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<ニュース・コメンタリー>われわれは「公器としての新聞」の終焉の瞬間を目撃しているのではないか・特権まみれの新聞社が軽減税率適用で失う最後の砦とは
既に特権まみれの新聞に、よりによって食品にしか適用されないはずの軽減税率までが適用されることになったことで、これまで新聞が享受してきた数々の特権がかえって明るみに出てしまう「やぶ蛇」状態の様相を呈してきた。
日本の新聞社は再販価格維持制度や新聞社とテレビ局だけが政府情報や行政施設の利用を認められる記者クラブ制度など他の業界では考えられないような優遇を受けてきたほか、先進国の多くが制限をかけている新聞社による放送局への出資(クロスオーナーシップ)なども事実上制限がないなど、とてつもなく多くの特権を享受してきた。
しかも、日本では新聞とテレビの系列化が事実上無制限で認められているため、テレビ局も新聞社が恩恵を受ける再販などの特権の実情に切り込むことは皆無に近い。そのためこれまで新聞社がどれだけ多くの特権を享受し、なおかつそこで得た膨大な利益を全国の放送局への出資し天下り先を確保する一方で、国から払い下げを受けた不動産などを使った不動産事業など他の事業に幅広く投資しているかといった情報が、一般市民の目や耳に触れることはほとんどなかった。
ところが今回、自民、公明両党が12月16日に決定した平成28年度税制改正大綱の中で、2017年4月に消費税率が10%に引き上げられる際に、税率が現行の8%に据え置かれる「軽減税率」の対象品目に新聞が含まれることが明らかになった。
大綱は軽減税率について、「低所得者に配慮する観点から」、「日々の生活において幅広い消費者が消費・利活用しているもの」に対する税率の引き上げを現行の8%に据え置くことで「買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点がある」として、「酒類及び外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」のみをその対象とした。・・・・
客観的に見ても、生活必需品の優先順位の上位2つが「食品」と「新聞」というのは、活字離れが進み、若い人の間では新聞をまったく読まない人の方が多くなっている現状の下では、多くの人が違和感を覚えるに違いない。しかし、それ以上に、この違和感はもはや新聞は市民社会から、税収を犠牲にしてまで守る価値のある公共的な産業だと思われていないことを意味している。これは新聞が重大な危機を迎えていることの証左だ。軽減税率などで喜んでいる場合ではない。公共性に対する信頼という、新聞社の屋台骨を支える根幹が揺らいできているのだ。
ここまでのリスクを冒してでも軽減税率を得ようとする新聞業界の市民感覚は、理解に苦しむところがある。しかし、それでももし新聞に対する軽減税率の適用が実際に行われるのであれば、新聞が真の公器としてゼロから出直しを図らない限り、公器としての信用は完全に地に堕ちてしまうだろう。その時、それでも残るかもしれない経済的な利益は、新聞社にとっていったいどれほどの意味があるというのだろうか。
食品と並び新聞だけに軽減税率が適用されるという天下の愚策について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>戦後レジームに対する「アリの一穴」となるか・日米合同委員会議事録の情報公開訴訟の持つ意味
NPO情報公開クリアリングハウスが今週東京地裁に提起した日米合同委員会議事録の情報公開訴訟は、日本の戦後の政治体制の根幹を問う画期的なものと見るべきだろう。
日米地位協定の下に設置されている日米合同委員会という、在日米軍の幹部と日本政府の中枢を担う官僚たちの間で定期的に行われている会議の議事録の公開請求はこれまでも何度となく行われてきた。しかし、日本政府は日米双方の合意がない限り議事録等を公表しないと決められていると主張し、ことごとくこれを拒んできた。
情報公開クリアリングハウスが12月2日に提訴した情報公開訴訟は、議事録全体の公開を求めるのではなく、これまで政府が非開示の根拠としてきた「日米双方の合意がない限り公表しない」ことの根拠となっている議事録部分のみの公開を求めた点に特徴がある。
具体的には、同NPOが1960年の日米地位協定発効後の日米合同委員会の議事録の一部と、1952年の日米行政協定時代の日米合同委員会の議事録の一部の公開請求を行ったところ、いずれも「日米双方の合意がない限り公表しない」ことが合意されているため、公開が拒否された。そこで、この2つの文書を非開示とした根拠となる、「双方の合意がなければ公開しない」ことを合意した部分の議事録の開示を求めるというもの。
提訴後に記者会見した同NPOの三木由紀子理事長は、「もともと、1960年の合意部分だけなら、中身もはっきりしているし、安全保障上の支障もないので公開されるだろうと考えて請求したら、全部非公開という扱いになった。そもそも非公開の考え方自体が範囲が広いだけではなくて過剰に安全保障上の支障を主張している可能性がある。」と語った。
日米合同委員会とは在日米軍の日本国内における身分を定めた日米地位協定の運用を話し合う在日米軍と日本政府の間の調整機関で、都内の米軍関係者の拠点となっている天現寺のニュー山王ホテルと霞が関の外務省で、これまで1000回を超える会合が持たれてきたとされる。アメリカ側は在日米軍副司令官が、日本側は外務省北米局長が代表を務め、その下に、在日米軍の陸海空軍および海兵隊の参謀長クラスと、外務、財務、防衛、法務、農水各省の将来の次官候補と目されるエリート官僚が名を連ねる。
そこでは在日米軍という世界でも特殊な法的地位を持つ軍人と軍属の法的な身分の調整が話し合われてきたとされる。財務や法務官僚も参加していることから、米軍関係者が事件を起こした場合の刑法の適用の在り方や税金の免除なども話し合われてきたと見られるが、議事録が一切公開されていないため、その実態は謎に包まれてきた。
外務省国際情報局長やイラン大使などを歴任しした元外務官僚で「戦後史の正体」「アメリカに潰された政治家たち」などの著書のある孫崎享氏は、日米合同委員会についてこう解説する。・・・・
今回の情報公開訴訟で長らく「一行たりとも公表しない」とされてきた日米合同委員会の議事録が、一部でもその姿を現すかどうかが、日本の戦後レジームの根幹に関わる問題であるかについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>「違憲状態」判決にがっかりしている場合ではない
2014 年12月の衆院選挙で一票の価値に最大で2.13倍の格差があったことについて、最高裁が3度目の「違憲状態」判決を言い渡したことに対して、落胆の声が広がっている。しかし、落胆などしている場合ではない。最高裁から3度も違憲と宣言されながら、単に「無効」とされなかったのをいいことに、毎回、違憲な選挙制度の下で選ばれてきた議会と、その議会の多数派が選出した内閣が、日本という国の国政を平然と担当していることの異常性をいい加減に真面目に考えるべき時が来ているのではないか。
違憲の選挙で選ばれた正統性のない政府や国会に、秘密保護法や安保法制、TPPといった、国家の根幹にかかわる重大な法律や制度を次々と決定することをこのまま許していて、本当にいいのだろうか。
また、今回の判決では多数意見こそいつもの退屈な「違憲状態」論に終始していたが、選挙を無効とする反対意見を表明する裁判官が2人に増えた一方で、そもそもあの選挙は違憲状態ではなく合憲だったとする裁判官が初めて2人も登場するなど、最高裁の中でこの問題に対する意見が両極化していることも明らかになった。
投票価値の平等裁判とは、国会議員1人に対する有権者の数の差が一定以上に開いた時、憲法14条の法の下の平等原則が損なわれるかが争われているもの。これまで最高裁は2度にわたり、一票の価値が2倍を超えた場合は「憲法違反の状態」にあるが、これをどう修正するかについては国会に裁量があるため、選挙を無効とはしないとする判断を下してきた。
今回も大法廷で審理に参加した14人の裁判官のうち9人は、これまでの判断基準を踏襲し、「違憲状態」とするにとどまる判断を下した。2倍を超える選挙区が13もあったことは違憲な状態と言えるが、国会も0増5減の区割り変更などの努力を行っていることに鑑み、直ちに「違憲・無効」とまでは言い切れないという、やや奥歯に物が挟まったような判決だった。
