マイリスト 琴葉スウィートホーム
グラビデ さんの公開マイリスト ステイホーム……せや、スウィートホームやるで!
https://www.nicovideo.jp/user/3558861/mylist/68236991
【スウィートホーム】#15(終)琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36994873 mylist/68236991もう思い残すことはないね 準備万端だよ さあいこう おねーちゃんせやな あおい 帰ろう次の戦いへ sm37026283
12:52|2020年06月10日 20:00:00 投稿
【スウィートホーム】#14琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36977562 mylist/68236991 次 sm37009457琴葉葵は時々夢を見る。遠い昔の原初の記憶の夢だ。誰かの背中とその向こうにあるテレビ画面。映っているのは国民的RPGのプレイ画面だ。まだ言葉も覚えていない頃の記憶だろう。だけどその光景だけはしっかりと覚えている。夢の中で葵はゲーム画面にくぎ付けだった。その途中で誰かに体を揺さぶられる。テレビから顔を背けると幼い姉の顔がそこにある。そこで夢は覚める。たったそれだけの記憶だ。いつのことだったか姉に尋ねてみたことがある。「うちらが別々に暮らす前のことやろ。全然覚えとらんわ」ゲームをしながらのただの雑談だったが、その答えに小さな寂しさを感じたのも事実だった。そうだよね、そんなこと覚えてる方が変だよね。記憶の中のゲームのリメイク版をプレイしていたからそんなことを思い出したのだろう。昔の記憶だというのに隠しダンジョンの無限ループの迷路を一度も間違えずに抜けたのはさすがに自分でも驚いてしまったが。「すごいな葵、全然ループひっかからんやん」「なんか覚えてるんだよねこの道順」「昔の記憶なー。うちは葵に引っ付いてたことしか覚えとらんわ。たまに夢に見んねん。ずーっとそっぽ向いてる葵にこっち向けーってちょっかい出す夢」葵は胸が熱くなるのを感じた。「ほら次は15ターン以内に倒すんやで。そのために吹雪の剣買ったんやからな」茜が肩を揺さぶる。そうだ。この感じだ。記憶と感覚が一つになるのが分かる。葵は肩に乗った姉の手に自分の手を重ねて言った。「……覚えてるじゃん」――私はこの手を取るために生まれてきたのかもしれない。琴葉姉妹の家庭事情は忘れてください。
10:29|2020年06月07日 22:00:00 投稿
【スウィートホーム】#13琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36961905 mylist/68236991 次 sm36994873琴葉茜は剣についた血のりを振り払った。襲い来るゾンビも幽霊も果ては死神まで切り捨ててきた。もはや一端のゴーストバスターだ。「葵、怪我はないか」「うん。問題ないよ、大丈夫」葵が振り返って返事をする。その背後で銀の鎧が腕を振り上げるが葵は見もせずに剣を振るうと鮮やかな切断面を晒して鎧は崩れ落ちた。葵はそれを確認もせず剣を収める。手ごたえから相手が起き上がれないことを理解したのだろう。最初の頃は本当に倒したかどうか不安で動かなくなってから何度もナイフを突き刺したりもした。経験を積むたびに少しずつ無駄が削ぎ落され倒す度に効率を求めた。もはやこの辺りで恐れるものなどいない。この世界はレベルがすべてだ。半身男もスケルトンも腐乱死体も生霊だろうとなんだって構わない。剣で切れるものなら神だって殺して見せる。そう思うと茜は口元が上がるのを感じた。嗤うのが抑えきれなかった。あれだけ恐れていた屋敷の化け物たちよりも今では自分たちのほうがはるかに強くなってしまったのだ。この屋敷の主は誰だ。間宮夫人か。あるいは狩人たる我々か。雌雄を決する時は確実に近づいていると茜は感じた。敵を倒して昏い笑みを浮かべる琴葉姉妹もいいですが忘れてください。
10:40|2020年06月04日 22:00:00 投稿
