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バッハ:カンタータ第78番「イエスよ、汝わが魂を」BWV78
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=sf4FXpS22-o)。
バッハが1724年に作曲し、9月10日の三位一体節後第14日曜日の礼拝で初演されたカンタータ「イエスよ、汝わが魂を」BWV78は、曲が親しみやすいことと、バッハのコラール・カンタータの中でも完成度が高いことが両立しており、バッハのカンタータの中でも人気が高い曲です。初演日の礼拝ではルカ福音書から「イエスがらい病の患者を治す」下りが説教の主題として選ばれており、本作はその説教に沿って、イエスに救いを求めて歩み行く道程での期待や迷走、癒し、そして神への信頼が歌われています。
音楽的には全7曲からなり、コラール合唱に始まって、レチタティーヴォとアリアを経てコラール合唱で締めくくるというバッハの典型的なコラール・カンタータの様式となっています。
ウルズラ・ブッケル(ソプラノ)
ヘルタ・テッパー(コントラルト)
ジョン・ファン・ケステレン(テノール)
キース・エンゲン(バス)
カール・リヒター指揮
アンスバッハ・バッハ・ソロイスツ
ミュンヘン・バッハ合唱団
バッハ:カンタータ第77番「汝の主なる神を愛すべし」BWV77
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=AERnWgdP6ws)。
バッハのカンタータ「汝の主なる神を愛すべし」BWV77は1723年、三位一体節後第13日曜日にあたる8月22日に初演されました。この日の聖句はルカ福音書の中でも有名な「善きサマリア人のたとえ」で、これにちなんでカンタータも隣人への愛と神の愛について歌われます。とはいえ、福音章句と直接の関係がある歌詞は第4曲(テノールのレチタティーヴォ)のみで、それほど明確なストーリーがあるわけではありません。
音楽的には、冒頭曲の合唱のあとはアリアとレチタティーヴォが交互に並び、最後はコラールで締めくくられる全6曲から成っており、本作の1週間前に初演された「わが魂よ、主を頌めまつれ」BWV69aに比べると演奏規模は簡素になっています。
デートレフ・ブラチュケ(ソプラノ)
ポール・エスウッド(アルト)
アダルベルト・クラウス(テノール)
マックス・ファン・エグモンド(バス)
グスタフ・レオンハルト指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
コレギウム・ヴォカーレ
レオンハルト・コンソート
ハノーヴァー少年合唱団
バッハ:カンタータ第76番「諸々の天は神の栄光を語り」BWV76
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=j_ltfoLM-IY)。
1723年、バッハはライプツィヒの聖トーマス教会のカントル(トーマスカントル)に任命され、着任後の最初のカンタータとして「乏しき者は食らいて」BWV75(sm39788506)が5月30日に披露されました。そしてその一週間後、三位一体後節第2日曜日にあたる6月6日に2番目のカンタータとして初演されたのが「諸々の天は神の栄光を語り」BWV76です。
本作はBWV75に続いて演奏されることを念頭に、BWV75と音楽様式上ペアになることを考えて作曲されました。第1部7曲、第2部7曲の14曲構成であること、ソプラノ・アルト・テノール・バスの4つすべてのアリアがあること、アリアとレチタティーヴォが交互に演奏されることなど、両曲はほぼ共通した構成となっています。一方BWV75との相違点としては、男声のアリアがより技巧的であること、そしてトランペット独奏が随所に現れて全体的に輝かしい曲想となっていることで、題名通り「神の栄光を語」る明るい響きに満ちた大規模な楽曲です。
本作はBWV75と並んでライプツィヒ市民に高く評価され、バッハはトーマスカントルとして順調な滑り出しに成功しました。現代においても、本作はライプツィヒ時代にバッハが作曲したカンタータの中でも傑作の1つと評されています。
なお、第2部冒頭(第8曲)のシンフォニアは、後に編曲されてオルガンのためのトリオソナタBWV528の第1楽章に転用されています。
エディット・マティス(ソプラノ)
アンナ・レイノルズ(アルト)
ペーター・シュライアー(テノール)
クルト・モル(バス)
カール・リヒター指揮
ミュンヘン・バッハ管弦楽団
ミュンヘン・バッハ合唱団
バッハ:カンタータ第75番「乏しき者は食らいて」BWV75
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=CVigm_9XHj0)。
バッハのカンタータ「乏しき者は食らいて」BWV75は、1723年に彼がライプツィヒのトーマスカントルに着任して初めて披露したカンタータで、トーマス学校内の宿舎に入居してわずか1週間後、三位一体節後第1日曜日である5月30日にニコライ教会で初演されました。
