後の検察の取り調べがどれだけ可視化されても意味がない。 部分可視化ではなく完全可視化が必要だ。また、警察の取り調べを含め、全ての事件を可視化の対象とすべきだ。 完全可視化されたからといって、弁護人や裁判官、裁判員が、何十時間もの映像を全て見なければならないわけではない。無論、映像が一般公開されるわけでもない。自白の強要や高圧的な取り調べによって被告人の権利が侵害されていないことを確認するために、弁護人が必要に応じて映像を証拠として使えるようにするだけで、冤罪の危険性は大幅に減少する。また、全てが録音・録画されれば、検察が都合の悪い部分は隠し、都合のいい部分だけを恣意的に録音・録画し、証拠とすることも防げる。・・・ 警察や検察の捜査権限の露骨な焼け太りにつながる刑事訴訟法の改正案の問題点を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

http://www.nicovideo.jp/watch/so28649896