しかし、今回は大橋正春、木内道祥の2人の弁護士出身の裁判官が反対意見として、違憲であり、なおかつ無効だったとする、厳しい判断を下した。2013年の大法廷判決では唯一違憲・無効と判断していた山本庸幸裁判官は、前職の内閣法制局長官時に0増5減の区割り法案の作成に関与していたことから、今回は審理から外れているが、仮に山本裁判官が参加していれば今回も違憲・無効の判断をした可能性が高いことから、最高裁では投票価値に2倍以上の開きが出た場合、3人の裁判官が違憲・無効との立場を取るようになったとみていいだろう。
15人の裁判官からなる最高裁大法廷で多数意見を形成するためには8人以上の裁判官の賛成が必要になるが、国会が投票価値の不平等を解消するために抜本的な改革を実行できなければ、「違憲・無効」の立場の裁判官の数は次第に増えていくだろう。・・・・
3度目となる今回の最高裁の「違憲状態」判決について、その内訳や各々の裁判官の意見などを参照しながら、そもそも「違憲」と「違憲状態」と「合憲」の違いとは何なのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>安倍政権の放送法の解釈は間違っている
BPO(放送倫理・番組向上機構)がNHK番組の「やらせ疑惑」をめぐり、高市早苗総務相による放送への介入を批判したことに対し、政権側が激しく反論を繰り広げている。
高市総務相と安倍晋三首相は11月10日の衆議院予算委員会で、放送法は総務相が放送局に対して行政指導を行う権限があると解釈していることを明らかにした。
「BPOというのは、法定の機関ではないわけでありますから、まさに法的に責任を持つ総務省が対応するのは当然であろうと思う。」安倍首相はこのように語り、放送法の4条は放送局への政府の指導を認めているとの認識を示した。
また、自民党がNHKの幹部を呼びつけて事情を聞いたことについて、BPOが「政権党の圧力そのもの」と批判したことについても、安倍首相は「予算を承認する責任がある国会議員が事実を曲げているかどうかを議論するのは当然のこと」と語った。
確かに放送法の4条は放送事業者に対して政治的な公平性や事実を曲げないことなどを求めている。
しかし、放送法はその第1条で「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること」を定めている。映画監督でBPOのメンバーを務める映画監督の是枝裕和氏が自身のブログで指摘するように、放送法を審議していた1950年の衆院電気通信委員会で当時の綱島毅電波監理庁長官が、この条文はそもそも放送事業者ではなく、政府に対して向けられたものであると答弁している。
つまり、放送法の第1条は放送局を縛ることを意図としたものではなく、放送局に対して政治に介入されることなく、不偏不党や真実を貫く権利を保障している条文だったのだ。また、そこで言う不偏不党や真実といった条件は、放送局自らが「自律」的に担保すべきものであることも、同条文は明確に謳っている。
それを前提に政治な公平性や事実を曲げないことを求めている第4条を読めば、これらの条件も放送局が自律的に担保すべき基準と考えるのが自然だ。同じ法律の第1条で政治の介入を禁止しておきながら、第4条で政治が介入してもいいと書かれていると解釈することには無理がある。
そもそも日本国憲法21条は表現の自由や検閲の禁止を定めている。まず憲法21条が大前提として存在し、その下で放送法が第1条で権力の介入の禁止や放送局の自律的な不偏不党性や真実性の追求する権利を定めている。そして第4条で第1条で示した不偏不党性や真実性の具体的な要素として、政治な公平性や事実を曲げないことなどを挙げているということになる。・・・・
なぜ今日の日本では明白に憲法に抵触する、ありえないような法解釈がまかり通るのか。なぜ放送局はこのような法外な政府の解釈に反発しないのか。次々と表現の自由が切り崩されている現状について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
その他、原発事故直後に国外に避難したことで契約を解除された元NHKフランス人キャスターに勝訴判決など。
<ニュース・コメンタリー>テロに衝撃を受けた時に考えておきたいこと
約130人の死者を出したパリの同時多発テロから一週間が過ぎた。今回はレストランやコンサート会場での銃乱射やサッカー・スタジアムでの爆発など、その無差別性に衝撃を受けた人も多かったはずだ。
ネット上ではフェイスブックのアイコンにトリコロールを彩るなど、フランスとの連帯を表明する人が多く見られた一方で、先進国側がこれまでにはるかに多くのイスラム教徒を殺害してきた歴史を指摘し、フランス側の犠牲を過大に取り上げることへの反発を表明する人も見られた。
パリのテロ事件に対する反応は様々だが、二つだけはっきりしていることがある。それは、まず一つ目が、テロに対する先進国側の反応はほぼ例外なく、テロの首謀者側が期待したものとなること。そして二つ目が、それが十分にわかっていても、先進国側は報復や過剰反応を避けることができない宿命にあるということだ。
今回のテロに衝撃を受けたフランスを含む先進国側が、テロ対策を理由に人々の国境間の移動に制約を設けることも、国内のイスラム系住民への取り締まりを強化することも、さらにはISILに対する空爆を拡大することも、まさに今回のテロの首謀者たちが期待していた反応だった。特にイスラム国は、アメリカをはじめとする先進国を戦争に引き込むために、あえて人質の斬首処刑シーンをネット上に公開して見せるなど、常に緊張のエスカレーションを狙った行動をとってきた。大国との緊張のエスカレーションによって、自分たちの存在に対する認知度が上がることを期待しての行動だと考えられている。
そして、それが痛いほどわかっていても、先進国の政府はこれだけの犠牲を出し、恐怖が蔓延する事態を招いたテロの首謀者たちに対し、国民の応報感情に応えるために何らかの報復をしなければならない立場に置かれている。
早い話が、これは最初からテロリスト側に圧倒的に有利な戦いなのだ。
しかし、空爆の強化やテロリストの取り締まりの強化をいくら行っても、問題の本質的な解決にならないことは明らかだ。なぜならば、テロの根幹にはそれを生み出す土壌があり、その土壌を手当てしなければ、仮に激しい空爆によってISILを殲滅することができたとしても、どの土壌から次のテロリストが生まれてくることは必至だし、次に出てくるテロリストはより暴力性や残忍性を増したものになる可能性が高い。・・・・
21世紀がテロの世紀となることはもはや避けられそうにない。しかし、そのテロにわれわれがどう対応するかによって、この世紀が単なるテロの世紀となるか、テロの挑戦を受けた文明がテロを打ち負かした世紀となるかが変わってくる。
衝撃的なテロ事件を受けて、今、われわれが考えておかなければならないことは何かを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>【一票の格差訴訟】国側答弁で見えてきた自民党改憲草案の危ない意図
一票の格差が最大2.13倍だった2014年12月の衆院選について、法の下の平等を定めた憲法に違反するとして2つの弁護士グループが選挙のの無効を求めている裁判で、最高裁大法廷は10月28日、当事者の意見を聞く最終弁論を行ったが、その中で被告の国側が主張した内容には注意が必要だ。
この日の弁論では弁護士グループ側が議員定数は人口に比例して配分されなければならないと主張したのに対し、被告となる福岡県の選挙管理委員会は、議員定数は行政区画や地域の特性などを考慮に入れ、国会の裁量で決定されるべきものと主張した。
今回の国側の主張はこれまで何度も議論されてきた論点であり、既に最高裁によってそれが投票価値の不平等を正当化する理由とはなり得ないとの判断が下っていると、弁護士グループの伊藤真弁護士は指摘する。
「最高裁自体が認めていることなのに、その前の段階の、過疎地域の人の声を反映させなくなっていいのか、少数者の声を聞かなくていいのかという話を敢えてする。分かっていてしているんだと思います。国側としてそういうことを堂々と言ったことは今まで記憶にない」と伊藤氏は語り、旧来の主張を繰り返す国側の動機を訝った。
同じく弁護士グループの久保利英明弁護士は、国側は自民党の憲法改正草案を念頭に置いた主張をしているのではないかと指摘した上で、「僕らは(投票価値の不均衡が)憲法違反だという訴訟を起こせなくなる」と警戒する。
自民党の憲法草案は第47条の「選挙に関する事項」で、「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。この場合においては、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない」と定め、選挙区割りについて地域間の一票の格差を容認する内容となっている。