本作はライプツィヒ市民に対してバッハが自分の能力を紹介するための作品という側面があり、第1部7曲、第2部7曲の14曲からなる大規模な作品となっています。作品は第1部の第1曲が合唱曲、第2部の第1曲(第8曲)がシンフォニアという違いはあるものの、後に続く曲がレチタティーヴォとアリアが交互に演奏される構成はどちらの部も共通しており、更にそれらはソプラノ・アルト・テノール・バスのアリア、レチタティーヴォがすべて含まれていて、バッハが自分の音楽的能力を最大限に発揮した構成となっています。ただし、これらのレチタティーボは聖書の「貧しいものは幸せだ」という歌詞を装飾を変えながら歌っており、「小手先の技術で単一の曲を使い回している」と評価を下げる意見もあります。
とはいえ、本作の初演は見事な成功を収め、この後バッハはライプツィヒでほぼ毎週1曲のペースでカンタータの作曲・上演を行うこととなりました。
ミリアム・フォイアージンガー(ソプラノ)
ダミアン・ギヨン(アルト)
ヴォルフラム・ラトケ(テノール)
クリスティアン・イムラー(バス)
シギスヴァルト・クイケン指揮
オランダ・バッハ協会管弦楽団
オランダ・バッハ協会合唱団
バッハ:カンタータ第73番「主よ、御心のままに、わが身の上になし給え」BWV73
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=suCkBgDYuLg)。
1724年、公現祭(イエス・キリストの顕現を記念する祝日)後の第3日曜日である1月24日に初演されたバッハのカンタータ「主よ、御心のままに、わが身の上になし給え」BWV73は全5曲から成り、当日の福音書章句がマタイ福音書から「イエスが奇跡により病人を癒す」であることにちなんで「生の苦しみや死の痛みに悩む人々は信仰により主に救われる」といった内容が歌われています。
音楽様式としては、第1曲が合唱の合間にソプラノ、テノール、バスによるレチタティーヴォが挟まれるという珍しい形式であるものの、第2曲以降はアリアやレチタティーヴォを経てコラールで締めくくられる、典型的なバッハのコラール・カンタータとなっています。
なお、本作は初演時にはホルンのパートがありましたが、1732年に再演されたときにはオルガンに差し替えられており、この動画もオルガンで演奏されています。
バルバラ・シュリック(ソプラノ)
ジェラール・レーヌ(アルト)
ハワード・クルーク(テノール)
ペーター・コーイ(バス)
フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮
コレギウム・ヴォカーレ・ゲント管弦楽団
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント)
バッハ:カンタータ第71番「神はいにしえよりわが王なり」BWV71
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=JkmJuEAFDK4)。
1708年、バッハはミュールハウゼン市で行われる市参事会員交代式のためのカンタータ「神はいにしえよりわが王なり」BWV71を作曲し、同年2月4日の市参事会員交代式で初演しました。当時、ドイツでは市の有力者で構成する参事会メンバーが神の御前での交代式を執り行う際に、カンタータが演奏されており、本作もそのために作曲されました。このような事情から、本作は初演直後にミュールハウゼン市が印刷出版しており、結果としてバッハの生前に印刷譜が出版された唯一のカンタータとなりました。
23歳と若いころのバッハが作曲したものであるため、後年の作品と比べると素朴な作りですが、ミュールハウゼン市の公式行事で演奏されるため、トランペット3とティンパニからなるファンファーレ群、リコーダー2・オーボエ2・ファゴットからなる木管楽器群、弦楽器群の3群にオルガンと通奏低音という演奏規模が大きい作品となっています。歌われる内容は神を王として崇め、慈しみを求める詩篇第74篇が主題で、これに若干の聖句や自由詩が追加されています。
ヴィルヘルム・ヴィートル(ソプラノ)
クルト・エクヴィルツ(テノール)
ポール・エスウッド(アルト)
リョーヴェ・ヴィッサー(バス)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
テルツ少年合唱団
バッハ:カンタータ第70番「目覚め、祈り、心を備えよ(目を覚まして祈れ!祈りて目を覚ましおれ!)」BWV70
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=b5IrUCibns8)。
1723年、バッハがライプツィヒに着任した1年目を締めくくるカンタータとして作曲され、この年の三位一体節後第26日曜日(11月21日)に初演されたのが「目覚め、祈り、心を備えよ(目を覚まして祈れ!祈りて目を覚ましおれ!)」BWV70です。この曲は完全な新作ではなく、彼がヴァイマルにいた1716年に作曲した同名のカンタータBWV70aを改作したものです。旧作であるBWV70aは歌詞のみが残存しており、どのような曲だったか詳しいことは不明ですが、BWV70aが全6曲と推測されるのに対し、BWV70は4つのレシタティーヴォと第1部の終結コラールが追加されて全11曲になったことが判明しています。
初演日の聖句はマタイ福音書からキリストの再臨について述べた箇所であることから、本作のテーマは「最後の審判」を取り扱っており、レシタティーヴォは後に作曲された受難曲に通ずる激しい調子ですが、一方でアリアはバッハが若いころの作品らしい雰囲気が聴かれます。
