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バッハ:カンタータ第165番「おお 聖なる霊と水の洗礼よ」BWV165
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=SqNVIF2Lkgo)。
バッハのカンタータ「おお 聖なる霊と水の洗礼よ」BWV165は1715年の作品で、この年の三位一体節で
ある6月16日に初演されたと推測されています。
この日の福音書章句はヨハネによる福音書から、ファリサイ派で最高法院の議員であったニコデモがイエ
スと神の国について問答をしたことが取り上げられており、本作の歌詞もその内容に沿って「水と霊によ
って生まれなければ、神の国に入ることはできない」、つまり曲名にもある「洗礼」を主題にしており、
全体的な内容としては、古い罪深い自分が死んで、新しい自分が生まれるという、苦しみと喜びについて
歌われています。
音楽様式としては、この頃のヴァイマルでのバッハのカンタータに見られる、独唱と室内楽的な伴奏で構
成される小規模な様式で構成されていますが、全6曲が多彩な様式で作曲されており、演奏規模が小規模
ながら単調さを感じないよう工夫がなされています。
マリー・ルイーゼ・ヴェルネブルク(ソプラノ)
エルヴィラ・ビル(アルト)
コリン・バルザー(テノール)
ドミニク・ヴェルナー(バス)
ルドルフ・ルッツ指揮
バッハ財団管弦楽団
バッハ財団合唱団
バッハ(フェインベルク編):トリオソナタ第5番 ハ長調BWV529より「ラルゴ」(ピアノ独奏版)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=IoW8nhcJick)。
ウクライナ出身のユダヤ系ピアニスト・作曲家であるサムイル・フェインベルク(1890 - 1962)は
バッハ作品の演奏に熱心であったことが知られており、クラヴィーア作品だけに飽き足らず、オル
ガン作品のピアノ用編曲版も作成しています。
この動画はそういった編曲作品の1つである、トリオソナタ第5番 ハ長調BWV529より「ラルゴ」の
ピアノ独奏版です。
Ivan Kivelidi(ピアノ)
バッハ:カンタータ第163番「各々に各々のものを」BWV163
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=1v3qC_FdzYI)。
バッハのカンタータ「各々に各々のものを」BWV163は1715年、この年の三位一体節後第23日曜日である
11月24日に初演されました。
初演に先立つ8月1日、バッハの主君ワイマール公の甥でヨハン・エルンスト公子が病没し、この服喪期間
中はカンタータの演奏が休止されていました。本作は、公子の服喪が明けた直後に初演されたものです。
ヨハン・エルンストはバッハの教育もあって、若くして音楽の才に恵まれていましたが、19歳の若さでこ
の世を去りました。この日の福音書章句はファリサイ派の悪意ある質問をかわすイエスの答え、いわゆる
「神のものは神に、カエサルのものはカエサルに」で、それにちなんで本作の歌詞は「病没した公子が神
のもとに帰った」という意味を持たせていると推測されます。
音楽様式としては、合唱は最後にだけ使われており、全6曲の小規模なカンタータです。しかしながら各曲
には明確な特徴があり、内容が充実している若いバッハの実験的作品といえます。
アーリーン・オジェー(ソプラノ)
ヘレン・ワッツ(アルト)
アダルベルト・クラウス(テノール)
ニクラウス・トゥーラー(バス)
ヘルムート・リリング指揮
シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム
シュトゥットガルト・ゲッヒンゲン聖歌隊
ジョバンニ・ガブリエーリ:4声のカンツォン 第2番/Giovanni Gabrieli: Canzon seconda a 4, Ch.187
MIDIデータ制作者:
Werner Icking (2001)
http://www.icking-music-archive.org/ByComposer1/G.Gabrieli.php
※音色をチェンバロに変更して使用
収録音律:
1. 12等分平均律
2. キルンベルガー第1法
3. キルンベルガー第2法
4. P.C.1/6コンマ・ミーントーン
5. S.C.1/4コンマ・ミーントーン
6. S.C 2/7コンマ・ミーントーン
使用音源:Pianoteq v6.7.3 C.Grimaldi Harpsichord A+B