これに対し現行憲法の第47条は「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める」となっており、一票の格差を容認する問題は一切含まれていない。そのため現行憲法の下では選挙区割りについて、法の下での平等を定めた憲法14条に基づく一議席あたりの人口比率だけが憲法上の要請になっていると解されている。
安倍首相は自民党総裁に再任された9月24日の記者会見で、アベノミクスの新たな3つの矢を発表すると同時に、長年の野望でもある憲法改正の実現に向けた意欲を改めて表明している。
最高裁は11月25日にこの裁判の判決を言い渡す予定だという。
一票の格差裁判の最終弁論で国側が主張した、投票価値に格差を設けることが許されるとする根拠の妥当性について、憲法学者で首都大学東京准教授の木村草太氏の解説を参照しつつ、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>エディ・ジョーンズ最後の言葉/外国特派員協会会見で日本の構造的弱点を指摘
11月1日にラグビー日本代表のヘッドコーチを退任したエディ・ジョーンズ氏が離日を前に11月2日、外国特派員協会で会見し、日本のラグビー界が抱える構造的な弱点や後任ヘッドコーチの条件などについて語った。
ジョーンズ氏は、日本のラグビーは裾野は広いが若い段階でエリート選手を発掘し、世界に通用するトップレベルの選手に育成していく仕組みがないところに弱点があると指摘した。
「ラグビーは複雑なスポーツなので、若い頃から素質のある選手を発掘し、エリートして育成していかなければならない。しかし、日本の高校はグランドも土の固いグランドで、育成に必要なための設備やコーチングが整備されていない。」ジョーンズ氏はこのように語り、日本のラグビーが世界と伍していくためには、エリート選手の育成プログラムが必要になるとの見方を示した。
また、4年間務めた日本代表のヘッドコーチを前日に退任したジョーンズ氏は、後任のコーチについて、2019年のW杯を主催する日本にとって予選ラウンドを突破しベスト8に進出することが必須条件になるとした上で、「その困難な仕事を成し遂げるためには、国際経験の豊富なコーチが絶対的条件となる」と語り、後任コーチには海外のトップレベルのコーチ経験が必要になるとの考えを示した。
エディ・ジョーンズの最後の言葉からわれわれが何を学ぶべきかについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<マル激・前半>5金スペシャル SEALDsが日本社会に投げかけた素朴な疑問/奥田愛基氏(SEALDs・明治学院大学4年)、福田和香子氏(SEALDs・和光大学4年)
5週目の金曜日に特別企画を無料でお届けする恒例の5金スペシャル。今回の5金では安保法制に反対する国会前デモで一躍注目を浴びた学生グループ「SEALDs(シールズ)」の中心メンバーを迎えて、彼らシールズの活動を通じて見えてきた日本の実相への素朴な疑問について、大いに語ったもらった。
ラップ音楽に乗った「コール」で、安保法制に反対するデモをリードしてきたシールズ(SEALDs:Students Emergency Action for Liberal Democracy-s = 自由と民主主義のための学 生緊急行動)は、2013年に成立した特定秘密保護法に反対する学生団体サスプル(SASPL: Students Against Secret Protection Law = 特定秘密保護法に反対する学生有志の会)をその前身に持つ。
東日本大震災と原発事故後の政府の対応や特定秘密保護法、安保法制の制定過程などを通じて、日本の民主主義の在り方に対する根本的な疑問を持つ人が増える中、実際にその影響を最も強く受けることになる若者、とりわけ学生たちにも、その危機感は十二分に共有されていた。しかし、民主主義や民主主義を守るために立ち上がった学生たちと聞くと、従来の学生運動を思い起こす人も多いに違いない。ましてやその中心メンバーとなれば、さぞかし意識の高い若者たちなのだろうと思いきや、その一人、奥田愛基さんは、今回の安保法制への反対運動を始めるまでは、ほとんどデモに参加したこともなく、特に特定の政治問題に対するスタンスを公言したこともなかったという。・・・・
分からないこと、おかしいと思うことがあれば、声を上げるのが当たり前の社会への第一歩を踏み出す先鞭をつけた学生グループのシールズが、その活動を通じて見たもの、感じたことを、その中心メンバーの奥田愛基さん、福田和香子さんと、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so27491771
<マル激・後半>5金スペシャル SEALDsが日本社会に投げかけた素朴な疑問/奥田愛基氏(SEALDs・明治学院大学4年)、福田和香子氏(SEALDs・和光大学4年)
5週目の金曜日に特別企画を無料でお届けする恒例の5金スペシャル。今回の5金では安保法制に反対する国会前デモで一躍注目を浴びた学生グループ「SEALDs(シールズ)」の中心メンバーを迎えて、彼らシールズの活動を通じて見えてきた日本の実相への素朴な疑問について、大いに語ったもらった。
ラップ音楽に乗った「コール」で、安保法制に反対するデモをリードしてきたシールズ(SEALDs:Students Emergency Action for Liberal Democracy-s = 自由と民主主義のための学 生緊急行動)は、2013年に成立した特定秘密保護法に反対する学生団体サスプル(SASPL: Students Against Secret Protection Law = 特定秘密保護法に反対する学生有志の会)をその前身に持つ。
東日本大震災と原発事故後の政府の対応や特定秘密保護法、安保法制の制定過程などを通じて、日本の民主主義の在り方に対する根本的な疑問を持つ人が増える中、実際にその影響を最も強く受けることになる若者、とりわけ学生たちにも、その危機感は十二分に共有されていた。しかし、民主主義や民主主義を守るために立ち上がった学生たちと聞くと、従来の学生運動を思い起こす人も多いに違いない。ましてやその中心メンバーとなれば、さぞかし意識の高い若者たちなのだろうと思いきや、その一人、奥田愛基さんは、今回の安保法制への反対運動を始めるまでは、ほとんどデモに参加したこともなく、特に特定の政治問題に対するスタンスを公言したこともなかったという。・・・・
分からないこと、おかしいと思うことがあれば、声を上げるのが当たり前の社会への第一歩を踏み出す先鞭をつけた学生グループのシールズが、その活動を通じて見たもの、感じたことを、その中心メンバーの奥田愛基さん、福田和香子さんと、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so27491771
<ニュース・コメンタリー>沖縄県に対する行政不服審査は権力の濫用だ/木村草太氏(首都大学東京都市教養学部准教授)
国民の公権力への対抗策として設けられている行政不服審査を政府が沖縄県に対して行うことは、法の精神に適ったものと言えるのか。そもそも法が想定していないために明確な禁止条項がないことを理由に政府がそれを行うことは、あからさまな権力の濫用ではないのか。
沖縄県辺野古沖の米軍基地建設工事を巡る政府と沖縄県の対立が、深刻の度合いを増している。最終的には司法判断を仰ぐしか解決の道はなさそうだが、そこに至る過程での安倍政権の対応には、法の精神を蔑ろにしてでも自分たちの主張を押し通そうとする、手段を選ばない強権的な姿勢が見て取れる。
翁長雄志沖縄県知事は10月13日、仲井真弘多前知事が行った辺野古沿岸部の埋め立ての承認を、環境への影響などを理由に取り消した。この埋め立て工事は政府が進める新たな米軍基地建設にとっては不可欠なものだった。
これに対する対抗措置として政府は埋め立て工事を所管する国土交通省に対して、行政不服審査法に基づく不服審査を求め、それを受けて石井啓一国土交通相が、沖縄県の決定が効力を失ったと10月27日に発表している。同時に菅義偉官房長官は同じく10月27日、政府が地方自治法に基づき、国が知事に代わって埋め立てを承認する代執行の手続きに入ることが、同日の閣議で了解されたと発表した。
代執行とは、知事の決定に重大な過失があることが認められ、その結果、国が重大な損害を受けることが予想される場合、国が知事に代わって意思決定を行う権限を認める制度。それが実施に移されれば、埋め立ての承認権限を持つ沖縄県が禁止しているにもかかわらず、政府の権限で埋め立て工事が継続できることになる。