カール・リヒター指揮
ミュンヘン・バッハ管弦楽団
バッハ:カンタータ第69番「わが魂よ、主を讃えよ」BWV69
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=3F7GmsKrgI4)。
1723年に作曲・初演されたバッハのカンタータ「わが魂よ、主を讃えよ」BWV69aは、曲全体で神への賛美を歌い、トランペット3本や管楽器、ティンパニが総出で演奏する豪華で祝祭的な作品となっています。
1748年、ライプツィヒで市参事会員の交替式が行われるのに伴い、バッハは祝祭的な作品であるBWV69aを改作し、交替式で演奏するためのカンタータとしました。改作にあたっては曲中のレチタティーヴォ2曲と終曲のコラールが新曲に差し替えられており、原曲とかなり異なっているため、新バッハ全集ではBWV69aの異稿という扱いとなって独立した分類番号が付されています。これが「わが魂よ、主を讃えよ」BWV69です。
ヴィルヘルム・ヴィートル(ソプラノ)
ポール・エスウッド(アルト)
クルト・エクヴィルツ(テノール)
ルート・ファン・デル・メール(バス)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
テルツ少年合唱団
バッハ:カンタータ第68番「かくも神は世を愛したまえり」BWV68
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=0vBk5J7XWBU)。
バッハのカンタータ第68番「かくも神は世を愛したまえり」BWV68は1725年に作曲され、同年の聖霊降臨節第2日にあたる5月21日に初演されました。この日には「ヨハネ福音書」から、ファリサイ派で最高法院の議員であったニコデモとイエスが論争し、イエスが「神は独り子(イエス)を与えたほど世を愛された」と語った箇所が朗読されており、このカンタータもその逸話に沿ってイエスが地上に生まれた意義を確認する内容となっています。
第1曲のコラール合唱は、ザロモ・リスコフ(1640 - 1689)が1675年に書いたコラール「かくも神は世を愛したまえり」の第1節が使われた大規模なもので、曲全体としても晴れやかで明るい曲調でまとめられています。
カール・リヒター指揮
ミュンヘン・バッハ管弦楽団
ミュンヘン・バッハ合唱団
バッハ:カンタータ第69番a「わが魂よ、主を讃えよ」BWV69a
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=2rvv2Esz4J8)。
バッハがライプツィヒの聖トーマス教会のカントル(トーマスカントル)に就任した1723年に作曲され、この年の三位一体主日後第12主日(日曜日)にあたる8月15日に初演されたカンタータ「わが魂よ、主を讃えよ」BWV69aは、この時期のバッハのカンタータには珍しく、トランペットとオーボエが各3本にティンパニまで動員した大規模な編成の作品です。本作は題名が示す通り、全体にわたって神を賛美する祝祭的な雰囲気が全体に満ちています。
その祝祭的な雰囲気のためか、後にバッハは最晩年の1748年、ライプツィヒ市参事会員交替式に演奏するため本作を大幅に改訂して演奏しており、こちらには「BWV69」の分類番号が付けられています。
キャサリン・フーグ(ソプラノ)
ロビン・タイソン(カウンターテナー)
クリストフ・ゲンツ(テナー)
ピーター・ハーヴェイ(バス)
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
モンテヴェルディ合唱団
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
バッハ:カンタータ第67番「イエス・キリストを憶えよ」BWV67
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=Mi9a16hoftg)。
1723年にライプツィヒ聖トーマス教会の音楽指導者(トーマスカントル)に着任したバッハは、翌1724年には「ヨハネ受難曲」BWV245の作曲及び聖金曜日(4月7日)の初演に力を入れる一方、その後の復活祭に演奏されたカンタータは旧作の再演や改作でしのいでいました。そして久々の完全新作カンタータとして4月16日に披露されたカンタータが「イエス・キリストを憶えよ」BWV67です。
この曲は復活祭の後の第1主日(日曜日)に演奏されることを念頭に「イエスの復活~弟子トマスの不信~トマスがイエスの復活を信じる」という筋立てとなっており、イエスの復活を祝う喜びを表す明るい曲調で一貫しています。また、この曲ではトランペットなどの金管楽器は使用されず、代わりにフラウト・トラヴェルソをはじめとする木管楽器の柔らかい響きが中心を占めるという特徴があります。
なお、本作の第6曲「平安、汝にあれ」は後に「小ミサ曲 イ長調」BWV234のグローリアに転用されました。
シギスヴァルト・クイケン指揮
ラ・プティット・バンド
バッハ:カンタータ第66番「よろこべ、汝らの心」BWV66
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=qFlTRAhCav8)。