C=523.25Hz (A=440Hzの時の平均律のC音基準)
ストレッチ設定:1.00 (ストレッチ無し)
古典音律引用元:
・オルガンの歴史とその原理 平島達司 神戸松蔭女子学院(短期)大学学術研究会
・長嶋洋一 音律について (1993年) http://www.nagasm.org/ASL/temper/index.html
・Wikipedia 「中全音律」 https://ja.wikipedia.org/wiki/中全音律
バッハ:インヴェンションとシンフォニア BWV 772~801(ニコラーエワ)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=_bL7oyuqEwA)。
旧ソ連におけるバッハのピアノ演奏のスペシャリストといえば、タチアナ・ニコラーエワ
(1924 - 1993)の名前を挙げる人は少なくないかと思います。
彼女の弾くインヴェンションとシンフォニアは「活動的な長調の曲と静謐な短調の曲」と
いうメリハリの効いた、それでいてバッハが楽譜に書いた音をきちんと再現していると感
じられる演奏で、間違いなくバッハ作品の最高の解釈者の1人であることを理解できるもの
となっています。
タチアナ・ニコラーエワ(ピアノ)
バッハ(レーガー編):パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582(4手ピアノ版)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=Q_7ynH-iD1w)。
マックス・レーガーはバッハの作品を多数ピアノ演奏用に編曲したことで知られています。
その中にはパッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582も含まれており、彼はこれを4手ピアノ版
に編曲しています。
ピアノ・デュオ・タカハシ・レーマン
バッハ(ストコフスキー編):小フーガ ト短調 BWV578
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=LHMJFhJNycM)。
指揮者レオポルド・ストコフスキー(1882 - 1977)はバッハの多数の作品を管弦楽用に編曲した
ことで知られています。それらのうち、有名な編曲の1つである小フーガ ト短調 BWV578の管弦
楽版です。
レオポルド・ストコフスキー指揮
管弦楽団
バッハ:フランス組曲 BWV 812~817(ユアン・シェン)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=zmEa7KX6D00)。
海外において「中国人で最高のバッハの解釈者」と高く評価されているピアニスト、
ユアン・シェン(Yuan Sheng)の演奏による、バッハのフランス組曲全曲です。
ユアン・シェン(ピアノ)
バッハ:カンタータ第155番「わが神よ、いつまで、ああいつまでか」BWV155
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=5uKjvD6FZNo)。
バッハのカンタータ「わが神よ、いつまで、ああいつまでか」BWV155は1716年、この年の顕現節
後第2日曜日にあたる1月19日に初演されました。この日の福音書章句は「酒がなくなって困ってい
るところに奇蹟により水がワインに変わって事なきを得た」というもので、この逸話に基づいて、
歌詞では果てしない苦悩から、やがて苦悩が終わる時への希望、やがて重荷がおろされ、神の元に
飛び込んでゆく喜びといった物語が歌われています。
音楽様式としては、レシタティーヴォとアリアが交互に2曲ずつ、そしてコラールの全5曲からなる
簡素なものですが、第2曲のアルトとテノールのデュエットによるアリアではファゴットに難しいソ
ロパート(通常の現代楽器では出せない低い音を含む)を吹かせるなど、カンタータに新風を呼び
込もうとするバッハの意欲的な試みがうかがえ、バッハのカンタータを研究するうえで注目すべき
作品となっています。
ユリア・ノイマン(ソプラノ)
マーゴット・オイツィンガー(アルト)
ユリウス・プファイファー(テノール)
ラファエル・ユート(バス)
ルドルフ・ルッツ指揮
バッハ財団管弦楽団
バッハ:イギリス組曲 BWV 806~811(ピーター・ウォッチョーン)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=gGYjqVT3wT4)。
オーストラリア出身のチェンバロ奏者ピーター・ウォッチョーン(Peter Watchorn 1957- )の
