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MAGNUM『WONDERCITY』篇
つ○から転載。
『Magnum Temptation Acrobat』篇 ☞ sm16593461
『Magnum Mini Movers』篇 ☞ sm16572142
『Temptation Caramel & Almond』篇 ☞ sm14580991
『ECUADOR』篇 ☞ sm14580836 『Leap』篇 ☞ sm14580750
カール・ラガーフェルドが監督する3本のショートフィルム。
『Short Films』(予告篇) ☞ sm14580588
『Photo Mood』篇 ☞ sm14580645 『Applause』篇 ☞ sm14580677
『Art Class』篇 ☞ sm14580717
マイリスト ☞ mylist/24604223
孤独吐解禁文
「孤独吐」 解禁文
鳥の声が聞こえる。世界はまだ、生きようとしている。それがどうしようもなく眩しくて、ただ、目を背けた。老化は限界まで進んでいた。皮膚は乾き、声は震え、心臓はもうリズムを刻むことに飽いている。生きようとする本能だけが、肉体の奥で惰性のように動いていた。
この世界では、愛を失えば老いて死ぬ。けれど、俺はもう、誰かに愛されたいとも思わなかった。 カーテンの隙間から射し込む光が、この世界のどんな言葉よりも俺を責めている気がした。外に出ようと思った。散歩のつもりだった。でも本当は死ぬなら、こんな日がいいと思っていた。老いた身体を引きずりながら、気づけばあの路地裏に立っていた。 かつて老婆と出会い、そして彼女が死んだ場所。人生の最後の火を確かめるように、彼は煙を吐いた。
「あんた、何をしているんだ」声が聞こえた。顔を上げると、そこにはもう見ることはないと思っていた女が立っていた。
「お前……」 「何その身なり。死ぬつもり? 私や、あの子を残しておいて?」 声は震えていた。怒りでも、悲しみでもなく。ただ、ようやく見つけた誰かに向けた、生々しい“それ”だった。 世界は、二人を見捨てた。愛は壊れ、社会は冷たく、正しさだけが無機質に光っている。 それでも、俺は思った。まだ“心”はあるのだと。
最後の一本の煙草が地面に落下する。 その煙の行き先を見届けることは、もうなかった。 残ったのは、空に溶けていく吐息だけ。 それが、“本当の孤独であり独白”だった。
孤独吐(こどくはく)。 誰にも届かない声が、世界のどこかで小さく呼吸している。
解禁文
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:0da961c9-b64e-428a-8a25-bb0514792d4d
悲環
繰り返す人形
悲環フル
https://youtu.be/RDGithMo3wU?si=JVP37YftmG1QmFsC
付属小説 https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:2cc425cb-2eb3-4d86-86a0-57bf9ebf0ca7
セレーナ
セレーナ
僕を救ってくれ
セレーナフル
https://youtu.be/9g0L8so3tNg
付属小説
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:8a845c54-b3a4-4dbd-8ecb-8bffe18e6f93
悲観
ただそのまま
悲環フル
https://youtu.be/RDGithMo3wU?si=JVP37YftmG1QmFsC
付属小説 https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:2cc425cb-2eb3-4d86-86a0-57bf9ebf0ca7
ストーカー
ストーカー
治らない病だ。
ストーカーフル
https://youtu.be/IfYRP85KRcA
付属小説
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:a7d2649c-f4d4-4e2f-9455-b190bdde19d8
愛の抗体
空は空であるだけ
愛の抗体フル
https://youtu.be/69xHjycx90c
付属小説
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:aae78478-cf55-4bfe-8686-07d51ef872e9
ストーカー
何が悪いんだ?