全6曲からなるバッハのカンタータ「よろこべ、汝らの心」BWV66は、1724年の復活祭第2日にあたる4月10日にライプツィヒで初演されました。
ただ、この作品は完全な新作ではなく、バッハがケーテンにいた1718年にケーテン領主レオポルト公の誕生日を祝賀するために初演された世俗カンタータ「天はアンハルトの誉れと幸いを心にかけたまい」BWV66aの音楽を転用して作曲された、いわゆる「パロディカンタータ」です。
原曲であるBWV66aは全8曲で構成されていましたが、楽譜が失われて歌詞のみが遺されており、演奏は不可能となっています。しかし本作の作曲に当たってどう転用されたかはある程度判明しており、BWV66aの第1曲~第4曲がBWV66の第2曲~第5曲に、BWV66aの終曲(第8曲)がBWV66の第1曲に転用され、BWV66の終曲(第6曲)のみ新しく作曲されたと考えられています。
そのような作曲経緯のためか、本作は復活祭の福音書などとの関連が比較的薄く、原曲の祝祭的な気分をそのまま受け継いだかのような曲となっています。
アレックス・ポッター(アルト)
ユリウス・プファイファー(テノール)
ドミニク・ヴェルナー(バス)
ルドルフ・ルッツ指揮
バッハ財団管弦楽団
バッハ財団合唱団
バッハ:カンタータ第65番「彼らはみなシバより来たらん」BWV65
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=qhzr7EU6XS8)。
1724年1月6日に初演されたバッハのカンタータ第65番「彼らはみなシバより来たらん」BWV65は、「イエスがこの世に栄光を現した日」とされる1月6日(公現祭)に演奏するための作品です。
1月6日はカトリック・プロテスタントにおいては「幼子イエスの元に東方(シバ)の三博士が訪問して礼拝を行った日」とされており、当日はマタイによる福音書などからの文言(聖句)が朗読されますが、1724年は旧約聖書のイザヤ書の一節が採用されており、本作の歌詞もイザヤ書から一節が引用されています。
作品は全7曲から成り、イエスの降誕を東方の三博士が貢物を持って祝福するという流れに沿って、全体的に明るく喜ばしい雰囲気に満ちていますが、1月6日は12月25日から始まる降誕節の最後の日であることから、第2曲と第7曲は簡素なコラールで、祝い事で浮かれ気味な信者の気分を引き締めるという意図が込められています。
ダニエル・ヨハンセン(テノール)
マシュー・ブルック(バス)
ハンス=クリストフ・ラーデマン指揮
オランダ・バッハ協会管弦楽団
オランダ・バッハ協会合唱団
バッハ:カンタータ第64番「見よ、父なる神の大いなる愛を」BWV64
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=OzI1CImWAhU)。
バッハがライプツィヒに赴任した1723年に作曲されたカンタータ「見よ、父なる神の大いなる愛を」BWV64は、クリスマスの第3日にあたる12月27日に初演されました。ただ、この年の12月27日は使徒ヨハネの祝日とされたようで、全8曲からなる本作にはクリスマスから連想される祝祭的な雰囲気はなく、前半の曲はむしろ現世の虚しさを強調し、後半では対比する形でキリストによる救いを歌うことで、キリスト降誕の意味を深く思い起こさせるような曲想となっています。
本作がこのような構成になったのは、初演当日が使徒ヨハネの祝日であることに加え、この年のクリスマス第1日にBWV63、第2日にBWV40といった大規模な作品が立て続けに演奏されたため、合唱団の疲労を考慮して小編成による曲を作ったと考えられています。
マリア・ケオハネ(ソプラノ)
アレックス・ポッター(アルト)
ヤン・コボウ(テノール)
マシュー・ブルック(バス)
ラルス・ウルリク・モーテンセン指揮
コンチェルト・コペンハーゲン
バッハ:カンタータ第62番「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV62
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=sY0YKHw90dU)。
バッハが1714年に作曲したカンタータ「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV61(sm38613942)は
ルターによるコラール「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」が引用され、バッハのカンタータの中でも人気の高い作品です。それから10年後の1724年、バッハはこのコラールを引用した新たなカンタータを作曲しました。BWV61と同じコラールに基づくことから、こちらの作品もBWV61と同じ題名の「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV62となります。
BWV61のコラール引用が第1曲(序曲)のみであるのに対して、BWV62は全6曲にコラール全8節がすべて組み込まれており、よりコラールに密接した様式となっています。とはいえ、本作は人気作のBWV61と比べて演奏される機会は少なく、陰に隠れてあまり目立たない作品です。
デボラ・ヨーク(ソプラノ)
フランツィスカ・ゴットヴァルト(アルト)