【スウィートホーム】#12琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36942832 mylist/68236991 次 sm36977562琴葉葵は幽霊を信じている。だがそれは自分から言うことではないし、言ったところで交友関係にプラスになるとは思えなかったから誰にも言わずにずっと胸の奥にしまっていた。幽霊など非科学的な存在であり、むしろ心霊現象は科学的に解析されてしまっているのが今の時代だ。葵は金縛りにあったこともあるし心霊写真も見たことがある。だがそれは睡眠時の脳の誤作動であり撮影技術による作り物である。誰もいないのに気配を感じるのは電磁波を無意識に感じ取っているだけでありラップ現象は家鳴りと呼ばれる家が軋む音だ。幽霊を信じていることはサンタクロースを信じているのと同じくらいバカにされる。だがそれでも葵は幽霊の存在を信じている。葵は昔ペットに九官鳥を飼っていたことがあった。オレンジのくちばしと黒い羽根に黄色い耳たぶ。リビングの隅に置かれたやや大きめのケージの中が彼女(メスだった)の部屋で、差し込まれた止まり木をいつもせわしなく行ったり来たりしていた。葵が名前を呼ぶと首をかしげながらそれを繰り返した。いろんな言葉を教えたがどちらかといえば教えようとしていない言葉をよくしゃべった。よっこいしょとか。毎日水浴びをさせたしふやかした餌を決まった時間に決まった分量与えた。でも彼女は人間の食べるものを欲しがったし葵もついつい調子に乗ってそれを与えてしまった。それが原因なのかどうかはもうわからないが彼女は十数年で死んでしまった。空になったケージを葵は呆然として眺めた。ふとした瞬間に目を向け彼女がもういないことに気付く。葵は頭ではわかっていたが心が追いついていないのを実感した。だがたまに感じるのだ。そのケージの中に何かの気配を。こちらを見ているのを感じるのだ。彼女の声が聞こえる気がするのだ。「――お化けが見えればいいのに」葵は幽霊を信じている。あるいは、ただ信じていたいだけなのかもしれない。出会いと別れを繰り返して人は前に進むので忘れてください。
10:15|2020年06月01日 19:00:00 投稿
【スウィートホーム】#11琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36922816 mylist/68236991 次 sm36961905琴葉茜は苦悩していた。少し前から、正確には供養塔を倒してからずっと幻覚に襲われているのだ。どこかから赤ちゃんの泣き声が聞こえるし突然憎悪にとらわれることもある。そのたびに隣の葵に気付かれないように拳を握り締め唇を噛んだ。私の愛しい赤ちゃん。どこにいるの。殺してやる。違う。これはうちやない。うちの記憶なんかやない。私は誰。わたしは。うちは。幻覚なのだこれは。自分でもわかっている。だがだんだんと抗うのが難しくなってくる。「ごめんちょっと休憩にしよか」茜は立っていられずに壁に寄りかかりうずくまった。床に散らばったガラスの破片に目をやるとそこには見慣れた自分の顔ではなく火傷で爛れた顔が映る。触れるとザラザラとした引きつった皮膚の感覚。そうだ。火のついた焼却炉に手を伸ばして、いや違う、それはうちやない!「あかねさーん、あかねさーん……」誰かが呼んでいる。行かないと。違う! これも幻聴だ! 自分が自分で無くなっていく。私ははどんな顔をしていたっけ。思い出せない。うちは、私は、ワタシハ。血が出ることも構わず茜はこめかみに爪を立てた。痛みだけは本物だ。こうしている間だけは自分を見失わずに済む。出ていけ……うちの中から出ていけッ! その時暖かいものが茜を包んだ。懐かしい感覚だった。「大丈夫だよお姉ちゃん。一人じゃないよ。私がずっとここにいるよ」そうだ。うちには大切なものがある。自分の顔が思い出せなくてももっと大事な妹の顔ならすぐに思い出せる。暗闇から顔を上げた時そこには涙ぐんだ葵の顔があった。「お姉ちゃん、心の力を忘れないで――」何かに憑りつかれる原作再現はないので忘れてください。
10:23|2020年05月29日 18:00:00 投稿