ストーカーフル
https://youtu.be/IfYRP85KRcA
付属小説
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:a7d2649c-f4d4-4e2f-9455-b190bdde19d8
セレーナ
セレーナ
僕を救ってくれ
セレーナフル
https://youtu.be/9g0L8so3tNg
付属小説
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:8a845c54-b3a4-4dbd-8ecb-8bffe18e6f93
孤独吐本アルバム付属情報
【断章十】
「愛情供給制度」が施行されてから二百年が過ぎた。老化は抑制され、死は例外的な現象となった。
人々は恒常的な生命を得たが、その代償として、“心”の所在を見失った。
制度下における「心」は、測定不能な要素として長らく議論の対象となってきた。脳波、遺伝子、感情記録、夢。いずれも“心の痕跡”ではあったが、“心そのもの”には届かなかった。やがて、心を語る行為そのものが、非効率で非生産的なものとして排除されていった。
「愛は供給されるものであり、感じるものではない」という定義が、社会全域に浸透し、自発的な情動の発露は“異常発火”として 矯正対象に分類された。
しかし、それでもなお、愛の循環から逸れた者たちがいた。
彼らは供給網を離脱し、登録情報から消え、都市の周縁で“静かに息をしている”と報告されている。彼らが生きているのか、あるいは、すでに別の形へと移行したのかは確認されていない。
彼らを探しに行こうとする者もいない。
ただ、ときおり通信網の深層で、名義不明の音声ログが記録されるという。
・・-・ ・-・ ・ ・
「どうすればいい。心の在り処を教えてください。……僕らが、自身が、心なんだよ。」
・・-・ ・-・ ・ ・
記録の発信源は特定されていない。彼らがどこにいるのかも、まだ、誰も知らない。
付属情報
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:4937498b-0166-5dce-8216-62102655a145
ペルソナ本アルバム付属情報
【断章七】
一部の子供は、成長段階で愛情供給の不足や虐待などにより、人格構築に深刻な欠損を生じる。政府はこれを「社会的同調欠損症候群(SDS)」と定義し、労働効率と治安維持の観点から、治療と再社会化を義務付けている。 対症療法として導入されたのが「人格保全制度」である。欠損した人格の上に“安定的行動様式”を植え付ける装置、通称〈ペルソナ〉が普及した。
これにより、SDSの患者は“正常”な市民として振る舞うことが可能になる。 だがこの補助人格は、元の人格を完全に覆うわけではない。定期的に発作的な“乖離”が発生し、記憶の断絶・感情の麻痺・幻視・過去の人格の再浮上などが見られる。
近年、これらの症状が社会的ストレスによるものではなく、“ペルソナの拒絶反応”である可能性が指摘されている。 多くの市民はそれを“心の病”として処理する。
だが、ごく稀に、その仮面の奥から、真に人間的な何かが漏れ出すことがあるという。
付属情報
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:d289f34e-6453-4bb3-a3fa-b33d92904ad8
ノーモア本アルバム付属情報
【断章三】
出生率は、かつての人類史に比べ著しく低下している。
主な理由は「人口管理法」による出生許可制の導入である。
人は※1〈A.L.〉の循環量(愛情の供給能力)に応じて妊娠が許可され、政府が定める基準値を満たさない場合、受胎は自動的に阻止される。それでも、一定数の“想定外の誕生”が発生する。
こうして生まれた子どもたちは、社会的には〈不要児(Unrequired Child)〉と呼称される。不要児の多くは、A.L.供給者を持たないまま成長する。A.L.を受け取らずに生きることは、生理的に不可能であるため、政府は代替物質〈IOL(Instead of Love)〉の投与を推奨している。
だが、IOLは一時的な精神安定をもたらす代わりに、人格の固定化・感情の欠損を引き起こすことが確認されている。
この副作用は、成長過程の子どもにおいて特に顕著である。感情の発達が途中で停止し、言語理解や社会的同調が欠落したまま成人する。
そのような子どもは「教育不適合」として隔離施設へ移送され、労働用サーバー群〈HAB-CLASS〉に再配置される。 そこでは、〈愛情を必要としない存在〉として扱われる。
愛情を与えられなかった子どもは、やがて“愛情の概念そのもの”を理解しない。