ポール・アグニュー(テノール)
クラウス・メルテンス(バス)
トン・コープマン指揮
アムステルダム・バロック管弦楽団
アムステルダム・バロック合唱団
バッハ:カンタータ第61番「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV61
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=pLPSQMOFxbA)。
1714年、この年の待降節(イエス・キリストの降誕を待ち望む期間)の第1主日(日曜日)にあたる12月2日に初演されたバッハのカンタータ「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」BWV61は、バッハの初期カンタータの名作とされ、演奏機会の多い作品です。
この曲の特色として、第1曲が「フランス風序曲」の形式に拠っていることが挙げられます。フランス風序曲はフランスにおいて、歌劇が始まる前、国王が客席につくときに「王の入場曲」として演奏されていたもので、この形式を応用することで、教会歴の始まりである待降節を祝い、天の王の到来を喜び迎える曲となっています。
全5曲の歌詞の内容は、キリスト者の信仰心をイエスが降臨すべき神殿とみなし、信者一人一人にイエスを迎え入れる心構えを勧めるものです。
クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ)
イアン・チャールズ・ボストリッジ(テノール)
クリストファー・モルトマン(バス)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
アルノルト・シェーンベルク合唱団
バッハ:カンタータ第60番「おお永遠、そは雷のことば」BWV60
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=Sa0s8C4N8o4)。
1723年に初演されたバッハのカンタータ「おお永遠、そは雷のことば」BWV60は全5曲からなり、「恐れ」と「希望」を擬人化して、両者が対話するという一風変わった形式となっています。信仰心が足りず、死を恐れる「恐れ」(アルト)に対し、神を深く信ずる「希望」(テノール)が語り掛け、第4曲で「イエスの声」(バス)が「今より後、主にあって死ぬ人は幸いである」と語ることで「恐れ」にも救いがもたらされて、終曲のコラールで締めくくるという筋立てとなります。
ロビン・タイソン(アルト)
ジェイムス・ギルクリスト(テノール)
ピーター・ハーヴェイ(バス)
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
モンテヴェルディ合唱団
バッハ:カンタータ第59番「われを愛する者は、わが言葉を守らん」BWV59
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=0Oorxqthffo)。
バッハがライプツィヒの聖トーマス教会のカントルに就任してから約1年後の1724年、ライプツィヒで初の聖霊降臨祭の第1日にあたる5月28日に初演されたカンタータ「われを愛する者は、わが言葉を守らん」BWV59は、ヨハネによる福音書から、イエスが「わたしを愛する人は、わたしの言葉を守る」と言ったという故事に基づいて、神と聖霊の愛に感謝する歌詞が歌われます。
しかし本作は、残された歌詞から7曲必要なのに4曲しか作曲されておらず、しかも終曲(第4曲)がコラール合唱ではなくバスのアリアで、更にトランペットが通常編成(3本)より少ない2本であることから、専門家の間ではこれが完成形のカンタータなのか疑われています。
特に終曲がアリアであることは構成上致命的な問題があるとみなされ、通常は演奏時に終曲としてコラールを追加して全5曲とする対応がなされています。その対応は演奏者によって異なり、第3曲のコラールをそのまま使って歌詞だけ変更して歌ったり、他のカンタータからコラールを転用したりといった工夫がなされています。この動画では、コラール 「Gott, Heiliger Geist, du Tröster wert」を転用して終曲としています。
ジョアン・ラン(ソプラノ)
ヤン・ボルネル(アルト)
ヴァルター・シーゲル(テノール)
エッケハルト・アベーレ(バス)
ルドルフ・ルッツ指揮
バッハ財団管弦楽団
バッハ:カンタータ第54番「罪に手むかうべし」BWV54
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=tBwjv-QJhIk)。
バッハによって1714年に作曲されたと推測されるカンタータ「罪に手むかうべし」BWV54は、彼のカンタータの中でもかなり早い時期の作品で、アルトの独唱が3曲のみで合唱曲がないという極めて小規模な曲です。内容としては題名の通り「罪に立ち向かいなさい」というもので、第1曲の冒頭から不協和音が次々と展開する異様な構成になっています。これは、作曲当時のバッハは30歳になるかならないかという若さであることから、自身の作風を確立するためにあえて冒険的な作りにした実験作ではないかと考えられています。
マールテン・エンヘルチェス(アルト)
ラース・ウルリク・モルテンセン指揮