今回の代執行の前提には、政府(具体的には防衛省)が行政不服審査法に基づく不服審査を国交省に求め、国交省がその不服を認める決定を下したという経緯がある。強権的な色彩が強い代執行は県の決定に大きな過失があることが前提となるため、単に政府の意思と異なるというだけでは、行使することは難しい。あくまで沖縄県が誤った決定をしている必要がある。ところが、その大前提となる沖縄県の決定に対する不服審査は政府による権力の乱用であり、不法である可能性が高いことが、行政法の専門家らによって指摘されているのだ。・・・
しかし、安保法制の審議でもたびたび問題になったが、そもそも法が想定していないために、法律の中に明確にそれを禁じる条文がないからといって、それができてしまうという政府の姿勢が許されるものなのだろうか。今回の不服審査も最終的には司法の判断に付されることになるだろうが、仮に後から不服審査は違法との判断が下ったとしても、司法判断を待つ間に埋め立て工事が進んでしまえば、判断そのものに意味がなくなってしまう。一度埋め立てられてしまった海の環境を元に戻すことは、現実的には不可能だからだ。
今回の行政不服審査法に基づく不服審査の正当性について、ジャーナリストの神保哲生と憲法学者の木村草太が議論した。
<ニュース・コメンタリー>完全非公開のままでは非公開の妥当性が判断できない・イラク戦争検証報告書情報公開訴訟続報
日本には行政情報の公開を規定する「情報公開法」があるが、外交や安全保障の分野では多くの特権が認められ、政府にとって都合の悪い情報はほとんど公開されていない。しかし、情報公開を免れているからといって、いい加減な政策判断を許し、それが後々まで検証されないような状態を放置していては、大きく国益を損ねる恐れがある。
大量破壊兵器の保有やアルカイダとの関係などを口実に軍事介入を行った2003年のアメリカのイラク戦争が、誤った戦争だったことは周知の事実だ。結局、大量破壊兵器は見つからず、アルカイダとのつながりも間違いだったことが、後に明らかになっている。
しかし、当時の小泉政権はこの戦争でアメリカに対する全面的な支持を表明している。この判断が大きな間違いだったことは否定できない。あの時、誰が何を根拠にアメリカの対イラク戦争を正当なものと評価し、それを支持することが妥当だと判断したのかは、検証の上、少なくとも安全保障への脅威とならない範囲で、国民に公開されるべきだろう。
イラク戦争に関わったイギリス、オランダ、オーストラリアなどは、いずれも後に大規模な検証を行い、その結果を公表している。
しかし、日本政府は長らくその検証を行おうとさえしなかった。ようやく2011年8月末になって外務省が重い腰をあげ、2012年12月、「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果」と題する報告書が作成された。しかし、この時公表された情報は報告書のポイントを羅列しただけのA4で4ページの至って簡素なもので、実際に誰が何を検証したのかや、検証の結果、どこに問題があったことがわかったのかなど、肝心な情報が何一つ含まれていないものだった。
NPO情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は2015年1月、「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」報告書の全文と、検証のために用いられた文書やインタビューの記録などを情報公開法に基づいて公開請求をしたが、外務省は関連した一部の文書は開示したものの、イラク戦争に対する判断に関わる肝心の情報は一切の開示を拒んだ。
それを受けて三木氏は同年7月16日、東京地裁に報告書の公開を求める(正式には政府の不開示決定の取り消しを求める)提訴を行った。(このことは7月25日のニュースコメンタリー「イラク戦争の検証報告書の開示を求めて提訴」 で報じた通り。)
その裁判の第一回公判が10月20日東京地裁で行われ、被告となる国側が最初の弁論を行った。しかし、その弁論において国側は開示要求に対して争う姿勢を明らかにするにとどまり、今回非開示とされた文書が開示すべき性格の文書かどうかを判断する材料を何一つ提供しなかった。
原告の三木氏とその弁護団は、そもそもこの裁判は国側の報告書の非開示決定の是非を問うものであるにもかかわらず、報告書の中身がまったく公開されなければ、裁判所が開示・非開示の妥当性を判断することもできないと主張し、文書全体を非開示とするのではなく、文書の中でも開示が可能な部分については開示するよう求めたところ、裁判所もそれを認め、国側が次回の公判で何らかの回答をすることになった。
他国との機密情報を含んだ外交や安全保障の情報公開は当然ハードルが高い。しかし、それ故に、デタラメな外交判断や外交政策が放置されるのでは本末転倒だ。外交や安全保障の情報公開の課題などについて、NPO情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子氏とジャーナリストの神保哲生が考えた。
<ニュース・コメンタリー>野党連携に向けた共産党の本気度
共産党はどうやら本気のようだ。
共産党の志位和夫委員長は10月15日の外国特派員協会の会見で、安全保障関連法を廃止するための野党による連立政権が結成された場合、共産党は自衛隊や日米安保の廃止といった、長年にわたり主張してきた、党のアイデンティティと言っても過言ではない主要政策を、いずれも凍結し、現状を容認する方針を明らかにした。
共産党は先の国会で成立した安保法制を廃止するために、野党連携による「国民連合政府」の樹立を他党に呼びかけている。志位委員長はこの日の会見で、国民連合政府が成立し、万が一、その政権下で日本が有事に巻き込まれた場合、「日米安保条約の枠組みで対応する」、「急迫不正の時には自衛隊を活用する」と述べ、これまでは党が違憲であり廃止すべきであると訴えてきた自衛隊や在日米軍を活用すると明言した。
共産党は党の綱領で日米安保条約や自衛隊の廃止を明記している。しかし、志位の発言は安保法制を廃止するという目的のためには、共産党は一時的に基本政策を凍結することで、野党の結集を優先する姿勢を見せたことになる。
こうした共産党からの呼びかけに対して最大野党の民主党の岡田代表は、共産党との選挙協力は否定しないものの、「政権をともにするのはハードルが高い」と語り、共産党を含む連立政権構想には今のところ否定的な姿勢を崩していない。
また、この日の会見で志位委員長は、共産党は必ずしも閣内協力に拘らないとの姿勢まで見せている。共産党から閣僚を出すことが連立政権の障害になるのであれば、閣外協力にとどめることも辞さないというスタンスだ。
共産党が提唱する「国民連合政府」は先の国会で成立した安保法制を廃止することの一点で野党が合意・連携し、選挙に臨む。衆参の2度の選挙で勝利して政権が成立した場合、即座に安保法制を廃止し、その後、直ちに解散総選挙を打つとしている。しかし、民主党の岡田代表は「政権をともにするということは、安保法制反対の一点だけというわけにはいかない」と語り、連立政権を組む以上は、その他の基本政策でも合意が必要との考えを示している。
今回、共産党が政策面での最大のハードルになると見られていた基本政策の封印を明言したことで、民主党を含む他の野党が共産党の提案を拒絶するためには、少なくとも基本政策以外の合理的な理由が必要になった。
志位委員長はまた、来年7月の参院選で32ある一人区で、野党が統一候補を出す方向で合意する見通しを述べている。前回の参院選では32の一人区のうち26選挙区で自民党が勝利している。現在、参議院の議席配分で自公は野党を28議席上回っているが、単純に計算すれば自民党が勝利した26の1人区のうち野党が14を上回る議席を奪回できれば、参院の勢力が与野党で逆転することになる。
基本政策を封印した共産党の本気度と、他党が共産党との連携に腰が引ける理由について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
その他、日本のラグビーが突如として世界水準に到達できた理由、など。
<ニュース・コメンタリー>マイナンバー制度の暴走を防げるのは有権者だけだ
政府の情報公開に取り組むNPO情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長と、10月5日に施行されたマイナンバー制度の問題点と、昨年7月に内閣法制局が集団的自衛権の容認を決定した際に、その議事録を作成していなかったとされる問題について、ジャーナリストの神保哲生が聞いた。
マイナンバーは先の国会で改正マイナンバー法が可決し、10月5日から実際に番号の送付が始まっている。マイナンバー自体は当初は税と社会保障番号という位置づけで始まり、基本的にはその目的でしか使われないものという誤った認識があるように見える。