それは、世界が生み出した最も静かな死である。
※1 愛情物質〈A.L.(Affection Level)〉
付属情報
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:ff3115b4-d193-43e6-9db6-08c2b931c3ea
咆哮本アルバム付属情報
【断章九】
愛情伝達不能個体
愛情交換によって生命維持を行う本国において、同性愛者・無性愛者・あるいは精神的結合のみを志向する者は、公式には愛情伝達不能個体(A.N.I.:Affection Non-Interactive)と分類される。A.N.I.は、異性愛を基盤とした愛情ネットワークから外れるため、老化抑制の社会的恩恵を十分に受けられず、身体機能の劣化が加速しやすい。
国家はこれを「社会的適応失調」と見なし、積極的な救済を行わない。にもかかわらず、A.N.I.の間では、※1IOLを非合法に流通させる闇市場が形成されている。 IOLは脳内の愛情受容経路を人工的に刺激し、短期的に老化進行を抑える効果を示すが、長期使用は感情機能の退行、知覚異常、依存症状を引き起こす。
また、純度や製造過程が不明なため、重篤な神経障害を招くケースも少なくない。
政府自ら政策の一部としてIOLを使用しているが、あくまで医療としての立場であり利己的な使用は非推奨とし取締りの姿勢を取っているが、実際には取り締まりは部分的で、黙認や隠蔽が常態化している。
理由は単純だ。 “愛の欠落による死”が、 最も美しく、最も秩序的な死として機能しているからである。 A.N.I.たちは有限の選択肢のなかで、偽りの温度にすがる。その選択は、個体の「生」を延ばす一手であると同時に、 感情そのものの消耗を伴う再生産であり、 この社会の残酷な逆説を体現している。
※1 IOL(Instead Of Love)---愛情代替物質
付属情報
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:8b1c01fd-61ea-479c-8c66-128fb575e5cc
愛の抗体本アルバム付属情報
【断章一】
歳は、誰も数えない。愛を受け取る限り、人は老いない。
それがこの世界のあたりまえ。愛を失えば、皮膚は灰のように脆くなる。笑うことも、食べることも、やがてできなくなる。けれど、愛を受け取りすぎた者もまた、長くは生きられない。若さが過剰になり、身体が崩れていく。
政府はそれを「過愛症(オーバーラヴ)」と呼ぶ。
各地の建物に設置された測定器《L-Meter》が、すべての呼吸を監視している。
老いることは、恥ではあるが、あまりにも稀有で人はその姿を忘れた。それでも彼女は老いていた。そして、眠るように終わった。
その日、世界はほんの少しだけ静かになった。
以下情報
・この世界では、「老い」は愛情の残量を可視化する “生理的な指標”として存在している。
・人は愛情を受け取ることで若さを保ち、受け取らなければ急速に老いて死に至る。ただし、愛情を過剰に摂取し続けると、肉体が“再構築”を始め、やがて人の形を失う。そのため、政府は「L-Meter(ラブメーター)」と呼ばれる測定装置で国民の愛情量を常時計測し、基準値を超えた者を“過愛症(オーバーラヴ)”として隔離している。
▫️数値階層
・0〜15°A: 致死域。愛情欠乏によって皮膚が灰化し、思考も停止していく。
・16〜40°A: 安定域。一般的な「正常」とされる範囲。
・41〜60°A: 高温域。老化が止まり、外見も若く保たれる。
・61°A以上: 危険域(過愛症)。
・若返り現象が暴走し、個体の細胞が自己増殖を始める。 最終的には溶解または“形を失う”。
▫️社会的な常識
・「老い」は恥ずかしいものとされている。“愛を貰えないことの証拠”だからだ。
・「若さ」は価値そのもの。
・若ければ若いほど愛されていると見なされ、社会的地位が上がる。
・政府は「愛の均衡」を保つため、定期的な愛情測定と“供給指導”を行っている。 これに違反した者は“自愛行為”(自己愛・他者依存を伴わない愛情)を疑われ、 取り調べの対象になる。
付属情報
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:cf77e8f1-e96a-43cb-90b2-62d9526d026d
私事本アルバム付属情報
【断章六】
政府の管理外に存在する「非公式愛情供給業者(通称:風俗店)」は、登録された愛情供給者の約3割を占める。愛情は身体的接触を媒介として伝達されるが、近年では精神的共鳴値を測定する簡易端末の普及により、“擬似愛情供給”が合法的に行われるようになった。