【スウィートホーム】#10琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36905910 mylist/68236991 次 sm36942832琴葉葵はカラオケ屋でアルバイトをしていたことがある。受付をして部屋へ案内し注文が入れば簡単な調理をして部屋へ運ぶ。お客さんが帰れば掃除をして暇なときにはマイクなどの機材の掃除をした。週末は忙しかったがそれ以外は時間を持て余すくらい適度に暇で楽な仕事だった。給料も悪くなかったし人間関係も良好だったのだが葵は長続きせずに辞めてしまった。周りからは引き止められたが葵は断固として意思を曲げなかった。決意をして辞職したのだ。「葵あそこやめたんかー。身内割引きで助かってたんやけどなぁ」茜が心底残念そうに言ったが葵は曖昧に笑ってごまかした。辞めた理由は誰にも言わなかった。なぜなら信じてもらえないと思ったからだ。そう。あの店は『出る』のだ。部屋で片付けをしていると扉のガラスの向こうを誰もいないはずなのに白い影が通る。消したはずのモニターがなぜかまた付いている。極めつけは閉店後の誰もいないはずの店内から聞こえてくる物音だった。すべての電源を落とし有線も止めてしまうと広々とした店内は恐ろしいくらいの静寂に包まれる。だが物音が聞こえてくる。あとは鍵を閉めて帰るだけだというのに何かが聞こえてくるのだ。一階の一番奥にあるトイレ、そこから何かが聞こえてくる。もし不審者なら通報しなければいけないがそもそも誰かがいるはずがないのだ。店への出入りはすべて確認しているしトイレの窓ははめ込みで開かない。受付にいる葵に気付かれずに通り過ぎることなど不可能だ。もしかしたら掃除用具が倒れた音かもしれない。葵は懐中電灯を持って確認しに行った。頼りない光源で照らしてみる。だが何もない。女子トイレはすべて扉が閉じられ何もおかしなところはなかった。葵はゆっくりと息を吐いて踵を返す。何もないじゃないか。葵は安堵し店を出て鍵をかけて家に帰った。変なことがあったことなど忘れてゆっくりとお風呂に浸かっている時にふと思い出した。私はトイレの掃除をした時に扉をすべて開けなかったか。確かに開けた覚えがある。温かい湯船につかっているのに鳥肌が立った。誰かが、『何か』が扉を閉めたのだ。あの場に『何か』がいたのだ。もし扉を開けていたら葵は何を見たのだろうか。そう思うと葵は限界だった。それが葵がアルバイトを辞めた理由だ。葵ちゃんは深夜に働ける年齢ではないので忘れてください。
10:34|2020年05月26日 02:00:00 投稿
【スウィートホーム】#9琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36885928 mylist/68236991 次 sm36922816琴葉茜は壁に手をついて重い息を吐いた。落下するシャンデリア、飛んでくるナイフ、突然流れてくる水。そして今度は床板が突然割れた。間一髪安全なところへ逃げ込むことができたが本当に危ないところだった。もしあと一歩でも葵との距離が違っていたら二人のうちどちらかは穴に落ちてしまっていただろう。想像すると背筋が凍えた。安らげる瞬間などこの館に来てから一度もなかった。もしも何かの理由で一人で行動しているときに自分が何かの罠にかかったら。あるいは葵が見えないところで危機に瀕していたら。ごくりと唾を飲み込む。もしものことばかり考えていても仕方ない。いざという時のためにいつでも万全に動けるようにしておかないとだめだ。茜は懐から何本目かになるくすりびんを取り出して一気に飲みほした。人工的なわざとらしい甘みがのどに残る。はっきり言ってまずかった。だがこれがなかったら自分も妹もすでにやられてしまっていたことだろう。安心はできないが飲むととても気持ちがすっきりするのだ。あとくすりびんは何本残っていただろうか。これから先何本見つけられるだろうか。常に持ち歩いていないと不安で仕方がなくなってしまうくらいに茜はくすりびんを求めていた。あの強烈な味が飲み干したばかりだというのに恋しくなる。ああ、くすりびんはどこだろう。くすりびんがほしい。くすりびん。くすりびん。どこ。という設定はないので忘れてください。
9:46|2020年05月23日 01:00:00 投稿