演奏による、バッハのイギリス組曲全曲です。
ピーター・ウォッチョーン(チェンバロ)
バッハ:パルティータ第6番 ホ短調 BWV830(アナトリー・ヴェデルニコフ)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=QV89FBujGIg)。
20世紀を代表するロシアのピアニストの1人であったアナトリー・イヴァノヴィチ・
ヴェデルニコフ(1920 - 1993)は、バロック音楽から現代音楽にいたるまで幅広い
レパートリーを有しており、特に現代音楽作品の演奏録音を積極的に行ったことで
知られていますが、一方でバッハの作品でも優れた演奏録音を遺しました。
その1つがパルティータの全曲録音で、一音一音をくっきりと浮かび上がらせて作品
の意図するところを鮮明に聴かせるヴェデルニコフの演奏は、飽きることなく何度
でも聴きたくなります。
アナトリー・ヴェデルニコフ(ピアノ)
バッハ:カンタータ第154番「いと尊きわがイエスは見失われぬ」BWV154
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=-NyKKhEqPcs)。
1724年1月9日(顕現祭後第1日曜日)、バッハのカンタータ「いと尊きわがイエスは見失われぬ」
BWV154が初演されました。この日の礼拝では、ルカ福音書から「12歳のイエスがエルサレムに詣
でた際に両親とはぐれ、両親は八方手を尽くしてイエスを捜し、神殿で学者と問答しているイエス
を発見する。両親はイエスを叱責するが『父(である神)の傍らに子がいることがなぜ分からない
のですか』とイエスは反論する」という福音書章句が選ばれました。本作の歌詞はこの逸話から、
信仰の拠り所となるイエスを失った人間の不安と再び見いだし得たことの喜びを歌い、最後に「も
う離すことはない」と誓いを述べる内容になっています。
音楽様式においては、新年が明けた直後で参加する団員が少ない時期の演奏であることをバッハが
考慮して、曲数は全8曲と多いものの1曲の演奏時間は短いうえに独唱者主導で歌詞が歌われ、伴奏
もオーボエ・ダモーレ2本と弦楽器・通奏低音およびチェンバロという小規模な編成になっており、
バッハのカンタータの中では全体的に地味な作品といえます。
アン・マレイ(アルト)
アルド・バルディン(テノール)
ヴァルター・ヘルトヴァイン(バス)
ヘルムート・リリング指揮
シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム
バッハ:6つのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ BWV1014~1019
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=rnZ42rP0fKI)。
バッハが作曲したヴァイオリンのためのソナタというと、普通は無伴奏ヴァイオリン・ソナタを
連想すると思いますが、彼はヴァイオリンとチョンバロのためのソナタも6曲作曲しています。
バロック時代の二重奏におけるチェンバロは、しばしば通奏低音の演奏楽器として相方の独奏楽
器を目立たせるため控えめな響きであることが多いですが、バッハはチェンバロのパートを独奏
楽器に劣らず重視しており、知名度こそ無伴奏ソナタに劣るものの、ヴァイオリンとチェンバロ
が対等に音色を響かせる優れた作品であることに変わりはありません。
後世のヴァイオリン・ソナタがベートーヴェンの作品を筆頭に、ヴァイオリンとピアノを対等な
立場に置いたことを考えると、バッハのソナタの方向性は時代を先取りするかのようです。
エムリン・ナイ(ヴァイオリン)
ピーター・ウォッチョーン(チェンバロ)
バッハ:カンタータ第153番「見たまえ、御神、いかにわが敵ども」BWV153
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=TuAqhuHl0so)。
バッハのカンタータ「見たまえ、御神、いかにわが敵ども」BWV153は、1723年末~1724年
1月初旬にかけてのクリスマスシーズンに初演されたカンタータの1つで、1724年1月2日(新
年後第1日曜日)に初演されました。
本作は合唱が単純な4声コラール3曲のみ、伴奏も弦三部と通奏低音のみ、管楽器やソプラノ
はなしという簡素な構成で演奏されます。これは、年末年始のクリスマスシーズンにバッハ
が新作カンタータを次々に初演したため、トマス教会合唱団と管楽器奏者の疲労が蓄積する
ことを考慮し、団員を休ませるためにあえて少人数で演奏可能な曲を作曲したとされていま