しかし、法律の条文を見る限り、国民一人ひとりに一生変わらない一つの番号を割り当てるマイナンバーは、すでに決まっている用途だけでも税と社会保障の範囲を大きく超えている。また今後、その活用範囲を広げていくことも法律に明確に謳われていて、知らない間にとてつもない大量の個人情報が、あらゆる用途に使われるようになってしまう危険性が十分にある。
情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は、マイナンバーという制度のそもそもの目的と理念が明確になっていないところに、大きな問題と危険性が潜んでいると指摘する。あえて理念を明確にしないことで、どんな目的にでも使えることを狙っているとのうがった見方もあるが、それを許すも許さないも、有権者の我々の意思にかかっている。
今一度ここで立ち止まり、国民の背番号化が暴走し始める前に、マイナンバー制度のあり方や、そこにどのような制限をかける必要があるかなどを議論すべきではないか。
また、2014年7月1日、安倍内閣は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議決定し、集団的自衛権の行使が憲法の範囲内で可能との判断を下しているが、前日の6月30日、内閣法制局は内閣官房国家安全保障局から審査のため案文を受領し、閣議決定当日に内閣に対して「意見はない」と電話で回答したことが明らかになっている。
しかし、内閣法制局がどのような審査を行ったのか、また内閣官房国家安全保障局から審査依頼に際してどのような書類が提出されたのかなど、その判断に係る情報が開示されていないため、内閣法制局が合憲と判断した根拠やその経緯をわれわれは知ることができない。
三木氏の情報公開クリアリングハウスはそうした文書の存在の有無も含め、その実態を調査し公表するよう求める要望書を、9月30日付で内閣法制局に提出したが、今のところ法制局からは何の返信もないという。
先の国会で可決した安保法制は内閣法制局の審査を経て行われた2014年7月1日の閣議決定を前提としている。法律の正統性にも関わる重要な問題が、文書が作成されたかどうかも明らかにされないまま、手つかずになっているのだ。
<ニュース・コメンタリー>安倍政権、アメリカでもメディア操縦を試み失敗
安倍政権は発足以来、すべての記者会見で基本的には記者クラブ所属の記者のみに質問の機会を与え、自分にとって不都合な質問や、デリケートな問題を質される機会を避けてきた。それが安倍政権の一貫したメディア操縦だったことは、9月26日のNコメでも指摘した通りだ。
ここで指摘したように、9月24日の自民党の総裁選後の記者会見、そして安保法案可決後の最初の会見となった9月25日の会見は、いずれも質問の機会を記者クラブ所属の記者に限定したために、新総裁や首相として当然質されるべき質問がほとんど何も行われないまま予定調和の中で会見が終了してしまった。
新総裁として臨んだ9月24日の平河クラブの記者会見では、萩生田光一筆頭副幹事長が冒頭、質問者は平河クラブに限ると宣言をした上での露骨なメディア統制を行っている。
また、9月25日の首相会見では司会を務めた内閣広報官は、フリーランスやネットメディアの記者が大勢挙手をしているにもかかわらず、挙手をしていなかったNHKの記者を指名して失笑を買っている。
こうして、国内では本当の意味での記者会見を一度も行わずに国連総会出席のためにアメリカを訪れた安倍首相は9月29日の内外記者会見でも、同じようにメディア操縦を試みた。そこでは質問者5人をあらかじめ選び、質問内容を事前に通告させたうえで、官僚が回答を用意し、首相はプロンプターに表示された原稿を読むだけで事なきを得るという手筈だった。
5人の内訳は日本の報道機関からNHK、共同通信、テレビ朝日の3名、海外メディアがロイター通信と公共ラジオ局のNPR(National Public Radio)の2名だった。
トップバッターのNHKは事前通告通りの質問を行い、首相もあらかじめ用意された回答を気持ちよく読んで一問目の質問は無事消化できた。
ところが、2人目の質問者となったロイター通信の記者が、最初は通告通りに「アベノミクスの新3本の矢」についての質問をした後、「もう1つ、質問が有ります。あなたはシリアの難民問題で支援を表明したが、なぜ難民を受け入れないのでしょうか?」と予定にはいっていなかった質問と唐突に行ったのだ。
言うまでもないが、今回安倍首相が参加した国連総会は、シリアの難民問題が主要な議題だった。難民問題を議論するために開かれた国連総会だったと言っても過言ではない。そして、具体的な議論の内容は、百万人単位で流出しているシリアの難民の受け入れを、どのような形で世界が分担するかだった。
しかし、難民問題については安倍首相は会見の冒頭で一方的に日本の資金援助などについて語ったが、日本の難民受け入れについては一言も触れていなかった。ロイターの記者の追加質問は日本の記者クラブの基準では「掟破り」なものだったが、世界では常識であり、それを聞かないことの方が問題といってもいいほど、ごくごく当たり前の質問だった。・・・・
しかし、今回の会見で欧米の記者たちが何よりも驚いたことは、そのような政治のメディア介入に唯々諾々と従っている日本の報道機関の記者たちの姿だったに違いない。
なぜか既存のメディアが触れようとしないニューヨークの記者会見で起きた最も重要なニュースを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>[安保関連法]最後の最後にとても重要な付帯決議が付いていた
集団的自衛権の行使を可能にする安保関連法案の参院の審議が大詰めを迎える中、最終局面で法案に重要な付帯決議がつけられていた。野党による問責や不信任案などを連発したぎりぎりの抵抗が続くなかで行われた修正協議に対しては、「野党の分断工作」「強行採決と言われないための姑息な小細工」などと批判を受けたが、実際は法案の核心に関わる重要な変更点が含まれていた。
修正協議は自民・公明の与党と、次世代の党、日本を元気にする会、新党改革の3野党の間で行われた。合意した修正内容を法案に反映させるためには再度衆議院での採決が必要となることから、今回は付帯決議として参議院で議決したものを、閣議決定することで法的効力を持たせる方法が採用された。
3野党といっても、いずれも議員が1名から5名しかいない弱小政党であり、その多くはもともと自民党から分派した議員だったこともあり、野党陣営から見れば敵に塩を送る行為との批判は免れない面はあったが、だとしても実効性のある修正を実現したことについては、名を捨てて実を取りにいったと肯定的に評価することもできるものだった。
具体的な付帯決議の内容としては、武力攻撃には国会の例外なき事前承認が必要とされた点や、武力行使は国会の終了決議があれば速やかに終了しなければならないこと、提供できる弾薬は拳銃、小銃、機関銃などに限ること、自衛隊の出動は攻撃を受けた国の要請を前提とすることなどが含まれた。
自衛隊の派遣には例外なく国会の事前承認が必要になったことで、来年の参院選で与野党が逆転すれば、事実上自衛隊の派遣や武力行使ができなくなることになった。
また、存立危機事態という抽象的な概念では、何が達成されれば武力行使を終了するかの基準が曖昧で戦闘が泥沼化する恐れがあるとの批判があったが、付帯決議で国会が武力行使の終了を決議すれば直ちに終了することが定められたことで、少なくとも一つの客観的な出口が提供された。
弾薬提供の規定についても、国会審議では「論理的には核兵器でも提供できる」などといった暴論が飛び交ったことから、あくまで緊急の場合に兵士の身を守るための拳銃や小銃の弾薬に限定することが盛り込まれ、大量破壊兵器はもとよりクラスター爆弾や劣化ウラン弾などの戦略的な弾薬は含まれないことも明記された。
ただし、付帯決議に集団的自衛権の行使には攻撃を受けた国からの要請が必要となることが明記されたことで、国家の存立が危ぶまれるぎりぎりの事態で最後の手段として行使されるべき集団的自衛権が、その実は他国からの要請がなければ使えないという、「存立危機事態」という概念そのものの矛盾点も露呈することとなった。
「敵に塩を送る行為」との批判を受けながらも、ある程度実効性のある妥協や修正を引き出した今回の付帯決議をどう見るべきかを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>沖縄米軍基地建設問題 県警を指揮できない知事の権力とは
県知事の決定が国の決定と食い違った時、国の決定に反対し、抗議行動を行う市民に対して、県警は警察権を行使することができるのだろうか。また、その逆はどうなるのだろうか。