【スウィートホーム】#8琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36870714 mylist/68236991 次 sm36905910琴葉葵はとある動物園に姉と一緒に遊びに行ったことがある。季節は夏で天気も良くとても暑かったことを覚えている。一通り動物たちを見て回ったあと、大きな池のほとりにある売店でアイスを食べながら涼んでいた。「味は任せるとは言ったけど同じの二つは買わんで普通」茜がスプーンでカップの中身をつつきながら言った。緑に近い青色のアイスの中にチョコが混ざったフレーバー。葵の大好物だ。自分の好きなものを勧めるのは間違っていないはずだ。茜にもこの味を好きになって欲しいし。もしそうなったら大好きな姉をもっと好きになるだろう。アイスに舌鼓を打ちながら目の前の池、というよりは湖といったほうがいい景色を眺めていると、水の上をスワンボートが走っているのが見えた。「お姉ちゃん、あれ乗りたい」「へぇ、楽しそうやん。ええね」水辺に沿って船着き場まで歩くと料金を払ってボートに乗り込む。中は狭くちょっと動くと大きく揺れた。「大丈夫かこれ、転覆せんよな?」不安げな姉をよそに葵は勢いよく足元のペダルを漕いだ。水の上を二人を乗せた白鳥が進む。「すぐ調子に乗るところが葵の悪いとこやで」あっという間にバテて肩で息をしている葵に呆れた顔で茜が言った。「ごめんお姉ちゃん、あとはまかせた」「うせやろここ池のど真ん中やで……」「お願い、わたしもう無理。なんでも言うこと聞くから」「お、言ったな」それからどういうやり取りがあったのかは曖昧だが約束の内容だけは覚えている。「うちが一人の時に助けを求めたら飛んできて助けてな。約束やで」約束は果たされないから美しいので忘れてください。
10:19|2020年05月19日 09:00:00 投稿
【スウィートホーム】#7琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36851495 mylist/68236991 次sm36885928この館に迷いこんでからどれくらい経っただろう。琴葉茜は無意識にスマホで時間を確認しようとして気づいた。スマホは向こう側に置いて来てしまったのだった。思わず舌打ちしそうになる。暗く湿った空気と休む間もない霊体や化け物たちとの戦いの連続が容赦なく茜の精神を削っていた。「お姉ちゃん?」葵が不安そうに顔を覗き込んでくる。「なんでもないで」駄目だ。葵に心配されるなんて何をやっているんだ。うちは姉や、うちがしっかりしないと。軽く頬を両手でたたいて気合を入れなおす。無理やり笑顔を作ると葵の手を取って先を歩き始める。「きっともうすぐここから出られるで。うちのゲーマーとしての感がそろそろ終盤やって教えてくれとるからな。FFでいえばディスク3ってとこや。壺おじでいえば雪が積もってきたあたりやな」「そうだね。もうすぐだよね」前しか向いていない茜は気付いていない。明るく返事をしつつも葵の顔は下を向いたままであることに。「お姉ちゃん気づいてないと思うけど――もうすぐもうすぐって、それもう三回目なんだよ」口の中だけでつぶやいた言葉は姉には届かない。なんて一幕はないので忘れてください。
10:06|2020年05月16日 20:00:00 投稿
【スウィートホーム】#6琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36838895 mylist/68236991 次 sm36870714恐怖と聞いて琴葉茜が思い浮かべるのはある梅雨の夜のことだ。ボイスの収録を終えた茜はスタジオから車で自宅へ帰っていた。その日は大雨で時刻はすでに0時を回っていたこともあり暗くて見通しが悪く、路面の状態も最悪だったことは覚えている。ワイパーを最大で動かしわずかに見える道路の白線をにらむようにフロントガラスに顔を近づけ運転していた。車体を打ち付ける雨の音に負けないように音楽のボリュームを上げて気を紛らわせながらなんとか自宅の近くまで走った。駐車場へ入ろうとしたところで今朝出かけ際に葵が言っていたことを思い出した。「今日からしばらく駐車場が工事で使えないから代わりに向こうのアパートの前に止めてって大家さんが言ってたよ」そうだった。茜は自宅を通り過ぎ件のアパートへ向かった。そのアパートはかなり年季の入った建物で、窓にはいつもアルミのブラインドが下がっていて人の気配がしなかった。誰かが出入りをしているところを見たことがないし、もしかしたら誰も住んでいないのではと茜は思っていた。指定された場所に車を止めると茜は車を出ようとしてためらってしまった。外は大雨で傘がないのだ。家まで走ればほんの数十秒なのだがそれすら戸惑わせる激しい雨だった。