オランダ・バッハ協会管弦楽団
バッハ:カンタータ第50番「いまや、われらの神の救いと力と」BWV50
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=d6xz3xr3Sek)。
バッハの「いまや、われらの神の救いと力と」BWV50は分類上は「カンタータ」とされていますが、後世に伝わっているのは合唱曲が1曲のみです。この曲の歌詞はヨハネの黙示録の一節から、悪魔の竜と大天使ミカエルの戦いを記した箇所がそのまま歌詞として使われていること、そして1723年の大天使ミカエルの祝日(9月29日)に演奏されたカンタータの記録がないことから、このときにBWV50が演奏されたとする説が有力ですが、当時のカンタータが合唱曲1曲のみというのは考えにくいため「残りの曲は楽譜が失われた」「他のカンタータの間奏曲として使われた」など、様々な推測がなされています。
曲そのものは当時としては大規模な編成(二重合唱、弦楽、トランペット・オーボエ各3本、ティンパニ)による堂々たるもので、悪の竜に対するミカエルの勝利を称える合唱のフーガは聴きごたえがあります。
マリア・ケオハネ(ソプラノ)
マールテン・エンヘルチェス(アルト)
ベンジャミン・ヒューレット(テノール)
クリスティアン・イムラー(バス)
ヨス・ファン・フェルトホーフェン指揮
オランダ・バッハ協会管弦楽団・同合唱団
バッハ:カンタータ第46番「心して見よ、苦しみあるやを」BWV46
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=k_gyrnfrgEw)。
1723年に作曲され、同年8月1日に初演されたカンタータ「心して見よ、苦しみあるやを」BWV46
は、当日の福音章句がルカ福音書からのもので、イエスが受難の直前にエルサレムに入城したとき、
エルサレムの崩壊を予言したというエピソードであることを反映して、神の怒りを畏れる暗い曲調
でほぼ統一されており、終盤にイエスによる救いが示されるという流れになっています。
それを象徴するのが第1曲で、前奏曲とフーガの様式により、エルサレムの崩壊と神の怒りを痛切に
歌い上げています。この曲は、後に前奏曲の部分がミサ曲ロ短調の第9曲に転用されています。
また、全体を通じて2本のリコーダーが活躍するのも特徴的です。
マルクス・フォルスター(アルト)
トーマス・ホッブス(テノール)
マティアス・ヘルム(バス)
ルドルフ・ルッツ指揮
バッハ財団管弦楽団
バッハ財団合唱団
バッハ:カンタータ第44番「人々、汝らを除名すべし」BWV44
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=FFU_DsTiiKI)。
バッハが1724年に作曲し、5月21日に初演されたカンタータ「人々、汝らを除名すべし」BWV44は、第1曲で「人々はあなたがたを会堂から追放するでしょう」、第2曲で「あなたがたを殺す者がみな、そうすることで自分は神に奉仕しているのだと思う時が来ます」と歌われるように、曲全体が迫害の苦しみと耐乏を歌う厳しい曲想となっています。これは、初演された5月21日が復活祭後第6主日にあたり、ヨハネによる福音書からキリスト教徒が迫害される未来を予言する一節が朗読されたことに基づいて作曲されたことに拠っています。
バルバラ・シュリック(ソプラノ)
キャサリン・パトリアッシュ(アルト)
クリストフ・プレガルディエン(テノール)
ペーター・コーイ(バス)
フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮
コレギウム・ヴォカーレ
バッハ:カンタータ第40番「神の子の現れたまいしは」BWV40
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=02iRY_sXfLI)。
1723年、バッハはライプツィヒの聖トーマス教会における音楽指導者「トーマスカントル」に就任します。そして、その年の12月26日に初演されたのが、カンタータ「神の子の現れたまいしは」BWV40です。この日はクリスマスの翌日ですが、本作が初演された年は聖ステパノ(ステファノ)の記念日でした。
ステファノはギリシャ語を話すユダヤ人(ヘレニスト)の代表でしたが、ユダヤ教の指導者を論争で論破したため、ユダヤ人たち(ファリサイ派)に石打の刑で殺害され、キリスト教における最初の殉教者となった人物です。このことを踏まえ、ステファノの記念日に初演された本作は、クリスマス2日目の演奏ということで基本的には祝祭的性格を持ちながらも、全8曲中3曲がコラールであることからわかるように、より厳粛な雰囲気を持たせた曲となっています。
ルネ・ヤーコプス(アルト)
マリウス・ファン・アルテナ(テノール)
マックス・ファン・エグモント(バス)
グスタフ・レオンハルト指揮
レオンハルト・コンソート
ハノーヴァー少年合唱団
バッハ:カンタータ第38番「深き悩みの淵より、われ汝に呼ばわる」BWV38
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=zjHzIFWKPOA)。
バッハのカンタータ「深き悩みの淵より、われ汝に呼ばわる」BWV38は1724年に作曲され、同年の三位一体後第21主日である10月29日に初演されました。