供給行為は「愛情行為(Act of Affection)」と呼ばれ、 これを2週間以上受けない場合、老化抑制値が平均14%低下することが報告されている。
恋人・配偶者を持たない者は、政府の補助金制度を利用して定期的に「愛情供給所(Love Station)」に通うことが義務づけられている。
供給の停止は死には直結しない。ただし、供給停止状態が長引くと、肉体老化と同時に精神分離症(通称:レール症候群)を発症する。
社会的適応を失った者は、やがて公共システムから排除される。
私事フル
https://youtu.be/7L7FgfI0G-U
付属情報
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:ea1be951-f9d1-4f9f-8010-2c273f27d65b
悲環本アルバム付属情報
【断章四】
・男女間でしか愛情が循環しないため、配偶者を持たない母親は通常の経路で愛情を補給できない。
・こうした母親たちは〈代替供給制度〉の対象となり、政府認可の“愛情代替業者(IOL供給者)”から人工的に生成された愛情物質を定期的に受け取る。
・IOLは本来、違法な嗜好薬として扱われていたが、供給源のない家庭に限り合法的に配給される。
・ただし人工的愛情には“流動性が高く安定しない”という欠点があり、母体内での保持時間が短い。そのため、※1母体余剰が形成されず、子供へと渡る愛情量が極端に少ない。
・このため、シングルマザー家庭の子供は「仮想的寿命(Pseudo Life Expectancy)」と呼ばれる制度的限界値を持ち、一定年齢に達する前に命が尽きることが多い。
・政府はその事実を公表していないが、出生記録の裏データでは“単親家庭の平均停止年齢”が他の家庭よりも著しく低い。
・IOL依存が進行した母親は感情機能が劣化し、愛情の感覚そのものを認識できなくなる。 これを〈※2悲環症第二段階〉と定義する。
※1 本来、愛情は男女間のみで循環するため、親子間の愛情は「供給構造の副産物」として定義される。母親が父親から受け取った愛情の残余が、微量ながら子供へと流れる形で維持されている。
・政府はこの“副産物の供給”を「母体余剰」と呼び、出生率維持のために最低限の愛情値を母親に与える政策を実施している。
※2 悲環症第一段階は感情の起伏が著しく激しくなる。
付属情報
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:7482ccbe-abb7-4e57-9581-843c75adfd54
おいていく本アルバム付属情報
【断章八】
《記憶安定化補助制度》
〈発令年:第128期愛情供給法改訂後〉
〈発行主体:心的恒常性維持局(MHC)〉
本制度は、愛情供給値の不均衡によって生じる急性老化症(ALS/Affective Lack Syndrome)の進行を防ぐために設けられた。
研究の結果、個体の記憶の連続性が老化進行率に大きく寄与することが確認された。MHCは、過去の愛情記憶を一定量保持している個体ほど、供給値の変動が安定し、老化の進行が通常よりも 顕著に遅延することを報告している。
一方で、記憶喪失・改竄・愛着対象の消失などにより記憶連続性が断絶した場合、供給値は急降下し、不可逆的な劣化過程に突入する。
そのため、記憶消失を防ぐ目的で「記憶安定化補助装置(MAU:Memory Assist Unit)」の使用が義務付けられた。
装置は個体の神経網に直接接続され、主要な愛着記録を自動的に保存・再生する。
ただし、過剰な再生は 幻覚・幻聴・人格分裂などの副作用を引き起こす事例が報告されている。
一部の市民は装置の使用を拒否し、過去の記憶を保持したまま老化・崩壊したとされる。
その者たちは俗に「オイテイク者(The Left Ones)」と呼ばれる。
彼らは、生きながら時間においていかれることを選んだ最後の人間たちである。
付属情報
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:de9f027e-465c-42cb-8789-b2dac7ff47a3
ストーカー本アルバム付属情報
【断章五】
・本世界における“愛”は生体活動に必要な栄養素として定義されており、国家によって「摂取量」と「分配量」が管理されている。
・しかし、特定個人に対して過剰な愛情を注ぐ、あるいは一方向に偏った愛情を抱く行為は、生体バランスを崩す要因として〈愛情過飽和症(LDS)〉に分類される。
・LDS患者は、愛情を放出する側の神経伝達に異常をきたし、自己補給が不可能になる。結果として、愛を与え続けながら自身の“愛情残量”を削り、最終的に「情動死」に至る。
・法的には軽度の場合、カウンセリングと投薬(IOL調整)が義務化されている。