スイス・ジュネーブの国連人権理事会で演説した沖縄県の翁長雄志知事は9月24日、都内の日本外国特派員協会で講演した。
その中で、ビデオニュース・ドットコムは翁長知事に対し、もし知事の決定と国の決定が食い違った時、国の決定に抗議する市民のデモや抵抗運動に対して沖縄県警がその排除に乗り出した時、知事は県警に対して何らかの命令をする権限があるのかを質した。
翁長知事は県知事は警察に対して命令する一切の権限は持たないとして、これを否定した。・・・・
沖縄県知事が埋め立ての承認を取り消し、国が埋め立て工事の継続を指示した時、その捻じれを解消するために、どのような解決方法があるのか。ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>記者会見は首相の独演会ではない
自民党の両院議員総会で総裁に再任された安倍首相は9月24日、記者会見を行い、「一億総活躍社会」の新たなスローガンを発表するなど、新たな政策課題に挑む姿勢を強調した。
ニュースでは安倍新総裁が気持ちよさそうに新総裁としての抱負を語るシーンが流れていたが、残念ながらこのニュースは最も重要な情報を伝えていない。これはとんだ茶番であり、とても記者会見と呼べるような代物ではなかったのだ。
記者会見は安倍首相が独演会よろしく、左右に配置されたプロンプターを見ながら自らの抱負を開陳した後、あらかじめ記者クラブと党の間で打ち合わせた質問が、記者クラブの幹事社から読み上げられ、それに続く質問もすべて自民党の記者クラブである平河クラブの記者のみに許されていた。そのため、自動的に日本の首相となる自民党の総裁の再任の会見であれば、当然質されなければならない、もっとも基本的な疑問や問題が何一つ正されないまま、新総裁は記者会見という市民の重要なチェックポイントをいとも簡単にクリアしてしまった。・・・・
政権の正統性の根幹に関わる問題で、適正な手続きを踏むことができない自民党と安倍政権の現状と、それをチェックする能力を失ったマスメディアの体たらくについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>「突破」された民主主義のセーフティネット
野党が問責や不信任案を連発し、ぎりぎりの抵抗を続ける中、集団的自衛権の行使を可能にする安保関連法案は9月19日の未明に参院で可決し、成立した。
しかし、法案の可決に至る過程で、政権によって数々の民主主義のセーフティネットが突破されてしまったことの影響はあまりに大きい。今日本は民主主義のセーフティネットに大きな穴が開いている状態にあることを、われわれは認識する必要があるだろう。
そもそも安倍政権は当初、憲法9条の改正を目指していた。しかし、そのハードルが高いと見るや、現行憲法の下で集団的自衛権の行使を可能にするための解釈改憲へと舵を切った。
そして、そのためにはまず、内閣の法の番人の機能を果たしていた内閣法制局を押さえこむ必要があった。内閣法制局は内閣の一部局だが、時の政権が自分たちの都合よく憲法を解釈しないように、内閣の監視する機能を果たしていた。
ところが安倍首相は内閣が法制局長官の任命権を持つことを利用して、現行憲法下でも集団的自衛権の行使が可能との持論を持つ外務官僚の小松一郎氏を新しい長官に任命した。こうして長年にわたり民主主義のセーフティネットの機能を果たしてきた内閣法制局は、突破された。
安倍政権は他にも、民主社会で重要なセーフティネットの機能を果たる報道機関にも、様々な形で介入することで、報道機関の権力監視機能を骨抜きにした。これでまた、セーフティネットがもう一つ突破された。
しかし、この2つが突破されたとしても、国会が正常に機能していれば、権力の暴走は防ぐことが可能だ。安倍政権の閣僚は国会審議においても、矛盾した答弁を繰り返した。衆参両院の国会審議を通じて、安保関連法案のいくつもの問題点が浮き彫になっていった。
にもかかわらず安倍政権はここでも、「突破」の道を選んだ。法案の問題点や矛盾点が次々と露呈しているにもかかわらず、国会の審議で一定の時間が消化されると、「審議は尽くされた」として、両院で過半数を握る与党の独断で審議を打ち切り、採決する道を選んだ。国会を数の力で突破しようとする政権与党と、何としても突破を防がなくてはならない野党の間で激しい攻防が繰り広げられたのが、今週の異常ともいえる国会での与野党の対立だった。
内閣法制局が突破され、報道機関のチェック機能が突破され、そして最後は民主政の最後の砦とも呼ぶべき国会が突破された。
民主主義の数々のセーフネットは実際には統治権力の暴走を防ぐために、政権を縛るネットとして存在する。しかし、セーフティネットは破られた。
議会という最後のセーフティネットが破られた今、われわれ市民社会はいかにして統治権力を縛って行けばいいのだろうか。ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>安保法案はなぜ危ないのか
安倍晋三首相は早ければ来週にも安全保障関連法案の採決を行う予定だという。参議院でも自公合わせて過半数を握り、万が一参議院が採決しない場合でも、衆議院では再議決による法案可決が可能な3分の2の議席を持つ以上、与党がその気であれば法案の成立は確実な情勢となっている。
憲法が禁じると解されてきた集団的自衛権を認めるこの法案が、憲法違反の疑いが濃いことは論を待たない。ほとんどの憲法学者や歴代の内閣法制局長官、ひいては元最高裁の長官までがこぞって「違憲」と呼ぶこの法案を、与党が数の論理が強行可決することによって、日本の立憲主義が蔑ろになることの日本の政治文化への影響がどれほど大きなものになるかは、現時点では予想することすら難しい。
7月18日にマル激に出演した憲法学者の石川健治東大教授が指摘するように、日本が少なくとも戦後、これまで失ったことがない何か大きなものを失うことだけは間違いないだろうが、それが何であるかは大きすぎてわからないといったところが、多くの人の正直な感覚だろう。・・・・
その他、総裁権限による対立候補の抑え込みは許されるのか、ユンケル委員長演説に見る、大量の難民を受け入れた欧州の考え方など。
<ニュース・コメンタリー>五輪組織委はゼロから刷新して出直せ
五輪の公式エンブレムに盗作の疑いがかけられている問題で、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は9月1日、「一般国民の理解を得られない」ことを理由に、佐野研二郎氏がデザインしたエンブレムの使用を撤回すると発表した。
会見で組織委の武藤敏郎事務総長は佐野氏自身が模倣を否定している上、エンブレムを選考した審査委員も模倣や剽窃はなかったと判断しているとして、盗作はなかったが、あくまで一般国民の理解を得られないことを撤回の理由とした。
しかし、記者会見で「一般国民とは誰のことか」と聞かれた武藤氏は、「よくわからない」と答えるにとどまるなど、エンブレム撤回の真の理由が何だったのかは釈然としない。・・・・
東京五輪の組織委員会はに元経団連会長の御手洗冨士夫を名誉会長、森喜朗元首相を会長に据え、以下、トヨタ自動車社長の豊田章男を副会長に、武藤敏郎元財務次官を事務総長にと、役員には錚々たるメンバ-が名を連ねる。しかし、そもそもそうした権威だけで物事が動かせるような時代ではない。新国立競技場といい、エンブレムといい、運営主体に五輪という国際的なイベントを運営する基本的な能力が欠けていることは明らかだ。このままでは、今後より大きな、そして致命的な問題が生じても不思議はない。手遅れになる前に、組織委員会の全面刷新を図るべきだ。
<ニュース・コメンタリー>アイゼンハワー司令官は日本への原爆投下に反対だった
今週のNコメではまず、マル激本編で九州大学の吉岡斉教授と川内原発再稼働に見る日本という国のガバナンスの問題点を議論したことを受けて、日本の統治権力が戦後70年経っても依然乗り越えることができない、「アメリカの意向」と呼ばれる虚構の意味を議論した。
最近では原発にしても然り。安保法制にしてもしかり。また、過去には大規模店舗法の改正や牛肉オレンジの自由化、金融ビッグバンなど、日本が国内世論の反対を押し切ってまで大きな政策変更を行う際には、決まってその背後に「アメリカの意向」というものが存在する。
それはあたかも、「アメリカの意向」という錦の御旗さえ立てられれば、日本ではどんなに国益に反した政策でも正当化できることを示しているようだ。
そこに存在する日本の戦後レジームの実態とは何なのかを議論した。・・・・
そのほか、年金情報流出問題の調査報告書から見えてくる政府のガバナンスの問題点などについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>70年談話とレッシグ出馬、サンダース躍進の衝撃