この作品はルターが詩篇第130番に基づいた悔い改めのコラールに基づくもので、原曲のコラールの旋律が全6曲の随所に聴かれる「コラール・カンタータ」となっています。曲の内容は、重い病にかかった息子を嘆いてイエスに救いを求め、それにイエスが応えて奇跡を起こして病を治すといったものですが、題名にある「深き悩みの淵」という言葉そのままに、息子の病に悩んで奇跡を求める親の悲痛な感情を表現した暗い曲想が全体を支配しています。
キャロリン・サンプソン(ソプラノ)
ダニエル・テイラー(カウンターテナー)
マーク・パドモア(テノール)
ペーター・コーイ(バス)
フィリッペ・ヘレヴェッヘ指揮
コレギウム・ヴォカーレ・ゲント、同管弦楽団
バッハ:カンタータ第31番「天は笑い、地は歓呼す」BWV31
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=jC0zpZ0PypE)。
1714年、バッハはザクセン=ヴァイマル公国の宮廷オルガン奏者から楽師長に昇進し、その職務として月に1回カンタータを作曲・上演することとなりました。そして翌1715年に復活祭のためのカンタータとして作曲され、その年の復活祭初日である4月21日に初演されたのが「天は笑い、地は歓呼す」BWV31です。全9曲からなる本作第1曲のソナタや第2曲の合唱でわかるように、比較的古風な様式ながら管楽器がよく響く祝祭的でわかりやすく、イエスの復活を素直に祝う作品となっています。
ラファエル・ピション指揮
ピグマリオン
バッハ:カンタータ第25番「汝の怒りによりてわが肉体には全きところなく」BWV25
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=njVEgOVAUMY)。
1723年8月29日にライプツィヒで初演されたバッハのカンタータ「汝の怒りによりてわが肉体には全きところなく」BWV25は、当日の礼拝で読まれたルカ福音書の一節(らい病に侵された人々がイエスの奇蹟によって治癒する)に基づいており、最初は病気を表現した暗い曲調が続くものの、後半はイエスの奇蹟を思わせる明るい雰囲気になり、最後に「イエスは全ての病める者を救う」という賛美のコラールで締めくくられます。
音楽的には、ソプラノ・テノール・バスの独唱と4声合唱による全6曲の構成で、この頃に作曲されたバッハのカンタータの中では規模が大きいものの、レチタティーボとアリアが交互に続く標準的なカンタータといえます。
マリン・ハルテリウス(ソプラノ)
ジェイムス・ギルクリスト(テノール)
ピーター・ハーヴェイ(バス)
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
モンテヴェルディ合唱団
バッハ:カンタータ第24番「飾りなき心ぞ」BWV24
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=nnCL72x-JnA)。
1723年、ライプツィヒの着任したバッハは長大な2部構成によるカンタータを立て続けに2つ(BWV75、BWV76)作曲・初演しましたが、3つ目に作曲された「飾りなき心ぞ」BWV24は全6曲と、前2作の半分程度の作品となりました。
歌詞の内容は題名の「飾りなき心」こそが自分たちを神と人々の前で美しくする、と歌う第1曲に沿ったもので、全体的に「正しい心をもって生きなさい」「自分がしてもらいたいことを人にしてあげなさい」と諭すものとなっています。
音楽様式としては、普通なら冒頭に配置される合唱が中間の第3曲に配置され、その前後(第2、第4曲)をレチタティーボが、更にその前後(第1、第5曲)をアリアが挟み込み、最後の第6曲がコラールで締めくくられるという珍しい構造になっています。
ボグナ・バルトシュ(アルト)
ゲルト・テュルク(テノール)
クラウス・メルテンス(バス)
トン・コープマン指揮
アムステルダム・バロック管弦楽団、合唱団
バッハ:カンタータ第19番「いさかいは起れり(かくて戦起れり)」BWV19
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=PXg66t_K-QI)。
1726年に作曲され、大天使ミカエルの祝日にあたる9月29日にライプツィヒで初演されたバッハのカンタータ「いさかいは起れり」BWV19は、その祝日にちなんで、大天使ミカエルが悪魔の王サタンとされる竜と戦って勝利し、竜を天上から追い落としたという黙示録の話にちなんだ作品となっています。
全7曲のうち、前半4曲は竜を追い落としたミカエルと天の軍勢を称えるものですが、第5曲は信仰の道しるべとして「我と共に留まり給え、天使よ」と歌われるテノールのアリア、そして終盤の2曲では天使の案内で「死後に天上に向かわせてください」と歌われます。これらの中では第5曲が一番印象的で、全曲(約20分)の1/3にあたる7分弱の長大なアリアとなっています。
クルト・エクヴィルツ(テノール)
マックス・ファン・エグモント(バス)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
ウィーン少年合唱団
コルス・ヴィエネンシス
バッハ:カンタータ第18番「天より雨と雪降るがごとく」BWV18