・しかし重度の患者は“純愛体質者”とも呼ばれ、非合法の※1愛情取引市場で高値で取引される。
・愛情を正常範囲で分配できる者は社会的に健全と見なされ、逆に“過剰に愛する”者は危険思想として分類される。
・この世界では「愛が深いほど病的」という逆転構造が成立している。
・統計上、LDS発症者の大半は孤立者または“愛情欠乏歴”を持つ者である。
※1純愛体質者は自己補給不可能であるが、他者への供給は可能であり、都合よく※2A.L.を補給できるため。
※2 愛情物質〈A.L.(Affection Level)〉
付属情報
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:12196424-57ed-4e81-8453-63e3c92c5126
本アルバム付属情報セレーナ
【断章二】 この世界では「死」は医学的現象として認められていない。生命活動は、愛情物質〈A.L.(Affection Level)〉によって維持されており、その摂取量が基準値を下回らない限り、細胞は老化も停止する。 この状態を保てば、理論上は永続的に生存が可能とされる。しかし、稀に〈A.L.〉の極端な欠乏によって、肉体が急速に崩壊する事例がある。政府はこれを《A.L.D.(Affection Lack Disorder)》------愛情欠乏症候群----と定義し、倫理上「自然死」ではなく「栄養管理の失敗」として処理している。A.L.D.の発症者は、公共データベースに登録され、再発防止のための調査対象となる。報道機関はこの現象を“愛情管理不備”として伝えるが、そこに哀悼の意は存在しない。
死は異常であり、同時に見世物である。 発症の過程で本人に幻覚や強い幸福感が見られることが多く、この一時的な状態は“最終愛情錯覚(Terminal Affection Illusion)”と呼ばれる。死亡直前に笑みを浮かべる者が多いのは、この影響とされる。
本記録、初期症例の彼女のケースは、愛情欠乏が進行し完全老化に至った最初の例として扱われ、後に発症者を総称して“セレーナ症例”と呼ぶこともある。
断章二
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:fe0878b3-a211-437d-9a37-bb7467ed7865
セレーナ
セレーナ
僕を許してくれ
セレーナフル
https://youtu.be/9g0L8so3tNg
付属小説
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:8a845c54-b3a4-4dbd-8ecb-8bffe18e6f93
ペルソナ
外れ物の副作用
ペルソナフル
https://youtu.be/RqzkDdv3DT8
付属小説
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:12ffbc50-3483-4e87-8e5c-1e18637dfab0
ペルソナ解禁文
「ペルソナ」 解禁文
友人に誘われ、久しぶりに外へ出た。街の光はやけに眩しく、誰かの笑い声が薄膜の向こうから届く。
居酒屋のざわめき。グラスの音。すべてが、遠い世界の出来事のように感じられた。
「何してるんだよ」と問われても、答えは出ない。自分が何をしているのかさえ、もう分からない。
ただ、生きているという事実だけが、空洞の中に残っている。
数日後、偶然その友人を見かけた。別の誰かと、穏やかに笑い合っていた。「変わっちまったよ」と聞こえた瞬間、胸の奥で、何かが音もなく断ち切られた。
世界は透明な膜で覆われている。触れようとすれば、指先だけが虚空を掻く。人は皆、仮面を被り、互いの輪郭をすり替えながら生きている。
その中で、自分の顔だけがぼやけていく。
この世界のすべてが生きる意味になるなら、この世界のすべては死に足り得るはずだ。
もはや声も届かず、名前も呼ばれない。
現実との境界が、音もなく崩れていく。それでも、どこかで息をしている。
仮面の下、誰のものでもない顔で。
解禁文
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:89c56f7f-36e6-478b-9617-0cc530b9b008
ノーモア解禁文
「ノーモア」 解禁文
望まれなかった命にも、確かに心拍はあった。
この世界では、愛が命を繋ぐ。けれど、その温度を知らずに育つ子がいる。
母の声は罰のように降り注ぎ、名を呼ばれるたびに、 胸の奥で何かが縮む。