安倍晋三首相が8月14日に発表した戦後70年談話では、「侵略」や「植民地支配」といった日本の戦争責任に関連するキーワードは含まれていたものの、いずれも間接的な表現が使われ、首相自身の歴史認識が示されたとは言い難い内容だった。
談話は注目されていたキーワードを含めることで、アメリカを始めとする国際社会や、安保法制をめぐる支持率の低下、連立を組む公明党に配慮しつつも、自身の歴史認識を示すことは意図的に避け、あえて謝罪や反省の言質を与えないことで、安倍首相が掲げる「戦後レジームからの脱却」を期待する右派の感情にも配慮した、まさに玉虫色の談話だったと見るのが妥当だろう。
一方、アメリカでは8月11日、憲法学者でインターネット上のオープンな著作物の利用を規定した「クリエイティブ・コモンズ」の設立者としても知られるハーバード大学のローレンス・レッシグ教授が、条件付きながら大統領選挙への出馬を表明し話題をさらった。・・・・
安倍首相の70年談話の評価と、レッシグ教授の出馬や社会主義者候補サンダース上院議員の躍進に見られるアメリカ政治の地殻変動について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>原爆投下が正しかったと考えるアメリカ人が減少
アメリカの世論調査会社ピュー・リサーチ・センターが今年4月に行った世論調査で、70年前の広島、長崎への原爆投下が正しかったと考えるアメリカ人の割合が、56%にまで減ってきていることが明らかになった。1945年9月にギャロップが行った同様の調査では、85%のアメリカ人が原爆投下は正しかったと答えていた。
アメリカでは当時の政府の政治宣伝の効果もあり、アメリカは原爆投下によって日本を早期に降伏に追い込むことに成功し、結果的に多くのアメリカ人の命が救われたと受け止める意見が支配的だ。しかし、世代を追うごとに、そうした政治宣伝の効果が弱まる一方で、原爆の非人道的な実態を知る人の数が、徐々にではあるが増えているとみられる。
世代間のギャップも明らかになった。65歳以上のアメリカ人の間では、7割を超える人が依然として原爆投下は正しかったと答えているのに対し、18歳から29歳の間ではその割合は47%だった。また、軍事を重んじる傾向がある共和党支持者の間では74%が原爆投下を正当化しているのに対し、民主党支持者では52%だった。・・・・
その他、「国民の抵抗権は民主主義の重要なツール」「再販によって保護されている日経がFTを買収しても問題にならない理由」などを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<マル激・後半>5金スペシャル・もしも共産党が政権の座に就いたなら/志位和夫氏(衆議院議員・日本共産党委員長)
5週目の金曜日に特別企画を無料でお届けする恒例の5金スペシャル。今回の5金では日本共産党委員長の志位和夫氏をゲストに迎え、安倍政権による解釈改憲法案の審議が進むなど、戦後70年、日本の政治が大きな節目を迎える中、われわれは今、共産党にどこまで何を期待できるかを議論した。
安倍政権が推進する集団的自衛権の行使を認める安保法案については、民主、維新、共産、社民、生活の野党5党はここまで、結束して反対の姿勢を貫いている。志位氏は市民の強い反対によって法案を廃案に持ち込むことを目指すと力説するが、実際のところ数に優る政権与党に対抗する具体的な手立てがあるわけではない。
衆院の総議席の3分の2を握れば60日ルールによっていかなる法案も通すことができるのが、現在の国会の仕組みだ。そして過去2度の総選挙で、自民・公明の与党はいずれも衆院の3分の2を超える議席を獲得しているが、いずれの選挙でも総得票数においては、野党の合計得票数は与党のそれを上回っていた。現在の小選挙区制の下では、投票率が6割にも満たないこともあり、政権与党は有権者全体の2割強の得票で、事実上立法権を完全に掌握することが可能となっている。
そして、それを許しているのが、常に四分五裂の状態にある野党の不甲斐なさだ。自公の連携に対抗すべく、野党が結束して選挙に臨むことができれば、再び政権交代の望みも出てくるし、少なくとも現在よりも国会により大きな緊張感が生まれることが期待できる。野党が近視眼的な党利党略に走り、与党にとって脅威になり得ないことが、安倍政権が無理筋の法案を次々と可決することを可能にしているのだ。・・・・
共産党のソフト路線は本物なのか。共産党は政権を担える政党になったのか。ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、志位氏に共産党の本物度を問うた。前半はこちら→so26868680
<マル激・前半>5金スペシャル・もしも共産党が政権の座に就いたなら/志位和夫氏(衆議院議員・日本共産党委員長)
5週目の金曜日に特別企画を無料でお届けする恒例の5金スペシャル。今回の5金では日本共産党委員長の志位和夫氏をゲストに迎え、安倍政権による解釈改憲法案の審議が進むなど、戦後70年、日本の政治が大きな節目を迎える中、われわれは今、共産党にどこまで何を期待できるかを議論した。
安倍政権が推進する集団的自衛権の行使を認める安保法案については、民主、維新、共産、社民、生活の野党5党はここまで、結束して反対の姿勢を貫いている。志位氏は市民の強い反対によって法案を廃案に持ち込むことを目指すと力説するが、実際のところ数に優る政権与党に対抗する具体的な手立てがあるわけではない。
衆院の総議席の3分の2を握れば60日ルールによっていかなる法案も通すことができるのが、現在の国会の仕組みだ。そして過去2度の総選挙で、自民・公明の与党はいずれも衆院の3分の2を超える議席を獲得しているが、いずれの選挙でも総得票数においては、野党の合計得票数は与党のそれを上回っていた。現在の小選挙区制の下では、投票率が6割にも満たないこともあり、政権与党は有権者全体の2割強の得票で、事実上立法権を完全に掌握することが可能となっている。
そして、それを許しているのが、常に四分五裂の状態にある野党の不甲斐なさだ。自公の連携に対抗すべく、野党が結束して選挙に臨むことができれば、再び政権交代の望みも出てくるし、少なくとも現在よりも国会により大きな緊張感が生まれることが期待できる。野党が近視眼的な党利党略に走り、与党にとって脅威になり得ないことが、安倍政権が無理筋の法案を次々と可決することを可能にしているのだ。・・・・
共産党のソフト路線は本物なのか。共産党は政権を担える政党になったのか。ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、志位氏に共産党の本物度を問うた。後半はこちら→so26868683
<ニュース・コメンタリー>なぜ敵国扱いされてもアメリカに忠義を尽くすのか
内部告発ウィキリークスは7月31日、アメリカの国家安全保障局によって日本の首相官邸や経産省など主要な政府機関が盗聴され、通商交渉や気候変動、原子力政策などをめぐる日本政府の内部情報が漏洩していたことをうかがわせる文書を公開した。しかも、アメリカは盗聴によって得た情報をFive Eyes(5つの眼)と呼ばれるオーストラリア、カナダ、英国、ニュージーランドの政府当局と共有していたという。
日本時間8月1日午後の時点では、アメリカ政府はこの件については確認を避けているが、NSAはドイツのメルケル首相やフランスの歴代大統領の盗聴を行っていたことが既に明らかになっている。軍事同盟国でもある日本に対しても、同様の盗聴行為を行っていたとすれば、本来であれば両国関係に少なからず影響が及ぶ、重大事件にならなければおかしい。
ところが安倍政権は、アメリカとの同盟強化のために憲法解釈を変えてまで、集団的自衛権の行使を可能にするための法案を強行に可決しようとしている。安保法制の成立によって日米同盟がより強固なものになれば、万が一、日中間で軍事衝突が発生した際、アメリカが日本を守ってくれる可能性が高くなるはずというのが、今回の法改正における抑止論の本質のようだが、盗聴の対象となっているような国を、自国の国益を超えてまでアメリカが守ってくれると考えるというのは、どう考えても無理がある。
この何とも言い様のない「ズレ」は、一体どこからくるものなのか。・・・・
この「ズレ」をわれわれはどう捉えればいいのか。それを修正するために、何が必要なのか。ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>イラク戦争の検証報告書の開示を求めて提訴/三木由希子氏(NPO「情報公開クリアリングハウス」理事長)
昨年12月の特定秘密保護法の施行に続いて、現在国会では武力行使の適用基準を大幅に緩和する安全保障関連法案の審議が行われるなど、安全保障関連の法の改編が急ピッチで進んでいるが、その一方で明らかに後手に回っているのが、安全保障に関連した政府情報の情報公開制度の整備だ。
外交や安全保障関連の情報の開示には一定の制約があることはやむを得ないが、それを大義名分にすることで、安全保障分野の行政情報が聖域化しているきらいがある。
特に特定秘密保護法の施行で広範囲の秘密指定が可能になり、自国が攻撃を受けていない場合も武力行使が可能になる可能性が現実味を増してきた今、安全保障関連の行政情報をいかに開示させ、市民社会が適正な法の運用を監視していくかは、喫緊の課題となっている。
そうした中、行政情報の情報公開に取り組むNPO「情報公開クリアリングハウス」が7月16日、外務省が行ったイラク戦争検証報告書などの不開示決定の取り消し等を求める訴訟を、東京地裁に提起した。
民主党政権下の2011 年 8 月、松本剛明外相の指示によって外務省内でイラク戦争に関する対応の検証が行われ、その結果が2012 年 12 月に「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」と題する報告書の取りまとめられた。しかし、報告書そのものは公開されず、同年 12 月 12 日付で、わずか4ページの「報告の主なポイント」と題した文書だけが公表された。・・・・
ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、三木理事長に提訴の目的や意義などを聞いた。
<ニュース・コメンタリー>安藤氏と森氏がOKすれば計画の変更は簡単だった/森山高至氏(建築家・建築エコノミスト)
安倍首相が7月17日に、新国立競技場の改築計画の「白紙見直し」を発表したことで、「一度走り出したら止まらない公共事業」がひとまず止まったことの意味は大きい。
しかし、今回の迷走の原因とその責任がどこにあったのかの検証は不可欠だ。
新国立競技場の建設主体となる日本スポーツ振興センター(JSC)の鬼澤佳宏理事は7月16日の記者会見で、「安藤先生のお話にあった通り、(デザインの変更は)決定の経緯、条件、約束があり、基本的には国際的にも難しいと判断された。それを前提に議論を進めていくのではないか」と語り、当初予算を大幅にオーバーすることが確実になったザハ・ハディド氏デザインの当初案が最後まで変更されなかった背景に、デザインコンペの審査委員長を務めた安藤忠雄氏の意向が強く働いていることを示唆している。
鬼澤氏はまた、「私どもがいま考えているのはラグビーワールドカップに間に合わせること」とも語り、2020年五輪の前年に日本で開催されるラグビーW杯に間に合わせるためにも、ザハ案の変更が困難であることを指摘している。・・・・
ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、ザハ案に決まった当初から一貫して、「このデザインでは建てられない」ことを主張してきた建設エコノミストの森山高至氏と、大きな節目を迎えた新国立競技場建設迷走劇を議論した。
<ニュース・コメンタリー>維新案が浮き彫りにする「存立危機事態」の実相
100時間を超える審議を経たとして、政府の安全保障関連法案は来週中にも衆院での採決が取りざたされるが、依然として新たな武力行使の基準となる「存立危機事態」が何を指すのかは不透明なままだ。
そうした中、7月8日、維新の党が政府案の対案として独自の安全保障法案を提出した。この法案自体は自民・公明の与党が賛同していないこともあり、可決、成立する可能性はほとんどないと見られる。しかし、維新案に政府・与党が賛成しないことが決まったことで、逆に維新案と政府案とを対比すれば、これまで全く霧の中にあった政府案の武力行使基準の意味が、逆説的に浮き彫りになるという効果は期待できそうだ。
このたび提出された維新案は、新たに「武力攻撃危機事態」という事象を設けることで、日本を守るために活動する米軍が攻撃を受け、更に日本が武力攻撃を受ける可能性が高いと考えられる時は、自衛隊による武力の使用を可能にするというもの。
現行法では、日本が実際に武力攻撃を受けた場合にのみ、必要最小限の武力行使が可能とされており、武力攻撃を受ける可能性が高い「武力攻撃切迫事態」では、防衛出動はできるものの実際の武力行使は認められていなかった。日本はあくまで自国が武力攻撃を受けた場合にのみ個別的防衛権に基づいて最小限の武力が行使できるというのが、現行法の許容範囲であり、現在の憲法解釈となっている。・・・・
維新案が浮き彫りにする政府の「存立危機事態」の背後にある真意とは何かを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>「結婚は個人の尊厳に関わる基本的な権利」
結婚は個人の自律と尊厳に関わる基本的な権利。同性というだけでこれを認めないことは、憲法の平等原則に反する。
最高裁判所が6月26日、すべての州で同性同士の結婚を正式な婚姻と認める判断を言い渡して以来、アメリカでは同性婚カップルの結婚ラッシュが起きているという。
それまでも全米50州のうち37州とワシントン特別区(DC)では法的に同性婚が認められていたが、残る13の州では同性婚は禁じられていた。
この日の判決でオハイオ、ミシガン、ケンタッキー、テネシーの4つの州の同性婚を禁じる州法が違憲と判断されたことで、アメリカでは全州が同性婚を法的に認めることが義務づけられることになった。
最高裁は9人の判事のうち5人が、州法で同性婚を禁じることは、法の正当な手続き(Due Process of Law)によらずに、いかなる個人の生命、自由または財産を奪ってはならないことを定めた合衆国憲法第14修正条項に違反するとものと判断した。・・・・
米最高裁はどのような法理をもって、同性婚を合憲と判断したのか。日本にも影響を及ぼし得る米最高裁の歴史的判断の背景について、憲法学者の木村草太とジャーナリストの神保哲生が議論した。
<ニュース・コメンタリー>言論への圧力を跳ね返すためにはメディアは自らを律しなくてはならない
安倍首相に近い自民党の若手議員たちが、作家の百田尚樹氏を招いた勉強会で、メディアへの圧力を公言したことの波紋が依然広がり続けているが、そうした中にあって一つ決定的に抜け落ちている議論がある。
それは今回の発言を受けて、メディア側にも考えなければならないことがあるのではないかという点だ。より具体的には、今回の問題を、メディアも自らの身を正すいい機会と捉えるべきではないだろうか。
今さら言うまでもないが、憲法21条に謳われている「表現の自由」とは、国民の言論が政府や統治権力からに縛られることがないことを保障したものだ。その意味で民間人である百田氏の発言は直ちにこれに抵触するものではない。しかし発言の場所が自民党本部における自民党国会議員との会合の場であったことや、会合の冒頭のメディア取材を認めるなど、そこでの発言が一定程度は社会に膾炙されることを前提とていたものと見られることなどから、全面的に擁護されるべきものではない。また、民間人とは言え、統治権力に影響力のある人間が与党議員に対してメディア規制やメディア介入を進言したと考えれば、その発言に問題があったことは否定できない。・・・・
一連のメディア介入問題を、「今、メディア側が考えるべきことは何か」という視点から、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
<ニュース・コメンタリー>権力による言論介入と「絶歌」出版批判を混同するな
自民党の勉強会でゲストとして招かれた元NHKの経営委員で作家の百田尚樹氏が「沖縄の2つの新聞は潰さないといけない」などと発言したことが大きな問題となっている。
同勉強会では安保法制に反対の論陣を張るメディアを懲らしめるために、経団連に対してそのようなメディアのスポンサーにならないよう要請するべきだなどという話も議論されたことが報じられている。
安倍首相は憲法で保障されている表現の自由は尊重するとの立場を取っているが、党内のこうした動きに対して注文をつけるなどの意思は見せていない。むしろこれを黙認し、内心は歓迎しているかのようでさえある。
一方、1997年に神戸で起きたいわゆる「神戸連続児童殺傷事件」の当時14歳だった犯人が書いたとされる著書「絶歌」について、出版の是非をめぐり議論が起きている。
司法権や徴税権、認可権などを握る統治権力による言論への介入や、暴力による言論の介入は決して許してはならない。しかし、在野の人物が特定の出版物の内容を批判したり、「このような本を出すべきではない」として著者や出版社を批判する行為も、言論の自由を脅かす行為なのか。両者の境界線はどこにあるのか。
ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。