仕方なく茜は雨の勢いが収まるまで車の中で待つことにした。お気に入りの曲をスピーカーから流してスマホをいじる。するとしばらくしてから何かが動いた気配がした。何だろうと周りの様子をうかがうと、ルームミラー越しに見える車の後ろ、おんぼろアパートの窓に違和感がある。茜は振り返って後ろをじっと見つめた。微かな違和感だった。だがそれは見間違いなどではなかった。アパートの閉じられているはずのブラインドが少しだけ広げられ、その隙間から誰かがこちらを見つめていたのだ。誰も住んでいないはずの部屋、明かりもついていない暗闇の中から誰かの瞳が茜を凝視していた。間違いなくブラインドが一部だけ持ち上げられている。誰かが外を見ているのだ。明かりもない暗い部屋で。夜中の0時過ぎに。まるで茜を待ち構えていたように。茜は思わず悲鳴を上げると雨に濡れるのも構わず家へ走った。途中一度だけ振り返ったが離れていても目が合ったように感じた。背筋を冷たいものが撫でていく感覚。その日、茜は震えながら眠った。本当にあったことなので忘れてください。
10:18|2020年05月13日 08:00:00 投稿
【スウィートホーム】#5琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36814384 mylist/68236991 次 sm36851495琴葉葵には秘密がある。もしも突然事件に巻き込まれたらどうするか。どういう行動をとるのが最善か。あらゆる状況を想定しその場合事態を打開できるスキルはどんなものなのか。たとえば目の前に銃があったとしてそれを使わなければならなかったとしたら。剣を振るうことが必要になったら。斧はどう使うか、弓の引き方は。その『もしも』を考えたら眠れない夜もあった。自分がうまくできたらおそらく一緒にいるであろう姉を守ることができる。自分が失敗したら姉も助からない。そういう恐怖がどこかにあった。無意味な強迫観念なのだろう。だが少なくとも使い方は調べれば学べるのだ。どんな武器も使い方を解説している動画がたくさんあった。銃火器の使用法から飛行機の操縦の仕方まで。葵は貪欲に知識を吸収した。すべては『もしも』の時のために。――そしてそれは今だった。という世界線の葵ちゃんはいないので忘れてください。
10:17|2020年05月10日 23:00:00 投稿
【スウィートホーム】#4琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36794243 mylist/68236991 次 sm36838895琴葉茜は雷が嫌いだ。雷様がおへそを取りに来るという迷信が子供のころは本当に恐ろしかったしなによりも大きな音で何もかもを壊してしまうんじゃないかという原始的な恐怖は安全だとわかっていても身をすくませる。自分の中での絶対に嫌な死に方ランキングの一位が雷に打たれて死ぬことだ。ちなみに二位は真冬の軒下のつららに刺されること、三位は切れた電線が突然降ってきて感電することである。「ファイナルデッドコースターかいな」だが決して起こらないとは言えないのが自然の怖さなのだ。運が悪いだけ、そう言えるのは結局のところ他人事だと思ってしまうからなのだろう。しかし本当の理不尽とは前触れもなく襲ってくるものだ。まだ葵と離れて暮らしていたころ、住んでいた家に雷が直撃したのだ。払暁の薄暗い闇の中、ベッドで眠っていた茜は衝撃に飛び跳ねた。本当に体が浮いた気がしたのだ。飛び起きて何が起こったのか調べると屋根の上のアンテナが真っ黒に焦げていた。火事にならなかったことは僥倖だったと思う。だが本当の恐怖はいつも通りにパソコンの電源を入れた時に始まる。いや、電源が入った時ではない。電源がつかないところからすでに惨劇は始まっていたのだ。マザボ、エアコン、冷蔵庫、テレビ。すべてを破壊していく雷。琴葉茜は雷が嫌いだ。――それは今でも変わっていない。雷雨のときはコンセントを抜きましょう。
11:11|2020年05月06日 23:00:00 投稿