誰かに触れたいと思うほど、その願いが汚れていく気がした。 閉ざされた部屋、 埃の舞う光の粒だけが、 唯一、優しく見えた。 愛されることが、生きる証だというなら、 僕はもう、何者でもないのだろう。 それでも、心の奥で微かに響くものがある。 まだ“人間”でいようとする、名もない脈動。 痛みが、日常と同じ色をしていく。 それでも信じている。 この胸の奥に、 ほんの少しでも温かい何かが触れる日を。 静かな息が、誰にも届かない祈りを吐き出している。
解禁文
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:fae84a30-0e5a-4c8e-bfa7-775b5c641d24
咆哮解禁文
「咆哮」解禁文
テレビの向こうで、二人の女性が笑っていた。キャスターは優しく、観客は興味深そうに頷く。この国では「理解」が新しい娯楽のひとつになって久しい。愛の形を見世物にして、その異端を「多様性」という名で展示する。
愛が命の代わりになるこの世界で、与えても、与えられても救われない彼女たちは、最も無価値な存在として扱われる。それでも彼女たちは、カメラの前で微笑んでいた。まるで、檻の中の動物が、飼育員に餌をねだるように。
俺は画面越しに、自分の姿を見た気がした。呼吸だけを許された魚みたいに、透明な水槽の中で、生きる意味を失くしていく。
この世界の「正しさ」は、誰かを踏み台にしてしか立っていられない。間違っていると思うことすら、もう贅沢なのかもしれない。
俺はテレビを消さなかった。 音だけが、光だけが、この部屋でまだ、生きていた。
解禁文
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:f2f5b83d-a68a-4019-9c78-f98f13669eb2
愛の抗体解禁文
「愛の抗体」 解禁文
誰も死ななくなった世界で、“生”はただ義務のように続いていた。薄暗い路地裏で煙草を吸う男の前に、ひとりの老婆が現れる。この世界で、もう誰も見なくなった“老い”を抱えた人。
彼女は静かに語る。「愛されてきました。それが叶わないならば、今。」
永遠の生を許されたはずの人が、自ら終わりを選ぶということ。その姿は、男の中で何かを決定的に変えていく。「死ぬことは怖いですが」と笑ったその声は、どこか安堵していた。
世界が歪みはじめる。
愛が秩序の中心に据えられた時代。
その静かな、始まりの話。
解禁文
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:e9bfb4a6-82e2-4bf5-b4e6-328d20dd8412
私事解禁文
「私事」解禁文
夜の駅は、蛍光灯の明かりが少しだけ青白く揺れていた。 仕事終わりの人たちが無言で列を作り、改札を抜けていく。いつものように、その流れに身を任せるつもりだった。 行き先は、愛を買うための街。 今日も、誰かの腕の中で一晩だけ生きながらえるはずだった。
それでも、足が止まった。 ホームの端、線路の下から風が吹き上がる。 ふと、その風がやけに冷たく感じた。
電車の到着を知らせるアナウンスが響く。 車体が入ってきて、ドアが開く。 乗れば、生き延びるための夜が始まる。 けれど、今日は一歩も動けなかった。
もう、行かなくてもいいかもしれない。
愛をもらえなければ、老いて、やがて死ぬ。
それでも、誰かに生かされ続けるより
電車が出ていった後のホームは、急に静かになった。蛍光灯の明滅が、まるで鼓動みたいに見えた。帰路はいつもより長く感じた。
部屋に着くと、窓の外からアナウンスが聞こえた。 「明日も、愛を忘れずに。」 どこかの広告の一節だった。 それがやけに遠く感じられて、笑ってしまった。
煙草に火をつける。煙がゆっくりと天井に溶けていく。この世界がどうなろうと、俺はもう行かない。それは他人にとっては些細なことでも、俺にとっては確かに私事だった。
解禁文
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:6b8e200a-e855-4a32-b616-5397736233a7
悲環解禁文
「悲環」 解禁文
ニュースの声が、部屋の中に溶けていく。
「母親が実の子を殴った」とキャスターが言う。
よくある話だ。日常のノイズ。グラスの氷が鳴る。指先が湿る。 俺はチャンネルを変える。 バラエティ番組の笑い声が、代わりに流れ込む。それでも、胸のどこか、心がどこにあるかも分からないがそのどこか、そこが痛む。
画面の中の母親は俯いていた。その頬には涙の跡があった。誰かに赦しを乞うように、あるいは、自分自身に赦されたいように見えた。
「あの子が悪いのよ」 「私は間違ってない」
そんな声が、テレビの向こうから漏れ出してくる。彼女の嗚咽は、音声の隙間を縫って届く幻聴のようだった。