す。
この日の福音書章句はマタイによる福音書から、ヘロデ王がベツレヘム周辺で2歳以下の男の
子を虐殺させた話がとりあげられていることから、本作の歌詞にはクリスマスや新年の祝賀
気分はなく、ヘロデによる嬰児虐殺の場面から、キリスト教徒が耐えるべき試練について歌
われます。
Stefan Rampf(アルト)
クルト・エクウィルツ(テノール)
トーマス・ハンプソン(バス)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
テルツ少年合唱団
バッハ:カンタータ第152番「出で立て、信仰の道に」BWV152
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=p7h3NlIAVVo)。
バッハのカンタータ「出で立て、信仰の道に」BWV152は1714年に作曲され、同年の降誕節後
第1日曜日にあたる12月30日に初演されました。
本作の歌詞の中心には「石(Stein)」という単語が置かれています。これは「隅のかしら石」
「つまずきの石」というキリスト教の教えに基づき、救い主は神がこの世に置いた「石」であ
るとして、それに依り頼む者にとっては動かぬ基礎となるが、逆に信仰の無い者はそれに躓く
と説き、それに躓かないように正しく信仰の礎とするようにと歌っていきます。
音楽様式としては、本作には後のコラール・カンタータのような合唱がなく、アリアとレチタ
ティーヴォだけでできている室内楽カンタータで、ヴァイマル時代の作品に特徴的な器楽合奏
曲が冒頭に置かれています。これは初演日がクリスマスという大規模な催しが終わった直後で、
祝祭的な気分が収まってきた頃に、居住まいを正して改めて神と向き合うという意図で構成さ
れているためと思われます。
Christoph Wegmann(ソプラノ)
トーマス・ハンプトン(バス)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
テルツ少年合唱団
バッハ:カンタータ第148番「その御名にふさわしき栄光を」BWV148
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=C44qiMunmRI)。
バッハのカンタータ「その御名にふさわしき栄光を」BWV148は自筆譜が遺されておらず、最も
古い楽譜が18世紀後半の筆写譜であるため、正確な作曲年代はわかっていません。ただ、本作の
歌詞の内容が三位一体節後第17日曜日の福音章句に対応しており、この日に初演される目的で作
曲されたことはほぼ確実と見られています。また、歌詞の語句が1725年に出版された台本に基づ
くことから、バッハがライプツィヒに着任した後の1723年か1725年の該当祝日に演奏するために
作曲された(1724年の該当祝日はBWV114が演奏されたため除外)と推測されます。
当日の福音章句は安息日に病人を癒し、形式にこだわるファリサイ派を非難するイエスを描いた
ものですが、本作の歌詞は「安息日」「安らぎの場所」というような表象をあれこれ取り上げつ
つ、「最後の時には神の大いなる安息日の宴席に招かれたい」といった、単純に安息日を讃える
内容になっています。
全6曲のうち、冒頭曲はトランペットがリードする、喜びに満ちた合唱曲で、その後はテノールと
アルトによるアリアとレチタティーヴォが交互に続きます。終曲のコラールは歌詞の指定があり
ませんが、これは筆写譜の不備によるもので、新バッハ全集では作者不詳のコラール「私の愛し
い神に」の第6節が指定されています。
ポール・エスウッド(アルト)
クルト・エクウィルツ(テノール)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
テルツ少年合唱団
ヘンデル パッサカリア ト短調
2011年のピアノ発表会です。
手が壊れる前の演奏で最もピアノに情熱を持っていたときでした。演奏ミスが多く(一部弾き直しもありますが苦笑)とても感情込めて演奏しました。
このヘンデルのパッサカリアト短調は、バロック時代を象徴するようなメロディです。
パッサカリアはバロック音楽の楽曲の一形式で3拍子系のイタリアの舞曲が起源で,シャコンヌに近い一種の変奏曲です。
J.S.バッハのオルガン曲《パッサカリア》やブラームスの《交響曲第4番》終楽章は有名です。
バッハ(アンドレアス・フィッシャー補筆):幻想曲とフーガ ハ短調 BWV562
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=jApwpBr3GuM)。
バッハが数多く作曲したオルガン作品の1つである「幻想曲とフーガ ハ短調」BWV562は、
フーガの楽譜が27小節までで途切れて未完となっているため、通常は完成版が伝わる前半
の幻想曲のみを演奏する場合が多い一方、未完のフーガを補筆して「幻想曲とフーガ」の
形で演奏する事例も少数ながらあります。
この動画では、ドイツのオルガン奏者・指揮者であるアンドレアス・フィッシャー(1966 -)
がフーガを補筆し、フィッシャー自身の手で演奏しています。
アンドレアス・フィッシャー(オルガン)
バッハ:フーガ ハ短調 BWV562(未完)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=6_B5ZItANe4)。
1745年、バッハは過去(おそらくバッハがヴァイマルで宮廷オルガニスト兼宮廷楽師を務めた
1708~1717年の間)に作曲した「幻想曲 ハ短調」BWV562(sm41144565)に新たに作曲し
たフーガを追加して「幻想曲とフーガ ハ短調」BWV562としました。しかし、現存する最古の
楽譜ではフーガは最初から27小節までしか書かれておらず、未完成となっています。
専門家の研究によると、その楽譜はバッハの自筆譜ではなく、親族か弟子が筆写したものとさ
れています。一方でフーガの様式はバッハ後期の作品にふさわしい完成度であることから、お
そらくバッハ自身はこのフーガの作曲を完結させたものの、その筆写が何らかの事情で中断さ
れ、その後にバッハの自筆譜が失われたため未完の状態で後世に伝わったと考えられています。
この動画では最古の楽譜通り、27小節で演奏が中断されています。
マルティン・リュッカー(オルガン)
バッハ:幻想曲 ハ短調 BWV562
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=09NpI_KHecM)。
1708年、バッハはザクセン=ヴァイマル公国の領主ヴィルヘルム・エルンスト公の宮廷
オルガニスト兼宮廷楽師となります。それから契約上のトラブルで解任される1717年ま
での間に、バッハは数多くのオルガンのための作品を作曲しました。
そういった作品の1つが「幻想曲 ハ短調」BWV562です。知名度は他の有名な作品の陰に
隠れがちですが、曲全体を覆う静謐な響きは本作の美点であり、教会のオルガンで演奏さ
れるにふさわしい作品となっています。そのためか、本作は2022年9月22日のエリザベス
2世の国葬において、ウエストミンスター寺院のオルガンによって演奏されました。
なお、本作は後の1745年になって、おそらくバッハの親族か弟子の筆写によってフーガ
(sm41145290)が追加されましたが、そのフーガは27小節で途切れて未完となっていま
す。このため、この動画のように完成している幻想曲のみを演奏するのが一般的ですが、
フーガを補筆して「幻想曲とフーガ」の形にして演奏する事例もあります。
マルティン・リュッカー(オルガン)
バッハ:組曲(パルティータ) ハ短調 BWV997(ラウテンヴェルク演奏)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=XYsAK6ToN4g)。
現在ではリュートで演奏されることが多いバッハの組曲(パルティータ)ハ短調 BWV997には、実
は2つの版が存在しています。まず1738~41年にラウテンヴェルク(リュートで用いられるガット
弦が張られたチェンバロ)での演奏のための第1版が作られ、その後にリュート演奏のために編曲
された第2版が作られました。このうち、第2版はバッハ自身が編曲を手掛けたわけではなかったと
の説が有力視されています。
実際、バッハはリュートの演奏には堪能ではなく、チェンバロのストップ操作によってリュート風
の響きを楽しんでいたと推測されています。このことから、最近では本作をラウテンヴェルクによ
り演奏することが増えているようです。
ピーター・ウォッチョーン(ラウテンヴェルク)
バッハ:カンタータ第144番「おのがものを取りて、行け」BWV144
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=V_v7PUC7Dxs)。
カンタータ「おのがものを取りて、行け」BWV144は1724年にバッハが作曲し、同年2月6日
の七旬節の礼拝において初演されました。
この日の礼拝ではマタイ福音書から「葡萄畑の労働者の喩え」が述べられました。これは、葡
萄畑で一日中働いた者と、日暮れ前に呼び寄せた者に、主人が等しい日当を支払ったため労働
者が不平を言い、これに対して主人は彼との契約を守りつつ、僅かでも働いてくれた者にも等
しく報いたいと願ったことを打ち明け、その嫉妬心を厳しく諌めたという話で、カンタータは
この話に沿って「神の真意を信じて信仰を貫きなさい」といった歌詞が歌われます。
音楽様式としては、オーボエ2本と弦楽器・通奏低音という必要最小限の編成により、1724年
のバッハのカンタータの中では、極めて地味な伴奏が付いた小規模な作品となっています。
このことから本作の演奏機会は多くないうえ、作風がバッハらしからぬという理由で一時は偽
作説が唱えられるほどで、それほど評価が高くありません。なお、本作はバッハの自筆による
総譜が遺されており、現在ではバッハの真作とする意見が優勢になっています。
アンスガル・プファイファー(ソプラノ)
ポール・エスウッド(アルト)
クルト・エクヴィルツ(テノール)
グスタフ・レオンハルト指揮
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント
レオンハルト・コンソート
ハノーヴァー少年合唱団
バッハ:カンタータ第143番「わが魂よ、主を頌め讃えよ」BWV143(偽作?)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=IAkxGNY1hI8)。
バッハ作のカンタータとされる「わが魂よ、主を頌め讃えよ」BWV143は、バッハの死後の
筆写譜でしか遺されておらず、正確な作曲時期も不明です。歌詞の内容は新年を祝うもので
あることから新年用のカンタータと推測されます。
全7曲からなる本作はホルンとティンパニが派手に活躍して、晴れやかで明るい雰囲気がある
一方、合唱の扱いは単純で、バッハ作品特有の転調や複雑な和声や凝った対位法の部分がな
いため、ごく初期の作品と推測する意見があるほか、偽作とする説もあります。
ロジャー・セリシウス(ソプラノ)
クルト・エクヴィルツ(テノール)
マックス・ファン・エグモント(バス)
グスタフ・レオンハルト指揮
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント
レオンハルト・コンソート
ハノーヴァー少年合唱団
バッハ:前奏曲とフーガ ホ短調 BWV533
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=vv6tBa5bbxs)。
1703年6月、アルンシュタットの新教会(現在は「バッハ教会」と呼ばれる)に新しい
オルガンが設置され、その試奏者に選ばれた18歳のバッハは優れた演奏を披露し、その
まま同年8月には同教会のオルガン奏者に就任しました。バッハがアルンシュタットの
オルガン奏者だったのは1707年までですが、この時期にバッハは本格的な作曲活動を開
始したとされ、一説によると有名な「トッカータとフーガ ニ短調」BWV 565がこの頃
に作曲されたといわれています。
そういったバッハの初期作品の1つが前奏曲とフーガ ホ短調 BWV533で、二十歳になろ
うとするバッハがアルンシュタット在任中にディートリヒ・ブクステフーデの演奏に学
んだ経験を自作に生かそうと試行錯誤する姿勢が垣間見える初期作品となっています。
ウルフ・ノルベルグ(オルガン)
バッハ:カンタータ第140番「目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声」BWV140
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=DqZE54i-muE)。
バッハのコラール・カンタータの中でも高く評価される「目覚めよと、われらに呼ばわる
物見らの声」BWV140は1731年に作曲され、この年の三位一体主日後第27主日である11月
25日に初演されました。
三位一体主日後第27主日、つまり三位一体主日より27番目の日曜日は暦の関係で復活節が
3月26日以前に繰り上がった年にしか現れません。バッハがライプツィヒにいたころにこの
祝日が存在した年は1731年と1742年の2回だけで、1723年に着任してから8年後の1731年
に、ようやくバッハはこの祝日にちなんだカンタータを作曲することとなりました。
この日はマタイによる福音書から、花婿の到着を待つ花嫁のたとえにより、神の国の到来
はいつ来るかわからないので常に備えるよう説く逸話が章句となっており、本作もこの章
句に沿って、真夜中に物見らの声を先導として到着したイエスが、待ちこがれる魂との喜
ばしい婚姻へと至る情景を描いたものとなっています。
音楽様式としては、全7曲からなる本作の基礎として、フィリップ・ニコライのコラールが
第1曲、第4曲、第7曲に用いられており、特に第4曲のテノールによるコラールは、後にオ
ルガン独奏用に編曲されて「シューブラー・コラール集」の第1曲に取り入れられ、単独の
オルガン曲としても有名になっています。
マリア・ケオハナ(ソプラノ)
ティム・ミード(アルト)
ダニエル・ヨハンセン(テノール)
マシュー・ブルック(バス)
ヨス・ファン・フェルトホーフェン指揮
オランダ・バッハ協会管弦楽団
オランダ・バッハ協会合唱団
バッハ(ブゾーニ編):前奏曲とフーガ ホ短調 BWV533(ピアノ独奏版)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=01Ty_GY0cEY)。
1704年頃にオルガン独奏のために作曲されたと推定されるバッハの初期作品の1つである
前奏曲とフーガ ホ短調 BWV533を、ブゾーニが編曲したピアノ独奏版です。
サンドロ・イーヴォ・バルトリ(ピアノ)
バッハ:カンタータ第138番「汝なにゆえにうなだるるや、わが心よ」BWV138
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=ProeL6tKzxw)。
バッハのカンタータ「汝なにゆえにうなだるるや、わが心よ」BWV138は1723年、
三位一体節後第15日曜日である9月5日に初演されました。この日はマタイによる福
音書から「日々の思い悩みは無益であり、天の父のなさることを常に信頼せよ」と
いった説教がなされており、本作もその内容に沿った作者不詳のコラール「汝なに
ゆえにうなだるるや、わが心よ」が引用されています。
音楽様式としては、全7曲のうち第1、3、7曲でコラールが引用され、特に第1、3曲
ではコラールを歌う合唱とソロのレシタティーヴォを組み合わせており、翌年以降
にバッハが量産するコラール・カンタータの様式を先取りする実験がなされたと評
価されています。
なお第5曲のバスのアリアは、後にミサ曲 ト長調 BWV236の第3曲「Gratias」に転
用されました。
ジギスヴァルト・クイケン指揮
ラ・プティット・バンド
バッハ:カンタータ第136番「神よ、願わくばわれを探りて」BWV136
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=aGbPXyu5F28)。
バッハのカンタータ「神よ、願わくばわれを探りて」BWV136は1723年、この年の
三位一体節後第 8日曜日である7月18日に初演されました。この日はマタイによる
福音書から、イエスが「偽預言者に注意しなさい」と説いた逸話が章句に選ばれて
おり、全6曲からなる本作もその逸話に沿って「偽預言者のみならず全ての人は原
罪を背負っていて不浄であるが、イエスの傷や血潮によって原罪はあがなわれた。
イエスの血潮は清浄である」といった内容の歌詞が歌われます。
音楽様式としては簡素ですが、合唱曲に始まり、アリアとレチタティーヴォを挟ん
で、終曲をコラールで締めくくるという、典型的なバッハのコラール・カンタータ
です。また本作は1723年の初演ですが、それ以前に作曲された別作品から曲が転用
された可能性が、残された資料から指摘されています。
なお第1曲は緻密な合唱フーガとなっており、この曲は後にミサ曲 イ長調 BWV234
の終曲「Cum Sncto Spiritu」にも使われています。
マルクス・フォルスター(アルト)
ヨハネス・カレシュケ(テノール)
エッケハルト・アベーレ(バス)
ルドルフ・ルッツ指揮
バッハ財団管弦楽団
バッハ財団合唱団
バッハ:カンタータ第132番「道を備え、大路を備えよ」BWV132
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=tRA6Q1HBnFA)。
バッハのカンタータ「道を備え、大路を備えよ」BWV132は1715年に作曲され、
同年の待降節第4日曜日である12月22日にヴァイマルで初演されました。
「待降節(Advent)」はイエス・キリストの降誕を待ち望む期間のことで、儀
式の上ではクリスマスを準備する期間となります。この時期に披露された本作
は、洗礼者ヨハネの記事に基づき、間近に迫った救世主の降臨を準備する意味
が歌詞で歌われます。
音楽構成には小編成の室内楽と独唱が中心となる全6曲の小規模な作品で、合唱
も終曲(第6曲)のみとなっていますが、現存する資料には終曲の楽譜がないた
め、同じ歌詞によるBWV164の終結コラールを演奏するのが習慣となっています。
なお、後にバッハはライプツィヒに赴任しますが、そこでは待降節期間中は第1
日曜日以外にカンタータは演奏されなかったため、第4日曜日のために作曲され
た本作はバッハの生前には再演されることはありませんでした。
カール・リヒター指揮
ミュンヘン・バッハ管弦楽団
バッハ:カンタータ第131番「主よ、深き淵よりわれ汝を呼ぶ」BWV131
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=2Xd5vY6NM80)。
1707年、21歳のバッハはミュールハウゼンにある聖ブラジウス教会のオルガン奏者募集に応募し、
試験演奏で見事な腕前を示して就任することとなりました。しかし、彼が就任する直前の5月末に
ミュールハウゼンで大火が発生し、聖ブラジウス教会周辺も被災してしまいます。そして7月ごろ、
ミュールハウゼンにあるもう1つの教会である聖マリーア教会の牧師は、大火後の悔い改めの礼拝
に演奏するためのカンタータの作曲をバッハに依頼しました。カンタータ「主よ、深き淵よりわれ
汝を呼ぶ」BWV131は作曲・初演がいつごろなのかを示す資料が残っていない作品ですが、おそら
くこの依頼に応じて作曲され、1707年中に初演されたと考えられており、この作品の作曲・初演
によって、バッハはミュールハウゼンでの音楽活動を始めたと思われます。
本作の歌詞は詩篇第130篇をルターがドイツ語に翻訳したものが使われ、嘆きの底から希望の新生
を歌うものとなっています。音楽様式としては、同時期に作曲されたと思われるカンタータ「神の
時こそいと良き時」BWV106と類似していますが、BWV106が全4曲なのに対して本作は全5曲で、
合唱曲とアリア・コラールが交互に演奏される構成となっています。
また、作品中のルターによるコラールは後に「深き悩みの淵より、われ汝に呼ばわる」BWV38で
も使用されています。
ロタール・オディニウス(テノール)
クラウス・メルテンス(バス)
トン・コープマン指揮
アムステルダム・バロック管弦楽団
アムステルダム・バロック合唱団
バッハ(ロジェ・ヴュアタ編):音楽の捧げもの BWV1079(室内管弦楽版)
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=ObS53DQchq8)。
ドイツ出身の指揮者ヘルマン・シェルヘン(1891 - 1966)は現代音楽の普及に努めたこと
で知られていますが、一方でバッハやベートーヴェンの作品演奏も手掛けており、バッハの
作品については、オーケストラ演奏のための編曲版の演奏・録音を複数残しています。
そんなバッハの作品の一つが「音楽の捧げもの」BWV1079で、シェルヘンは1935年にジュ
ネーヴ生まれの作曲ロジェ・ヴュアタ(Roger Vuataz, 1898-1988)に編曲を依頼して、ヴュ
アタは室内管弦楽のための編曲版を作成しました(同時に「フーガの技法」の編曲版も依頼
しています)。
彼はその編曲版を数回録音しており、この動画ではウィーン・フィルの木管楽器メンバーを
指揮しています。
ヘルマン・シェルヘン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の木管楽器メンバー
バッハ:カンタータ第126番「主よ、みことばもて我らを守りたまえ」BWV126
Youtubeからの転載です(https://www.youtube.com/watch?v=qE_ge6_-8W0)。
バッハのカンタータ「主よ、みことばもて我らを守りたまえ」BWV126は1725年に作曲され、
この年の復活祭前第8主日である2月4日に初演されました。
この日は聖句としてルカによる福音書から「種を蒔く人」のたとえが述べられました。この話
では神の言葉を「種」に例え、良い土地に蒔かれた種が豊かな実りをもたらすように、神の教
えを良く聞く者は豊かな人生を送るとイエスが説いたとされています。この聖句に基づき、本
作では題名の通り「みことばもて我らを守りたまえ」という風に、神の言葉を信じるべきとい
う歌詞が歌われます。
音楽上の様式としては全6曲で構成され、第1曲でルターのコラール「みことばもて我らを守り
たまえ」が、第6曲でルターのコラール「平安を与えたまえ」が歌われており、コラールで始
まりコラールで終わるという典型的なバッハのコラール・カンタータの様式となっています。
カルメラ・コンラート(ソプラノ)
Ulrike Andersen(アルト)
レミー・バーネンス(テノール)
Samuel Zünd(バス)
Bernhard Hunziker指揮
バッハ・コレギウム・チューリッヒ