【スウィートホーム】#3琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36775699 mylist/68236991 次 sm36814384琴葉葵は薄れゆく意識の中で夢を見ていた。いつのことだっただろうか。姉の茜が突然言ったのだ。「なあ葵、うちらもゲームばっかりじゃなくて料理くらいできるってとこ見せてもええんちゃうか」PCの画面にはボイロキッチンと書かれたページが表示されていた。「ただ作っても面白くないやろ、せっかくやからうちらにしか出せない味を前面に押し出してくで」「料理って、何作るの?」「やっぱ女子力だすにはスイーツやろ。お菓子作るでー」そんなことを言いながら始まった共同作業は、隠し味とかオリジナリティとかどう見てもおいしさじゃなくて面白さに極振りしすぎで、出来上がったのは黒ずんだ何かだった。「おいしくない……」お世辞も言えないレベルのひどい出来だった。結局それ以来料理はあきらめてゲームばかりすることになったのだが、なぜそれを思い出したのだろう。そうだ。楽しかったんだ。二人で手探りで何かをすることが。とても楽しかったんだ。またやりたいな。――今度は失敗しないように。っていう過去はないので忘れてください。
8:52|2020年05月04日 00:30:00 投稿
【スウィートホーム】#2琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
前sm36767055 mylist/68236991 次 sm36794243「これはゲームであっても遊びではない」琴葉茜はそんな言葉を思い出していた。古臭いかびたような臭気、首筋をなでる寒さとは違う冷気、隣を歩く妹とつないだ手に感じる体温と微かににじんだ汗。これはゲームの中のはずだ。最初から用意された都合のいいアイテム、現実に起こるはずのないレベルアップ、これらはすべてクリアのために整えられたお膳立てだ。故に敷かれたレールを正しく沿って歩くだけでいいはずだ。なのに手の震えが止まらない。もし、この世界でHPが0になったらどうなるのだろう。ゲームオーバーの表示が出てまた最初からなのか? それとも何事もなかったようにゲームの中からはじき出されるのか? あるいは……。澱んだ空気が思考を泥濘に引き込もうとする。茜は軽く頭を振った。考えすぎるな。今は脱出することだけを考えるんだ。自分だけではない。今は妹と一緒にいるのだから。絶対に失敗はできないのだ。「おねえちゃん、手が痛いよ」不意にかけられた声に茜は微笑みながら謝り、無意識のうちに力を込めてしまっていた手を緩めた。今自分は自然に笑えただろうか。不安を葵に気取られてはいないだろうか。うちがしっかりしなあかん、何があっても葵だけは助けるんや。茜は決意する。そう、たとえ自分が犠牲になったとしても妹だけは、と。とかこの姉妹は考えてなさそうなので忘れてください。
10:50|2020年05月01日 12:00:00 投稿
【スウィートホーム】#1琴葉姉妹が呪われた屋敷からの脱出に挑戦するようです
mylist/68236991 次 sm36775699とある昼下がりのこと。琴葉姉妹はぶつぶつしゃべりながらゲームをするといういつもと変わらぬ日常を送っていた。ゲームの息抜きにゲームをする毎日、その息抜きをしたいと琴葉茜は思った。一区切りがつきコントローラーを置いて伸びをしたところで玄関のチャイムが鳴った。琴葉葵が姉を制して立ち上がる。宅配だろうか。だが一番最後にポチッたのはずいぶん前のはずだ。葵が戻ってくるとその手にはゾンアマの段ボールがあった。葵も身に覚えがないという配達物。訝しみながらも中を開くと現れたのは箱のサイズ対してあまりに広過ぎる空間と、底に括り付けられるように梱包された1本のゲームソフトだった。タイトルは『スウィートホーム』。映画原作のファミリーコンピューターゲーム。「これってバイオのスタッフが作ったっていうゲームだよね。やってみたいな」「せやな。ま、息抜きにはちょうどええやろ」茜は少しだけ埃被ったファミコン本体を引っ張り出して赤白黄色のコンポジケーブルをブラウン管テレビにつなげると、カセットの端子に軽く息を吹きかけてからゆっくりと本体に差し込んだ。葵が2コンのマイクに何やら話しかけているのを横目に電源を入れる。その瞬間不思議な光が二人を包み込んだ。まぶしさに細めた目を開いた時、琴葉姉妹は自分たちがゲームのキャラクターになっていることに気が付いたのだった。という導入を考えたけど忘れてください。脱出後 mylist/68640421
9:22|2020年04月29日 22:00:00 投稿