愛せないことは罪なのか。 愛そうとしたこともまた、罪なのか。
いずれにせよ、世界は同じ顔で彼女を裁く。
窓の外では鳥が鳴いている。 その声が妙にうるさく聞こえる。
テレビを消す。光が部屋に滲む。静寂の中で、最後の言葉だけが残る。
「ねえ、ママ。ただそのままあいして」
人を責めることも、救うこともできない。 ただ、この“悲しみの環”が続いていくことを、静かに見つめるしかない。
解禁文
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:dc3f9d68-cdd6-4b6b-9b96-301ff8bd8332
おいていく
それを忘れさせてくれ。
おいていくフル
https://youtu.be/lhYGxuOLH_A
付属小説 https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:f68c917a-a0e9-47bc-a3ac-8eaf07b14350
おいていく解禁文
「おいていく」 解禁文
愛をもらえなければ、老いて、壊れて、やがて死ぬ。この世界ではそれが当たり前だった。けれど、私はもう、誰からも愛をもらいたくなかった。
あの人のぬくもりを最後に、それ以外の愛を受け入れることが、どうしても出来なかった。他人の体温は、全部、偽物みたいに冷たかった。
みんなは言う。
「愛は栄養なんだから、もらわなきゃダメだ」と。でも、私にとってそれは生き延びるためのものじゃなくて“あの人と生きた証”だった。
だから私は、老いることを選んだ。
皺が増えて、髪が抜けて、骨が軋むたび、ようやく彼のいる場所に近づいていくような気がした。最期に出会った青年の瞳は、どこか似ていた。もうこの世界にはいないはずの、“ナニカ”を宿していた。
ああ、これでいい。
この痛みのまま、終われるならきっと私は、まだ“愛している”んだと思う。
解禁文
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:998021d1-1e93-4c28-b560-6909c7acd68b
ストーカー解禁文
『ストーカー』 解禁文
この世界では、愛こそが生をつなぐ。愛があれば老いは遠のく。それが、この社会の規範だった。ニュースが告げる。
「会社員の女性がストーカー被害を訴え、男は“人を愛して何が悪い”と供述しています」ありふれた報道のひとつ。けれど、その言葉の断片が耳の奥で反響した。
人を愛して、何が悪い。
思わず笑ってしまう。その叫びは滑稽で、同時に痛いほど真実だった。愛が善であり、幸福の証であり、命をつなぐ行為であるなら、なぜ、彼だけが罪になるのだろう。腰を掛けたソファがアホらしいと軋む。
俺も少しだけわかる。誰かを愛したいという衝動が、いつの間にか“義務”のように変わっていたことを。
愛されたい。
ただその一心が、ある日、社会の定義からはみ出していく。愛の欠片が許されぬほど、世界は“正しさ”を求めすぎている。
愛を肯定するこの世界は愛の全てを肯定できないらしい。愛とはいったい、どこまでが正しくて、どこからが狂気なのだろう。
愛は、確かに病ではない。けれど、治らないものだ。
ストーカー解禁文
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セレーナ解禁文
「セレーナ」 解禁文
老婆の死を目撃した中井弘樹の内側に、小さな波紋が広がり始める。それは穴のようでもあり、ただの違和感のようでもある。確かに何かが欠けているのに、それがどこにあるかは分からない。 ただ、目を逸らそうとしても、でかでかとした電光掲示板から流れる言葉が耳に引っかかり、胸のどこかに沈殿していく。
セレーナはその最初の一滴を描いた楽曲である。
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MAGNUM『Temptation Caramel & Almond』篇
つ○から転載。
『Magnum Temptation Acrobat』篇 ☞ sm16593461
『Magnum Mini Movers』篇 ☞ sm16572142
『ECUADOR』篇 ☞ sm14580836 『WONDERCITY』篇 ☞ sm14580775
『Leap』篇 ☞ sm14580750
カール・ラガーフェルドが監督する3本のショートフィルム。
『Short Films』(予告篇) ☞ sm14580588
『Photo Mood』篇 ☞ sm14580645 『Applause』篇 ☞ sm14580677
『Art Class』篇 ☞ sm14580717
マイリスト ☞ mylist/24604223