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=zCyG0N_OLGk)。
1708年にザクセン=ヴァイマル公国の宮廷オルガニストとなったバッハは、それからしばらくの間カンタータを作曲しませんでした。しかし1713年、彼は久しぶりにカンタータを作曲します。それが第18番「天より雨と雪降るがごとく」BWV18です。
この作品で歌われるのは、ルカによる福音書から「種は神の言葉である」とイエスが説く話に基づくもので、豊かな実(信仰心)を結ぶために正しい心を持つ「良い土地」となるように人々に語り掛ける内容となっています。音楽様式としては、レチタティーヴォ(話すような独唱)を中心に据えて、アリアを織り交ぜつつ、コラールで締めくくるというバッハの教会カンタータの基本形になっていますが、この作品はそういった様式を採用した初の作品であり、バッハが試行錯誤しつつも新しいカンタータの形を作り上げた重要な作品とされています。
なお、1713年にヴァイマルで初演されたときはヴィオラ4という地味な編成でしたが、後にライプツィヒで再び演奏された際にリコーダー2が追加されており、現在ではこのライプツィヒ版がよく演奏されています(この動画もライプツィヒ版の演奏です)。
ヌリア・リアル(ソプラノ)
櫻田亮(テノール)
ドミニク・ヴェルナー(バス)
ルドルフ・ルッツ指揮
バッハ財団管弦楽団・合唱団
バッハ:カンタータ第12番「泣き、嘆き、憂い、慄き」BWV12
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=YZQ3pPLGwvY&t=634s)。
1714年、バッハはザクセン=ヴァイマル公国の楽師長に昇進し、月に1曲のペースでカンタータを作曲するようになります。その2曲目に作曲され、4月22日に初演されたのが「泣き、嘆き、憂い、慄き」BWV12です。
初演の日は復活祭後の第3主日(日曜日)で、この日の福音章句は、イエスが弟子たちに「しばらくすると、あなたがたはもうわたしを見なくなるが、またしばらくすると、わたしを見るようになる。」と述べ、自らの死と復活を予告したという話であり、全7曲のカンタータの内容もこれに沿って、前半3曲は悲しみを、第4曲を挟んで後半3曲は喜びを表す曲想となっています。
曲の様式はバッハの初期カンタータの1つとなっていますが、この作品の白眉は第2曲「泣き、歎き、憂い、 怯え」で、後にミサ曲 ロ短調BWV232の「十字架につけられ」に転用されており、本作よりミサ曲 ロ短調の1曲としての方が有名になっています。
シギスヴァルト・クイケン指揮
ラ・プティット・バンド
スタンチッチ:カンタータによる4つの前奏曲(BWV106,BWV18,BWV12,BWV31)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=bqDUUPjdQGc)。
スヴェティスラフ・スタンチッチ(1895 - 1970)はクロアチア出身のピアニスト・作曲家ですが、音楽教師としての評価が高く、作曲家のイーヴォ・マチェク、ピアニストではブランカ・ムスリン、ウラジミール・クルパン等を育成したことが知られています。
スタンチッチは1920~22年の間にブゾーニの下で作曲を学んでおり、その学習の成果の1つとして1922年に作曲したのが「カンタータによる4つの前奏曲」です。これはバッハのカンタータ4曲(BWV106,BWV18,BWV12,BWV31)の第1楽章をピアノ独奏用に編曲したもので、バッハの造詣が深かったブゾーニに捧げられました。作品は各曲ともブゾーニの影響が強く、重厚な和音の響きはブゾーニが編曲したバッハの「シャコンヌ」を連想させる佳作といえます。
なお、この動画で本作を演奏しているRanko Filjak(ランコ・フィリャク? 1927 - 1983)はスタンチッチに師事したクロアチアのピアニストです。
Ranko Filjak(ピアノ)
バッハ:カンタータ第4番「キリストは死の縄目につながれたり」BWV4
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=bH15Bm-M9WI&t=540s)。
バッハの教会カンタータ「キリストは死の縄目につながれたり」BWV4は、彼が20代のときに作曲したと考えられており、バッハがカンタータのジャンルにおいて優れた才能を示した最初期の作品とされています。一説によれば作曲年は1707年頃で、バッハがミュールハウゼンで就職活動を行う際、自分の力量をアピールするために相当に力を入れて作曲されたといわれています。
本作は復活祭に演奏されるためのカンタータで、全8曲の調性は全てホ短調で統一されており、これはホ短調の楽譜がシャープ(♯)1つで表示されることから、シャープを十字架に見立てて「天高く掲げられた十字架」を表したという解釈が有力視されています。声楽のない序奏の第1曲以外はマルティン・ルター作のコラールを編曲したコラール変奏曲(第1曲にはコラールの旋律が部分的に使われている)という構成が特徴となっており、全ての曲にコラールの旋律が含まれるバッハのカンタータは、本作が唯一とされています。
ヘルムート・リリング指揮
シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム